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財布が無くなった

以前、通勤途中に財布が無くなったことがあった。すぐに妻に電話し、家に忘れてないか確認したが見つからない。私のカバンはリュック型で、財布の入っていた口がガバッと開いていた。

これはスリにあったか、と思い派出所に駆け込む。近くの警察署から応援を呼んでくれたり、クレジットカード、キャッシュカードの停止のための電話番号を教えてくれた。大事なカードから順々に電話をかけていく。その時、オーストリア ウィーンで起きた出来事を思い出した。

私は海外出張中にウィーンでスリにあったことがある。帰国日の朝にお土産を買いに街に行く途中の地下鉄でスられた。シュテファン大聖堂の前で気づき、頭が真っ白になった。

警察署に行き調書を取る。保険会社に請求する際に重要なプロセスだ。その合間にカード会社にも電話する。2時間ほど経って警察署を出た。手に入れたのは盗難届。一門無しだったのでホテルまで歩いて帰った。

空港までは流石に歩いて行けない。どうするか…。パスポートホルダーに一枚のカード。最後の生命線コーポレートカード。リスク分散万歳!!

帰りの飛行機の中、その日は自分の誕生日だった。CAさん親切にも誕生日のデザートを持ってきてくれた。心の中では「ありがとう。でも僕は一門無しなんだ」と卑屈になっていた。やはり、お金は大事。

スられてから3ヶ月後、財布が見つかったと日本大使館から連絡があった。現金は無くなっているが、財布とカードは残っている。どうするかと聞かれた。ありがたい話だったが、既に保険金で新しい財布を買ってしまったので破棄をお願いした。10年もののバーバリーの財布、ウィーンで安らかに眠ってくれ。


話を元に戻そう。警察官から駅に問い合わせてみたか聞かれた。電話をしたところ何と届いているとのこと。スられた訳ではなくカバンから落ちたのだ。申し訳ない気持ち、恥ずかしい気持ちになりながら派出所を後にした。警察官から「こういう事があると、同じ事が起きた時に警察署に来にくくなると思います。そこは気にせず駆け込んでください。僕たちはそのためにいます」と声をかけてくれた。少し涙が出た(かもしれない)

駅に着くと財布が届いていた。日本あったけーと感じた。財布の中には1000円札が1枚入っていた。盗まれた訳ではなく、元からこうだった。キャッシュカードは既に止めてしまった。日本でも現金一門無し生活が始まる予感がした。

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