縦から横へ、自然と方向転換していた話
こんばんは。株式会社Knotの植竹です。
久しぶりの投稿となってしまいましたね。写真は鶴居村からみた釧路湿原です。
前回の投稿から本日までの間に、初めての従業員を雇用したり、クラウドファンディングをスタートして、大成功のうちに終了したり、金融機関との面談をしたり、鶴居村と富良野を何往復もしたり、色々ありました。
今日は本当に久しぶりの丸一日のオフで、本を読んだり、ほっとけないどうの配信を見たりして過ごしていました。
そんな中で、少し気付きがあったので残しておこうかと思います。
たぶん数年後に自分へのメモになるかも、と思いまして。
自分はクラフトビール業界の人間だと思っていた
突然ですが、私、クラフトビール業界に身をおいて14年になります。
埼玉県のコエドブルワリーでキャリアをスタートして、その後、栃木、上富良野町、トロントと日本だけではなく海外へ飛び出してビールを作ってきました。
当然のように自分はクラフトビール畑の人間だと思うようになり、道東で自分のブルワリーを立ち上げる活動を始めたときにも、それが頭に残っていました。
何をするにもクラフトビール業界の人間という前提に立って多くのことを考えていたと思います。
自己弁解するわけではないですが、それが悪いという意味ではなく、物の見方が自然とそうなっていたのです。
自分の過去の実績や、自分のことを知ってくれている人がいる、応援してくれる人がいるというのは何よりの武器です。
自分にとっての何よりの武器を生かして、事業をスタートさせるんだと自然に考えていました。
どんな起業に関する本を読んでも書いてある、当たり前のことですよね。
道東の人々は自分のことなんか誰も知らない
これは頭では分かっていたけれど、体では分かっていなかったことの一つです。
誰もなんていう書き方としてしまうと失礼な気はしますが、活動を始めた頃の実感としてはそんな感じでした。
要するに、自分の武器だと思っていたものの半分は武器として使えなかったのです。
道東ではクラフトビールというものがまだ市民権を得ているとは言い難く、クラフトビールってなに??というところから説明をしなければならない土地です。
中には「クラフトビールは高くて不味い」と10年以上前に散々言われたことを改めて言われたこともありました。そう、10年前。気づけば言われなくなっていた言葉ですね。
「高くて不味い」と言われないという、一見当たり前のようで当たり前でない現状は、多くのブルワリーの努力によって勝ち取った素晴らしい環境なのだと思います。誰か一人の力ではなし得ない、大きな努力の結晶です。
ところが、その環境はまだ道東にはありません。
当然クラフトビールに関わっている私のことを知っている人はほとんどいない。しばらくの間はかなり孤独感を感じながら活動をしていました。
助けを求めたのは道東を拠点に活動している方々
設立の予定地としていた釧路市での物件探しが難航し、いよいよ候補物件すらなくなってきたころ、少しだけ視野を広げ道東地域全域を回りました。
十勝地域、オホーツク地域、知床などなど。
当初から道東地域を中心に活動したいと思っていたものの、広い北海道の広い道東地域ですから、全てを見て回ったことがなかったのです。
道東で活動すると言っているのに、道東全域を見たことがないとはこれ如何に。まずは自分の目で見てみよう。もしかしたら良い発見があるかもしれない、と。
そんな折に出会ったのがドット道東でした。
道東のアンオフィシャルガイドを名乗ってはいますが、下手なオフィシャルガイドよりも新鮮で生きた情報が掲載されているガイドブックです。
自分がなにより惹かれたのは、本の内容というより(ごめんなさい)こんなカッコいい本を作っている、道東地域を中心に活動している人たちがいる!ということでした。
1ヶ月位悩んだ後にFacebookでコンタクトを取ったのが初めだったと記憶しています。最初はブルワリーのロゴデザインをお願いしたい、という内容の相談でした。
相談と言いながらも、当時の自分の心境としては、助けを求めたという方が正しいかもしれません。
ドット道東の皆さんは自分の活動を歓迎してくれた
お会いして早速自分の考えてい事業の説明をし、ロゴの制作をお願いしたいこと、クラウドファンディングを計画していること、物件を探していることなどなど、色々ご相談させていただきました。
