#10 お迎えとお見送り
約一週間の福岡帰省を終え、再びひとりの部屋に戻ってきた。
当たり前のように、私の部屋は出たときのまんま私を出迎えてくれて、
本当は家を空ける前に片づけてしまいたかった家事たちが、モノたちが、洗濯物たちが、控えめに挨拶してきた。
挨拶されたからにはやるっきゃねーなぁと、旅の疲れで重たくなった体の調子を見ながら、一日かけてゆっくりと部屋を綺麗にしていった。
お陰で明日に持ち越される仕事はなくなったし、今晩は久しぶりに一人の時間を楽しもうかしら、なんて、ちょっとルンルンな気持ち。
前置きが長くなってしまったけど、お迎えとお見送りについてちょっと書いてみたいと思う。
私は空港や新幹線の到着口や出発口が好き。
みんなが誰かを迎えたり見送ったりしているあの空間がとても好き。
旅にはたいてい目的地がある。
私は、そこに住む誰かに会いたくて旅した経験のほうが、ふらふらと目的地もなく一人旅をした経験よりも多い。
会いたい人とは事前に約束をして、何時にどこどこで会おうね、楽しみにしてるね、なんてやり取りをして、
事前に目的地は決めているはずなのに、
目的地に行けば会えるはずなのに、
その一歩手前の場所で「お迎え」をしてくれる人がいたならば、
旅はずっとずっと楽しみなものになる。
荷物運搬の手伝いという側面もあるかもしれないけれど、
その人に早く会いたい、一目会いたいという気持ちがお互いにあることは事実なのかな。
目的地に向かう人は、自分にとって大切な人が待っていることを想像するだけで旅の疲れなんてへっちゃらになる。
お迎えに行く人は、時間的・金銭的な負担を飛び越えて、今から会える人にわざわざ会いに行く。
お迎えはお互いを思いあう素敵な気持ちから生まれるものだと考えると、
なんだかあたたかい気持ちになる。
お見送りも、その人と出来るだけ長く一緒にいたい気持ちの表れなのかな。
一緒に居られて楽しかったよ、次はいつ会えるかな、元気でね、気を付けてね、またね、
普段の関係の中ではなかなか言えないような、気遣いの言葉や愛情が溢れるこの瞬間も、少し寂しいけどやっぱりあたたかい。
お迎えとお見送りの素敵さをここまで語ってしまったんだから、
大切な人を笑顔で迎えられて、笑顔で送り出せるような、
そんな人間になりたいなぁ。
と、ここまで書いてみて、前置きで書いた私の部屋は、
言葉こそないものの、しっかりとお見送りとお迎えの役割を果たしてくれたんだと気づいた。
ありがと~、これからもよろしくね、部屋。