#28 今日もピアスをつけて出かけるの
私がピアスを開けたのは22歳の秋。スペイン留学中のことだった。
スペインは薬局でピアスを開けるのが一番衛生的(?)らしく、
一緒に留学していた友人についてきてもらい、
「え、本当に痛くない?大丈夫ですか?」ときゃーきゃー騒ぎ、
「大丈夫、赤ちゃんもピアス開けてるから」などと訳の分からない理由で落ち着かされ、
パチン、パチンと開けてもらったのが懐かしい。
高校3年の受験期のとき。国公立の前期入試が終わったあと、不合格だった際の後期入試を受けるため、悶々と粛々と小論文の勉強を続けていたあの二週間、早々に私立大学の合格を勝ち取って、一足先に髪を染めたりピアスを開けたりしていた友人がすごく羨ましかった。思えばあの頃から、私のピアスに対する憧れやコンプレックスは強かったのだと思う。
家族にピアスを開けている人はいない。
両親も、おしゃれが好きというよりは最低限の身だしなみで生きていて、
外見よりも内面を磨きましょう、といった教育方針のもとで育ってきたこともあるせいか、
なんとなく、自分の外面を飾っておしゃれすることは、チャラいような、苦手なような、私なんかには似合わないような、そう思って過ごしてきた思春期時代だった。
晴れて大学に合格し、大学生になってからも剣道を続ける選択をした私は、
毎日稽古で面を着けて顔全体がムレムレになるだろうし、ピアスなんか開けちゃったらしばらく衛生面が心配…という理由もあったが、
そんなことより何より、「私がピアス開けるなんて、きっとお母さんにも怒られるし、みっともない」と思っていた自分がいた。
ピアスをつけている友人を見ては、「親からもらった体に穴をあけるなんて…」とか心の中でつぶやいてた時期もあった。超過激思想(笑)
ピアスを開けたい自分に、気づかないふりをしたかったのだ。
そんな大学生活を3年半送った後、スペインへ飛び立った。
スペインみんなピアス開けとるやないかーい!と思った。クリスチャンの場合、女の子が生まれると生後間もない間にピアスを開けちゃうんだそう。
耳だけでなく、へそにも、鼻にも、眉毛あたりにも、いろんなところにピアスをぶら下げた人がたくさんいた。
ここでなら、ピアス開けられるんじゃない?ピアス開けても、変な目で見られないんじゃない?
一番自分を変な目で見ようとしていたのは、他でもない私自身だったんだけど。
そして、両耳にピアスを開けた。周りの目を気にしまくり、イイ子ちゃんでいようとした自分に別れを告げる大切な瞬間だった。
両耳に穴を開けて帰国した私を見た両親はかなりびっくりしていたけど、
開けてしまったもんはしょうがないか…みたいな反応だった。
案外、親の意向に沿わずに生きても大丈夫なのかも、と学んだ。
それからというもの、旅行先ではよくピアスを買うようになった。
毎日手軽に、違うデザインのものを楽しめて、
違うものをつけるたびに、そのピアスに詰まった思い出がよみがえってくる。
これ、あの場所で、あの人と一緒にいるときに買ったんだよな、なんていつも思う。Each of them reminds me a lot!って感じだ。
今日も、ポルトガルで買ったおさかなピアスをつけてお出かけした。
ちょっと自由になった自分に似合うピアス、
これからもいっぱい見つけられたら良いな。