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愛と再生の物語…22

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ケントは父親の泣いている姿を目にして
かける言葉を…失った…
父さんもきっとボクと同じように
母さんのいない毎日を…どれだけ寂しくて
辛いと感じて過ごしてきたんだろう…
それでもボクと幼いメイの為に
毎日、懸命に働いて……
父さん……
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ケントは持っていたパジャマを放り出し
走って父に抱きついた
「父さん…父さん…」
父親は…ハッとした
ケントにこんな姿を見せる訳にはいかない
子ども達を不安にさせる訳にはいかない…
「父さんは…母さんのことが
大好きだったんだよね
だから…こうして泣いているんでしょう?
ボクも母さんが大好きだったから…
父さんと…おんなじだよ…」
そう言って、父親の肩に顔を埋めた…
……父親は、もう泣くまいとするのを…止めた
ケントと同じ
ケントはこの寂しさや、心に空いた穴さえも、きっと同じだと感じているのだろう…。
なんて子なんだ…
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「ああ…ケント、父さんは母さんが大好きだったよ…今でも大好きだよ
お前達の母親は…本当に素晴らしい女性だったから
寂しよ、もうどんなに望んでも
二度と同じ時は過ごせないから…
それでも、父さんのここ」そう言って
拳で胸を何度か叩き
「ここに…母さんはいる…」
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……チクタクチクタク……
時計が時を刻む
過去には戻れない
それでも、心には溢れる想い出と共に
今でも胸に愛しい人はいる…
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ケントは父親に抱きついたまま…何も言えなかった
温かな母の温もり…昨日の温もり感じて
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父親は大きく深呼吸して…
「風呂に入ろう…おいでケント」
そう言って、ケントの腕を優しく叩いた
ケントはそんな父親が…カッコいいと想った
泣いたことを恥じない
泣くだけの理由があるから
それでも、ほら、もう行くぞ‼️
そんな姿に感じて
ボクも…父さんみたいになりたい
その想いは、一層強くなった
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ふたりでお風呂に入る
何年ぶりだろう…
「父さん、背中洗ってあげるよ」
「おっ…じゃあ頼むよ…」
いっぱい石鹸を泡立て
父親の背中をゴシゴシ擦る
「ケント…もう少し優しく擦ってくれないか?」
「男だろ…この位なんてことないだろ」
「😅……おい……」
🤣ケントは大笑いした
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今度は父親に背中を洗ってもらう
その手は優しかった
「お前は大きくなったら…何をしたい?」
「…。ボクね…大学には行かないよ
夢があるから…」
「大学に行かないのか⁉️
父さん学費位は出せるぞ…」
「そうじゃなくて…ボクには夢があるって言ってるの…」
「そうか…お前の事だから、父さんに心配かけまえとして、大学には行かないと言ってるのかと想ったんだ…
夢があるのか…そうか…夢があるんだな」
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「あるよ。」
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父親は泡だらけの息子の背中に
シャワーを当てて流した…
「ボクね…この村に食堂を開きたいんだ……母さんのレシピを使って
たくさんの人に母さんの美味しい料理を食べて貰いたいから
そしてね…父さんが作る
世界一美味しいテーズを使って
みんなに食べてもらうんだ…それが
ボクの夢だよ…」
「……………。。。」
父親の手が止まった
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シャワーはあらぬ方を向いていた
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「父さん…ダメ?かな…」
………………。
ケントは振り向いて何も言わない父を見た…。。。
父親はシャワーノズルを放り出し
両手で顔を覆っていた
その肩は大きく震えていた…
声を殺して……父は再び…泣いてた
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ケントはどうしていいか混乱した
何か…困らせるような事を言ったのか…
次の瞬間…父親は天井を向いて
大笑いしだした
なんだよ⁉️ケントはびっくりした👀
「父さん…なんだよ‼️」
父親は肩を震わせ…涙を拭い…こう言った
「ケント…お前は本当に…凄い子だな」と。
ケントは訳が分からず父親の、次の言葉を待った…しっかりシャワーノズルを握って。
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「母さんが、あのレシピを書き始めて
だいぶ経った頃…料理上手なのに、
何でそんなレシピを書くのかって聞いた事があった
その時は…まだ内緒と言って教えくれなかった」
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ケントは父親の頭にシャワーをかけた
シャンプーを手に取り
父親の頭をゴシゴシ洗う
父親はされるがまま
「メイがお腹に宿り、お腹が大きくなった頃
母さんは大きなお腹を擦りながら、
……この子が生まれ、大きくなって、手がかからなくなったら…私、やりたい事があるのって…その時初めて
教えてくれたんだ…母さんの夢…を」
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「その夢は、お前の夢と……同じだったんだよ…」
ケントの手が止まった…ボクの夢……
ボクの夢と母さんの夢が…同じ。。
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続く…

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