結果、ロゴは言わずもがな、Brasserie Knotのエゾシカのロゴはドット道東さんのご協力によって出来上がったものです。デザイナーのSさんには相当無茶をお願いしましたが、お陰様で最高のロゴマークになりました。
改めてこの場で感謝を。
その他にもクラウドファンディングについても本当に沢山のご支援をいただき、物件探しも手伝っていただいたり、ほっとけないどうにも繋いでいただいたりと、本当に沢山沢山お世話になったのです。
そして何よりドット道東の皆さんはKnotの活動を歓迎してくれました。
「あれ、もしかしたら何とかなるかも!?」
と思えるようになったのはこの頃からかもしれません。
そして縦から横へ活動の方向が変わっていった
この記事を読まれている方の中には、おそらく古くから私のことを知っていただいているクラフトビールファンの方も多いでしょう。
実際のところ「植竹って、最近クラフトビール業界で目立たないよね」と思っていらっしゃるかたも多いのではないでしょうか。
それはその通りだと思います。以前ほど積極的にビールの情報を発信していませんし、自分でどんどん新しいビールを作るという立場から、ビールづくりの技術を伝えるという仕事にシフトしていますので、以前よりも存在感が薄れているはずです。
そしてなにより、情報発信の方向、活動の方向ともに縦から横へ変化したという要因が大きいと思います。
縦、つまりクラフトビール業界、ファンに向けての活動。
横、鶴居村を中心に、道東地域へ向けての活動
今はクラフトビール業界に向けてよりディーブな情報を発信するというよりも、道東という地域に対してのコツコツとした情報発信を行っているということです。
これって意識的に変えたのではなくて、自然とこうなってきたのです。
自分が武器だと思っていたものの半分が実際には武器にならない、という現実を前に、一度クラフトビール業界の人間だという肩書を捨てた結果、こうなったのだと思います。
いわば道東の人間になろうとしている過程なのかもしれません。
住み慣れた富良野を離れ、8月には鶴居村へ移住します。そうなれば、いよいよ本当に道東の人になります。
これから自分で生きていく土地で、何をやるのか。どう伝えてゆくのか、考えれば考えるほど余計な肩書はいらないな、と思うようになりました。
実際、地域に目を向けるようになってから驚くほど沢山の繋がりが出来ました。そして、地域の方から沢山のご支援を頂いている代わりに、自分も少しずつではありますが地域を支援する方面にも力を入れています。
決してクラフトビール業界に対しての情報発信はもうしない、と言っているわけではありません。
今は少しだけ、深く掘り下げる方向ではなく、浅く広げる方向へシフトしているだけです。
それが道東には必要なことで、最終的には自分たちのためになると信じているので。
今は楽しくてしかたがないんです
余計なことを考えず、駆け出しの起業家というなんの価値もない肩書だけで仕事をしてみると、あら不思議。心が軽くなりました。
事業へのプレッシャーは当然ありますが、少しばかり肩の力が抜けたように思えます。
そして何より道東地域で面白いことをやっている、あるいはやろうとしている方々との出会いが圧倒的に多くなり、皆さんから刺激をいただいている現状をとても楽しんでいます。
今日も道東地域でのワクワクする活動の話を沢山聞くことができました。そして自然とそれらの話しを自分ごととして捉えていることに気付きました。
例えば大樹町での北海道スペースポートのお話とか。どうやって関われるかな、なんて考えながらお話を聞いていました。
例えばスペースポート応援缶なんていうビールの販売とか?ロケットにBrasserie Knotのロゴを掲載してもらうスポンサーとか?
面白そうなアイデアが次から次に思い浮かびます。
これからが正念場
面白そうなことは沢山思い浮かびますが、まず自分がやらなければならないことは、何よりブルワリーの設立です。
正直に申し上げればまだ超えなければならないハードルは沢山あります。
何しろ誰もやったことがないことをやるわけですから。
それでも鶴居村の皆皆様、道東地域の皆様、そしてクラフトビールファンの皆様のご支援を受けて、着実に前に進んでいます。
まだ公開できない情報などもたくさんあり、じれったく感じるかもしれませんが、水面下ではものすごい勢いで事が進んでいます。
早くみなさんにビールを届けられますように。
引き続きの活動を見守ってください。
株式会社Knot
代表取締役 植竹大海