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思い出せないのは名前だけ

「旧友の旧姓を思い出すのも脳トレ。あなたは○○だよね」と、年賀状にあった。試しにその人の旧姓を考えたらすぐに思い出せた。でも旧姓で知っていた時期よりも、今の姓での付き合いの方が長い。というか、それだけお互いに結婚年数が長い=年を取ったということだけど。

 昨日、電車に乗ってある駅を通った時に、かつてその駅で降りて訪ねた友人があったこと思い出した。今は音信不通だ。はて、彼女の旧姓はなんだっただろう。結婚相手の苗字は独特だったので覚えているけれど、旧姓は? あれ? 思い出せない。これかな? と思い出した姓名は、別の誰かのもののように思えた。

 まあ、いいか。
 ついでなので、今まで好きになった男の子の名前を思い出してみた。幼稚園の時はマキノコーイチ君。それから…と思い出したらスルスル出てきた。ほんの数人だ。

 でも、どうなんだろう、「思い出せる人」というのは、そもそも「覚えている人」のことだ。もしかしたら、すっかり忘れている「誰か」がいるかもしれない。いや、いないと思うけど。

 いつからか、TVを見ていても人の名前が思い出せなくて、以前なら他の情報を出して「ほらほら、○○ってドラマに出てた、あの○○の役の…」なんて言って、周囲に解答を求めたりしたのに、最近はその、ドラマの名前や役の名前も思い出せないからヒントも出せなくてもどかしい。

 でも「名前」は記号みたいなもので、大事なのは「その人」を覚えているかどうか、だろう。名前だけ思い出してそれが誰のことかわからなかったら、その方がきっと恐ろしい。