ラヴェルの全作品を年代順に聴く⑶ 1907〜12年
今回は1907〜12年、ラヴェルが32〜37歳の間に作曲された12曲を聴いていきましょう。
大学の作曲家の先生曰く、「作曲家は30代の作品が一番脂がのっていておいしい」らしいのですが、
ラヴェルも例外ではなく、この時期には下記のような代表曲が生まれました。
(♪ボレロや♪ピアノ協奏曲よりも、端的にラヴェルの音楽を知れる曲たちです。)
(このシリーズでは、近代フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルの全作品を作曲年順に聴いていきます。
作品一覧としてもご活用ください♪)
1907年
♪ハバネラ形式のヴォカリーズエチュード (歌曲)
Vocalise-Etude en forme de Habanera
…パリ音楽院の声楽科の教授からの依頼で、学生向けの練習曲として作曲されました。
のちに《♪ハバネラ形式の小品》という題でヴァイオリン編曲されています。
♪大風は海から (歌曲)
Les grands vents venus d'outremer
…アンリ・ド・レニエの詩よる歌曲で、半音階進行の多用や大袈裟な伴奏など、ラヴェルの歌曲の中では少し異質な作品となっています。
♪草の上で (歌曲)
Sur l'herbe
…詩はヴェルレーヌです。内容が変わっており、酔っぱらった僧正と侯爵が意味のわからないことを言い合います。
曲付けもかなりユニークで、歌うのではなく『語るように』演奏することが求められています。
♪トリパトス (歌曲)
Tripatos
…ラヴェルの生前には出版されなかった作品で、
曲調やシンプルな伴奏がつけられていることからも、《♪5つのギリシャ民謡》に近い関係にある歌曲です。
1908年
♪スペイン狂詩曲 (管弦楽曲)
Rapsodie Espagnole
…「管弦楽の魔術師」ラヴェルの最初の重要な管弦楽作品です。
リムスキー=コルサコフの《♪スペイン奇想曲》やシャブリエの《♪狂詩曲スペイン》から、精神的な影響を受けていますが、
大胆なオーケストレーションのテクニックなどにラヴェルの個性が窺えます。
ラヴェルの母親はスペインバスク出身で、子どもの頃、よく故郷の歌を歌ってきかせてもらっていたそうです🎶
ラヴェル自身はスペインに行ったことはなかったのですが、
この曲はスペインの作曲家ファリャから「スペインらしい曲だ」というお墨付をもらっています🇪🇸
★《♪スペイン狂詩曲》は2台ピアノ版も同時進行で書き進められました。
また、ピアノ連弾で演奏されることもあります。
♪夜のガスパール (ピアノ曲)
Gaspared de la nuit
(ポゴレリチの演奏はありえないほど正確で、聴き惚れました😍)
…アロイジウス・ベルトランの詩をもとにした、全3曲からなる組曲です。
ピアノ曲全体としても最高峰に位置し、中でも《♪スカルボ》は超絶技巧が必要な難曲として知られています(しかし他の2曲も同じくらい難しいです…)。
1909年
♪スペインの時 (オペラ)
L'heure espagnole
…スペインの時計屋を舞台にした、皮肉とユーモアに満ちた喜劇です。
オペラによくある「感情の極端な発露」は避けられ、幕間劇のような軽めの仕上がりになっています。
冒頭の音楽は、時計のカチカチという音や振り子の音を効果的に用いており、
スイス出身で自動車のエンジニアであった、ラヴェルの父親のために書かれた作品なのではと想像させられます。
全文訳は、こちらのサイトから読むことができます。
♪ハイドンの名によるメヌエット (ピアノ曲)
Menuet sur le nom d'Haydn
…ハイドンの没後100年記念の雑誌企画への寄稿曲で、ドビュッシーやポール・デュカスも曲をよせました。
"HAYDN"→「シラレレソ」の音型が何度もさりげなく織り込まれており、目で見ても楽しめる楽曲です。
1910年
♪マ・メール・ロワ (ピアノ連弾)
Ma meré l'Oye
…タイトルの《♪マ・メール・ロワ》とはフランス語で「マザー・グース」を意味しており、
その名の通り、童話をモチーフにした5つの曲で成立しています。
《♪マ・メール・ロワ》はミミとジャンという姉弟に献呈されています。
この姉弟は、サロンをよく主催していたゴデブスキ家の子どもたちで、
ラヴェルは2人に絵本の読み聞かせをしてあげたり、自作のおとぎ話をきかせてあげたり、一緒に遊んだりしていたのだそうです☺️
オーケストラ編曲版と、それをもとにしたバレエ版もあります。
★オーケストラ編曲版
★編曲版に基づいたバレエ
1911年
♪民謡集 (歌曲)
Chants populaires
…スペイン🇪🇸フランス🇫🇷イタリア🇮🇹ヘブライ🇮🇱の各国語で書かれており、それぞれのお国柄を表現したピアノ伴奏も、聴いていてとても面白いです。
♪高雅で感傷的なワルツ (ピアノ曲)
Valse nobles et sentimentales
…ロマン派の作曲家シューベルトをオマージュした8曲の小さなワルツが通し演奏される作品です。
シューベルトのワルツは、軽快なリズム、シンプルな形式、思いがけないハーモニーなどが主な特徴で、
その特徴はそのままこの曲にも当てはまっています。
この曲は《♪マ・メール・ロワ》と同様に、オーケストラ編曲版と、それをもとにしたバレエ版があります。
★オーケストラ編曲版
1912年
♪ダブニスとクロエ (バレエ音楽)
Daphnis et Chloé
…ギリシャ文学を題材にした、バレエ・リュスからの委嘱作品です。
(以前原作を読んだのですが、クロエが彼シャツをしているシーンのインパクトが強すぎて他をあまり覚えていません笑)
この作品は友人でもあったロシアの作曲家のストラヴィンスキーから、
「フランス音楽のすべてのなかで、もっとも美しい成果のひとつ」と評されました。
★バレエ版を元にした、2つの管弦楽組曲版もあります。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
ラヴェルの全作品を年代順に聴く⑷ 1913〜22年に続きます✨
さくら舞🌸