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「十二月」
十二月(じゅうにつき)の精たちが、大きな焚火の周りを囲んでいる。
継母に苺を探してくるようにと命令された少女は、真っ白に積もった雪の中で、あるはずのない苺を探して彷徨い、その焚火をみつけた・・・
というロシア民話。
今となっては、物語りの記憶はとても曖昧ではあるけれど、絵本の中のいちごの赤い色、私たちが着ることのない赤く華やかな民族衣装に魅せられたものだった。
あるとき、耐寒訓練で金剛山に登ったが、山の中腹から霧氷の樹々に包まれた。それで、あの十二月の精たちの焚火の周りの樹々は、きっとこんなにキラキラしていたのだろうと想像したものだった。
もっと絵本童話の話をしたくなった。
「シンデレラ姫」のキラキラ光っているガラスの靴、「小公女」の着ている暖かそうな防寒服と両手を入れる手袋とは違う真白い筒状のもの(これはあとからマフというものとわかった)、「マッチ売りの少女」が眺めるガラス窓の中の大きな大きなクリスマスツリーなどなど
『いつかはあれが欲しい!』
と、強く望んだ欲しがり屋の少女は、娘となり、そのまま大人となった。
マフは、毛糸で編んで解決した。
さすがにガラスの靴が履けるとは思っていなかったが、社交ダンスを習い始めてガラスではないけれどキラキラ光る綺麗な靴を手に入れた時には笑ってしまった。
マッチ売りの少女が見たあの深緑の大きな大きなクリスマスツリーは、子供が生まれて我が家のリビングに飾られたが、男児二人の我が家ではそれを眺めて喜んでいたのは私だけだった。
孫たちが生まれ、誕生日やクリスマスには「赤毛のアン」よろしくケーキやストーブ料理を作っては喜ばせたものだったが、なぜかマリラになっている私が居た。あれだけ憧れたアン・シャーリーはいったいどこへ行った?
アンを探して、あらためて「赤毛のアン」を読み返すのだが、何度読んでも私はマリラでしかなかった。
これって、悲しむべきこと?