#18_第2回勉強会レポート_抹茶の機能価値
第2回 Global Tea Diplomacy Discussion
「The Health Benefits of Matcha」 3月31日(水)日本時間午前6時
① 勉強会の目的と第2回のテーマ設定
桜茶meetは「日本の茶文化が培ってきた 『調和の精神』の発信・啓蒙(=「茶の湯外交」)による世界平和への貢献」をミッションに掲げる民間外交の非営利団体です。
茶を通して人の心に「安らかな空間」が生まれ、地球上の「人と人」「人と自然」の間に調和が広がり、より平和な世界に繋がっていくことを目指しています。
このミッションの下、「”茶”が今の国際社会にできることは何か?」、「日本が今、世界に貢献できることは何か?」について毎月様々なテーマで議論し、年に2回具体的な提言を国内外の関係団体に提出いたします。
前回(2/28)は「世界で広がる抹茶人気・抹茶消費の実態と背景」についてワシントンDC/イスラエルからのゲストをお招きしました。
今回のテーマは「抹茶」そのものに焦点を当て、「抹茶とは何なのか?」を掘り下げる「抹茶の機能価値(The Health Benefits of Matcha )」、抹茶の健康上の利点と最新の研究、それがCOVID-19にどのように役に立つか、今後の展望を英語で議論を交わしました🎵
② スピーカーの紹介
共栄製茶株式会社
会長 森下康弘 氏
取締役 池永和教 氏
海外事業部 星野友希 氏
共栄製茶株式会社は、天保7年創業、京都の「森半」と大阪の「共栄グループ(小林一三の「共存共栄の理念」を具現化した企業群)」が合併した歴史を持つ会社です。実業家であると同時に数寄者でもあった小林一三は、松下幸之助に「あんたくらいの人間はそろそろ茶をやらんとあかん」と茶を勧めた人物としても有名です。(詳しくはこちら(共栄製茶HP))
森下会長は6代目で、大学卒業後に単身サンフランシスコに渡り、ユダヤファミリーが展開するコーヒーカンパニーで2年間の修行を積んだのち家業に入りました。
③ 内容
1)共栄製茶の変遷と目指しているもの
共栄製茶は早い段階から宇治抹茶の海外展開を進め、現在ではコーシャ、ハラールなどの認証を取得し、オーガニック製品にも力を入れているグローバルカンパニーへと成長を遂げました。
自社で研究施設も所有しており、科学的な管理下における品質保証を徹底しているのも特徴です。高級抹茶だけでなく、コーヒーをはじめ、泡立つ抹茶オーレなど多様な商品展開を行っております。
2)抹茶の生産工程について
抹茶とはどのように作られているのか?実際のところはあまり知られていないのではないでしょうか。
苗を植えてからお茶の収穫まで最低3年はかかります。
日本の抹茶の特徴である「美しい緑色」が日本に根付くまでの歴史を生産工程からご紹介いただきました。
抹茶の生産工程は主に2つのパートに分けられます。
①茶葉生産者のパート(栽培~碾茶までの加工)
②茶問屋のパート(碾茶(てんちゃ)~抹茶への加工・商品化)
それぞれに強いこだわりをもち、現在に至ります。
①茶葉生産者のパート(栽培~碾茶までの加工)
”抹茶の原料であるてん茶を生産者が加工する”
「覆い」をすることで直射日光を避け、苦味成分であるテアニンがカテキンになることを防ぎ、旨味や甘みを残します。
発酵を防ぎ、鮮やかな緑色を保つため、摘んだその日のうちに蒸して乾燥させます。
②問屋のパート(碾茶(てんちゃ)~抹茶への加工・商品化)
”問屋が「抹茶」を商品化し、販売する”
茶問屋は、碾茶をさらに加工し、「抹茶」に仕上げます。香りを引き立て、前年と同じ商品を創る、新しい味を提供するなど「商品化」を進めていきます。5月~7月にしか手に入らない抹茶を1年間冷蔵庫で保管し、年間販売しています。
3)抹茶の歴史
日本の抹茶は、世界の抹茶とは一線を画しています。その背景には、
早い段階から「色」という美的感覚にこだわり、栽培方法や加工方法にこだわってきた歴史があります。
