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2025/1/4 川のある街

私は川のある街に暮らしている。
今日も娘と散歩をしてきた。
冬の澄んだ空、遠くにみえる富士山、野球少年のマラソン練習、渡り鳥の群衆。

ここに来ると暮らしを感じる。
決して映えるような景色ではないけど、地に着いた生活。

暮らしを感じるのは、流れるような時間、人生と似ているからなのか。

今年最初に読んだ本はまさに『川のある街』。
大好きな江國香織さんの本。

購入してから本棚に置いたままだったこの本を、時間のある年始に読んでみた。
三編が収録されているのだけど、一番心に残ったのは最後の話。
海外の運河が張り巡らされた街。

記憶のかけらが少しずつポロッポロッとこぼれ落ち、錯綜していく。(この表現が正しいからわからない)
海外に長く住む女性と、姪や家族、周りの知人が絡んでいく話は、認知症の母がいた私には心に残り、母は忘れていく記憶の中で何を考えていたのかをふと考えさせられる話であった。

この話に出てくる女性は、確かに記憶が曖昧で、迷子になったり髪を整えようとしても全く正反対のことになってしまったり。
混乱を見受けられるけど、それでも凛としている雰囲気がする。
本人の記憶や時間軸がズレていくとしても、周りの日常、生活は流れていく。

時間軸がズレていくことで、誤解が生まれたり関係性がこじれたりするのか。
そんなことを想像しながら読んでいた。

人が変わろうと、街や場所が変わろうと、川はいつでも流れている。
雨の時は増水するし、水の色も変わるけど流れ続ける。
川は単純ではなく複雑だけど、それも人生に近しいのだろう。

温かさと懐の深さを感じるような本であった。

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