負け犬入院体験記 #8 十八日目・残酷ファッキンクソオブワールド
※pixivFANBOX無料ブログ記事再掲です。
なあなあ、小説家になるには最低でも一万枚は書かないといけないらしいぜ! クソがよォ!
ひとまず深呼吸して落ち着くとしよう。
まず僕にはなにもない。
突然何を言い出すかと思われるだろうが、事実なのだから仕方あるまい。
何もかもが足りない。まず必要な努力が足りない。
小説家になるためには原稿用紙換算一万枚は少なくとも書かなくてはいけないらしい。
僕がこれまでかいてきた枚数、小説家になろうに上げてきた分だけで約七十万文字。換算約千八百枚。
少ない!
いままで五年やってきて、たったの千八百枚!
長編が苦手で短編に逃げてきたのが悪かったのか。知らないが、とにかく少なすぎる。
普通にまともに書いてれば二〜三年でこの境地には到達するんだとか。それに引き換え、僕はどうだろう。五年でたったの千八百枚。七十四万字。馬鹿馬鹿しい。
これじゃあいつまで経っても一人前にはなれないわけだ。人一倍書いてないわけだから。
そのうえで、じゃあ才能がないからやめてしまえばいいのに、などと考えているのが本当に気にくわない。
やめなければ、諦めなければ、いつか芽が出る可能性はあるのに。確実に芽が出ないとは誰も言っていない。
もちろん誰にも聞いちゃいないし、完全な徒花な可能性だって大いにあるのだが。
非常に短気な自分が許せない。少しでも認められたいと思った自分が許せない。認められるステージにも立っていないくせに、認められようと思った自分がバカみたいだ。
死んでしまえば良いのに。楽なのに。もうこれ以上負けずに済むのに。
そう思ってしまった自分がいるのにも許せない。
負けても負けても残酷に人生は続いていくものだ。生き地獄は続いていく。
最近さんざん褒められて、調子に乗っていたようだった。
文章がうまいと様々な人に言われた。理路整然としてるだの主語がわかりやすいだの……。それで調子に乗っていたようだった。
ライター、つまりは小説家なりなんなりの文章稼業を目指してるのに、文章がうまいのは当たり前だ。ただうまいだけじゃ食っていけない世界、そんなことで喜んでいてもきりがない。
無論、世間一般の視点じゃ上手な部類には入るのだろう。けど、それだけじゃ意味がない。魅力がなければいけない。人を動かすような魅力が。じゃないと売り物にならない。
自分の文章にそれがあるかと言われれば……残念ながら、ないと思う。誰にもそんなこと言われたことないんだもの。
ただ普通より文章がうまいだけ。そんな自分が喜んでいい道理などない。
見事に鼻を折られた。僕は僕の立ち位置をようやく理解した。
最底辺のクズ。路傍の石。それが玉となるまで、あと何年かかるだろうか。
玉となっても、そのさきでさらに選別される。ずっと向こうの世界の競争を見据えて、今回は筆をおくことにする。