荒木飛呂彦の漫画術
生成AIの誕生によって、コンテンツ制作において様々なサポートを受けることが可能になりました。
様々な課題はありますが、それでもコンテンツ制作におけるハードルを下げているのは間違いありません。
しかし、ただAIでヒョイっと生成したものが、誰かに受け入れられるコンテンツになるわけではありません。
コンテンツを作る上での重要な考え方がいくつもありそうです。
『ジョジョの奇妙な冒険』という漫画作品の名前は、誰もが聞いたことがあるでしょう。
その「ジョジョ」の作者、荒木飛呂彦先生が、漫画制作における考え方を書籍で共有してくださっています。
考え方の一部ではあるでしょうが、基本的で重要な考え方が書いてあるのだと思います。
そして、その内容は、生成AI時代のコンテンツクリエイターにとっても大切な考え方のような気がします。
ここに、その学びの一部を記載します。
超絶面白かったので、興味を持ってくださった方は、是非とも書籍をご一読ください。
基本四大構造
漫画における「基本四大構造」があります。
キャラクター
ストーリー
世界観
テーマ
漫画が読者の目に届くのは「絵」と「言葉」いう形式を通したものですが、その奥にはこれらの四大構造が存在しています。
これらの四大構造は、独立しているわけではなく、互いに補強しあっています。
そして、これらのバランスも重要です。
四第構造の一つが突出している作品は、もちろん存在します。
例えば、「ストーリーは破綻しているがキャラクターの魅力がすごいので人気が爆発する」といった作品もあります。
逆に、ストーリーや世界観に主軸が置かれている作品もあります。
しかしながら、長く広く愛される作品は、この四大構造のバランスが取られています。
例えば、キャラクターは時代の変化に対しては脆弱です。
価値観、生活環境、科学技術の変化は、どうしても発生します。
それに伴い「性」の扱いや、「顔立ち」「ファッション」や、「背景」が古く感じてしまうこともあります。
これに対し、人間の普遍的なテーマをあつかったり、共感できるストーリーの展開があったありすることで、作品の強度があがります。
キャラクター
この書籍の中で、特に重要なものとされているのが「キャラクター」です。
「ネコ型ロボット」
「どら焼きが好き」
「ネズミが嫌い」
などの特徴を挙げたら何者かイメージできるものが、良いキャラクターとされます。
キャラクターにおける最も重要な要素は「動機」です。
キャラクターというと、性格や見た目をはじめに考えようとするかもしれません。
しかし、それよりも重要なのが「動機」です。
なぜその作品にそのキャラクターがいるのかという必然性が「動機」となります。
「なぜその行動をするのか」というものがないと、人はキャラクターに感情移入できません。
「兄ちゃんが絶対助けてやるからな」が、竈門炭治郎の動機です。
「持っていかれた…!」が、エドワード・エルリックの動機です。
「バスケットはお好きですか?」が、桜木花道の動機ですね。
そのうえで、荒木先生は、キャラクターを規定するための60項目持っており、それを埋めることでキャラクターを確定させているそうです。
ストーリー
このキャラクターに命を吹き込むのがエピソードです。
「こんな時にこんな行動をとった」ということの積み重ねが、キャラクターに厚みをもたせます。
造形だけのキャラクターよりも、たくさんのエピソードを持つキャラクターの方が、人気がありますよね。
このエピソードを与えるのがストーリーです。
ピカチュウが絶対的な人気を誇るのは、アニメで数多くのストーリーが語られているからです。
読者がキャラクターと一緒に過ごした時間が、愛着を強めます。
そして、ストーリーの中での行動が、そのキャラクター性を強固にします。
「自由奔放だけど仲間のため怒る」のような行動特性が何度も描かれることで、そのキャラの特徴が際立ちます。
ルフィがセリフで「俺は仲間を一番大切にするんだ」と言うよりも、「当たり前だ!」と言ってアーロンと戦う方が、何倍も説得力があります。
緑谷出久がセリフで「僕はヒーローマニアだ」と言うよりも、戦っているヒーローの技を解説して、ヒーローの特徴をメモしている姿を描く方が、何倍も説得力があります。
ストーリーは、キャラクターを困難な状況に放り込むことで動き出します。
キャラクターの動機が明確であれば、困難な状況に陥った時に、どのキャラがどの行動をとって切り抜けるのかが、自ずと見えてきます。
「キャラが勝手に動く」とよく語られますが、これは動機 x 状況があって始めて発生します。
『荒木飛呂彦の漫画術』では、この四大構造の説明を軸に、漫画作品を作る上での重要な考え方が説明されていきます。
そのなかで、ジョジョではどのような試みがされているのかについても語られます。
生成AIの助けによって、誰もがコンテンツを作れるようになりつつあります。
それは、大量のコンテンツが生成されていくことも示唆しています。
その中で、自分はどのようなコンテンツを作っていくのか。
そのための重要な考え方を身につけておくことが、これからの時代にとって大事なように思えます。