冬支度
私の母は、学歴こそ低いがたいそうな勉強家で私は頭が上がらない。
母を頼りにし、家事を任せて嫁ぎ先の稼業を手伝っていた15年の間に、彼女は通勤途中の文化教室で、ペン字から始まり毛筆、小筆,はたまた俳句までもモノにしてしまった。
また、無類な本好きで歴史本、文学書からエッセーまで、なんでも読みこなし、今でも週2回の図書館通いを楽しみにしているらしい。
何年前のことだったか、すっかり忘れていて思い出せないが、足の悪い母が一人で群馬の病院に手術を受けに行った。
よほどの覚悟が要ったのか、妹と私に『生き形見』だと言って何やら綺麗な風呂敷に包んだものを渡された。その頃には興味もなかったので、箪笥にしまい込んでいたのだが、久しぶりの休日に秋冬物を出していたら風呂敷の包みに目がいった。
そう言えば・・・と開いてみると『倭漢朗詠集』誠に豪華な綴り本とシンプルで上品な『土佐硯』が入っていた。ちょっとは字でも練習しろという私へのメッセージだったのか。
中を開けて読んでみるもさっぱりわからない。何やら四季折々に纏めて書いてあるのだろうことだけは私にもわかる。「落葉」という頁に拾い集めた落ち葉を置いてみたらいい構図ができたので激写。秋の終焉、
こんなことしかできない私自身を苦笑した。
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2007/11/12
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