現在、日本では「緑茶」という呼び名は一般的ですが、これは実は海外と貿易する際「紅茶」と区別するために海外の人が使った言葉だとか。
その時、日本ではお茶には、煎茶、深蒸し煎茶、玉露などそれぞれ呼び名がありました。
私たちが「抹茶」と慣れ親しんでいるものが、「茶道」という道になるまで、どんな変遷があったのかを学びました。
”茶”が中国から伝来し、貴族の嗜みから、茶道が確立され、茶道もリーダーとしての嗜みから女性の教育ツールとなり、現在は日本文化の発信や平和親善の象徴となる、など抹茶には多くのターニングポイントがあります。
4)抹茶の機能価値
共栄製茶では独自の研究も進めており、抹茶の最新の研究をご紹介いただきました。
抹茶はカテキン、アミノ酸、ビタミンC、食物繊維、ミネラル、ポリアミン、カフェインなど、様々な栄養素を含むため、抗癌、ダイエット、血糖値を下げる、アンチエイジング等に良いとされてきました。
このような状況ですから、私たちも日々健康的な生活を心掛け、抹茶を生活に取り入れることでその効果を得られるのではないでしょうか。
抹茶は「茶葉ごと楽しむ」という特徴があります。茶葉の持つ栄養素を余すことなく身体に取り入れることが出来る、というのも素晴らしい点です。
最新の研究報告など、広く知られていないものもあったのでみなさん興味深くお聞きいただき、議論も活発に行われました。
③ディスカッション
ディスカッションの一部をご紹介します。
・日本特有の栽培工程(石臼で挽く、蒸すなど)
・抹茶を輸出する際に発色や食味を保つためにどのような工夫をしているか
・ハラール認証など取得しようと思ったきっかけ
・国際展開時にどのような苦労があったか(宗教的な衝突など)
さまざまな切り口から、活発なディスカッションが行われました。
中でも印象的だったのは、高価な抹茶を販売する際には、歴史や文化、生産者についてや産地のこだわり、健康価値や栄養素についてなど「ストーリー」をともに提供しているという点でした。
「ストーリー」がたくさんあるのは、今まで日本人が培ってきた文化的な背景も大きく影響しているように思われます。
最後に共栄製茶の皆さんから各国の参加者の皆さんへ質問がありました🎶
Q 抹茶は海外でどのくらい人気で、一般的にどのくらい認知されているのか?また、それは健康それとも?文化としての人気?
A
<カナダ>
カナダではとても人気で、どのカフェにも抹茶ラテ等がある。どこまで理解しているかは不明であるが、健康のために飲んでいる人も多い。
<アメリカ東海岸>
アメリカでは加工レベルが低い抹茶が出回っている。似た表現の食材と誤解している人もも買いに来るので、お客さんには実際に缶を開けて抹茶を見せて説明している。一方で、今はネットで調べればなんでも情報が取れるため、関心が強く知っている人は産地、グレード、生産者を確認してくる。
親子で店に抹茶を購入しに来る場合、子どもは知っているがその親は何も知らないパターンもあって、世代間における差も大きいと感じる。
<アメリカ西海岸>
サンフランシスコは、抹茶ラテはどこにでもある。ただし、加工用の安価な抹茶を飲んで「まずい」となってしまっていることも多々見られる。なので、どういうものが食用(加工用)、どういうものがそのまま抹茶として飲めるドリンク用か、を知ってもらう必要がある。いい抹茶自体は市場に増えているので、それを経験できる機会は増えていると思うが、多くはこのようなパターンで抹茶を飲まなくなってしまう。
いかがでしたか?
次回以降は、このような浸透と可能性を持つ「抹茶」、そして、茶の湯文化が培ってきた「平和の知恵」が、今、そしてこれからの地球においてどのような役割を果たすことができるのか?を学ため、テーマを「茶・茶文化」から「国際情勢」に移していきます。
4月末に予定している次回はアメリカ政治の舞台裏からゲストをお呼びし、イスラエル、そして日本からのゲストも加わり多角的な議論を行います。
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