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社会人ドクター一年生

記事のヘッダー画像は、昔C4Dという3DCGソフトを勉強していて(今も勉強中です)、その時に練習で作った作品です。昔のフォルダを漁ったら同じようなものが10枚程度あったので、今後の記事のヘッダーとして1枚ずつ使っていこうと思います。

今回は、私が履いている三つの草鞋のうち、研究の話です。

私は昨年の2019年10月に博士課程後期に秋入学で進学しました。仕事は辞めていません。いわゆる「社会人ドクター」と呼ばれるものです。社会人としては当時3年目でした。2年目の秋あたりから本格的に情報収集と作戦を立て始めたのですが、その際にこういったnoteやはてなブログで社会人ドクターを経験された記事を読んで参考にしていたこともあり、私の経験も記事に残しておこうと思いました。

私は就職してから今まで東京在住、東京勤務ですが、進学したのは修士課程を卒業した大学・研究室で、所在地は大阪です。実は今回の進学は仕事とは一切関係なく、プライベートでの活動という扱いです。仕事内容と関連のある研究であれば、会社の補助を受けて仕事の一環として進学・研究することもできると思いますが、残念ながら私はそういった環境ではありませんでした。したがって、入学金や授業料もろもろはすべて自腹です。

研究内容は非線形時空現象の制御手法の研究です(非線形時空現象で有名なものは、動物や魚の模様を数理モデルで表現したチューリングパターンなどがあります)。研究は主に数式と数値シミュレーションを用いて行うため、シミュレーション環境と論文があればどこでも研究ができます。

見方によっては、ただの趣味で博士後期に進学したようにも見えなくはないですが(実際合っていますが)、進学を決めたのには3つ理由があります。

1つ目は、現状と違うキャリアパスへ進むために博士号を活用したいと考えたからです(実際博士号というパスポートは日本においてはほとんど効果はないという話もちらほら聞きますが)。これは私が配属ガチャで研究所を引けず、職場で異動を訴えようにも説得力がないという現状に対し(「まぁもう少しやってみなよ」というお決まりの奴です)、進学という行動で研究への意欲を見せていこうという作戦です。しかし、あくまで博士号は資格でしかないので、それ自体に過度な期待は抱いていませんが、上司からは「博士号を取ろうとしているなんか変なやつ」という認識に変わったので、一定の効果はあったのかなと思います。ただ、そもそもこの会社に居続けるかどうかはまた別の話。。。

2つ目は、修士の時に書いた論文1本が卒業後、査読付き海外ジャーナルへ2本とも通ったからです。1本目は社会人1年目の春、2本目は2年目の同じく春にパブリッシュされました。私の研究室では査読付きジャーナル2本が博士号の目安となっていたため、毎年リクルート活動で大学へ訪問するたびに教授から進学の勧めを受けていました。もちろん、2本あるからと言って進学後に何もしなくてよいわけではなく、Dの3年間で最低査読付き論文1本、国際会議発表1本を最低目標にしています。

社会人ドクターで一番肝になるのはこの論文の数だと思います。例えばもし5年後、ドクターが欲しいとなった時には、この2本の論文は古くて成果としてはおそらく認められません。2本論文を書くという重さ・大変さは身をもって体験しているので、それをまた一から仕事と両立しながらこなすのは本当に至難の業だと思います。運よく査読を通ったこの2本を使って博士を取るには、今しかないという状況でした。

3つ目は、個人で博士後期課程へ進学した場合、授業料の6割程度の奨励金を大学からもらうことができたからです。今回私は自腹での進学となるので、3年間ボーナス無しぐらいの覚悟でいたのですが、手続きを進めていくうちに本大学独自の奨励金の制度があることを知り、進学への後押しとなりました。ちなみに、実態として会社からの補助を受けて進学している場合には、本奨励金は対象にならないとのことでした。

なぜ修士卒業の時に進学を選ばなかったかと言うと、研究という営み自体は自分の肌に合っており、続けていきたかったのですが、今とは別テーマで企業で研究してみたいという思いがありました。結局それは達成できていないのですが、それも人生、この数年で得たエンジニア・開発者としての知識は研究者としての視野を広げるのに十分役に立っていると思います。

そして3年経って再び自分の研究に向き合ってみて、新しく見えてくることも多くありました。自分の取り扱っているテーマは、もう一歩広く見ることで、本質的に非常に多くの事象を対象としたテーマであることを実感しています(ダイナミクスや制御という学問の魅力についてはまた別の記事で・・・)。

月並みですが、やはり社会人として見えている視点と、学生時代に見えていた視点は大きく異なります。寄り道をしたことで見えてくることもあれば、ちょうどこの3月、大学時代同期で博士後期に進学していた方が無事ドクターを修了されたのを見ると、そういう道もあったんだなと思わなくもないです。

進学して半年ちょっとが経過しました。今年はコロナの影響で世界的に異常事態となっており、昨年入学を済ませておいて本当に良かったなと思っています。多分今年やろうとしたら時期が悪いと思って諦めていたと思います。まずは、無事博士号が取得できるよう、論文を頑張って書いていきます(ポツポツと結果が出てきたので、今はストーリーを練っている段階です)。

ここまでで2000字も書いたようです。こうやって書き下していくことで思考の整理になり、スッキリしますね。今後も週一回くらいのペースでなんらかの記事を書いていきたいと思います。

UNEでした。

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