#45 なにげない日常を切り取る(2020年8月2日)
2020年8月2日、なぜか少し早起きできて気持ちのいい朝(とはいえ8時半)。7月はびっくりするくらい毎日のように雨が降っていたけれど、昨日からカラッと晴れている。そうだった、日本の夏は暑いんだった、、と、夏が来るたびに同じ感想を抱く。
10時。大好きなパン屋さんに向かう。すべて天然酵母で、シンプルだけどコクがあって、いつ食べても美味しくて、奇をてらわないパンたちを焼いている。
路地裏にある小さなパン屋で、人が2~3人入るとけっこう窮屈だ。3密対策のため、一人もしくは一組ずつの入店と決められていて、私が着くと一組の家族(父・母・娘15歳くらい)が並んでいた。その家族の後ろに並び、ぽけーっとしていたら、母と娘がパン屋にさーっと入っていった。お父さんは独りぼっちになった。
私の家族もそうだったけど、なぜお父さんは家族で買い物に行くと若干引き気味になるのだろう?家族に必要なものを買うのはお母さんで、お父さんはいつのまにかフラフラとどこかに行ってしまうのだ。
スーパーでは、母と娘が買うものを一通りかごに入れて、レジに並ぼうとすると、どこからともなくやって来て、そっと買い物かごにピーナッツやおかきなどのお菓子を入れていた。なるほど。レジの前だとお母さんも「なんでそんなもの買うの!太るよ!」などと言えないからか。意外と策士だったんだなぁ、お父さん…
話は目の前の家族に戻る。親しみを込めてオトン・オカン・娘ちゃんと呼ぶ。オカンと娘ちゃんだけがパン屋の店内に入るということは、オトンの好きなパンはオカンか娘ちゃんが知っているのだろうか。それとも、この家族の食事の実権はオカンが握っているのだろうか。
手持無沙汰になったオトンは、ふらふらと歩き始めた。何しに行くのかな、とぼんやり見ていたら、向かいのお店の軒先で日向ぼっこしていた野良ネコへと近づき、ネコとオトンの見つめあいが始まったのだ。無言で1分間くらい。ネコは知らない大人に突然見つめられて、戸惑いを隠せないに決まっているのだが、逃げたり目線を逸らしたりは意外としないもので、結局にらめっこはオトンの負けで幕を閉じた。オカンと娘がパン屋から出てくる頃には、オトンは何事もなかったかのような顔をして店の前に戻ってきた。
そういえば私も道端で野良ネコを見かけると、見つめてしまう癖があるじゃん…!と気づいてしまった。近づいてまじまじと見るわけではなく、3メートルくらいは保っているのだが、その場でじっと立ち止まってネコを観察してしまう。不思議と吸い寄せられるのだ。このオトンの行動に接して、妙な既視感を覚えたのは、自分がそういうことをしているからだ。良かった、こんなことするの私だけじゃないんだ…という安心感。日曜日の午前、道端の野良ネコを観察できるなんて、あまりにも平和な瞬間だと思いませんか。
帰り道、10人くらいのおじちゃん達がガス管工事のため道路を掘ったり交通整理をしたりしていた。歩行者専用通路を通りかかるとき、おじちゃん同士の会話が聞こえてきた。
「なぁ、パフェって、どこの国の食べ物なんやろ?」
「知らないっす。日本じゃないすか?」
パフェはたぶん、響きからしてフランスの食べ物なんじゃないだろうか。でも改めて問われると自信をもって答えられない。当たり前に素通りしたけど、炎天下の工事現場の上司と部下が、何気ない会話を交わしていて、あぁ、やっぱり今日は平和なのかもしれない、と思った。
夜はオムライス作ろっと。