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『プロだけが知っている 小説の書き方』

「小説ってどうやって書くの?」
「物語ってどうやって作るの?」

そのように思ったことはありませんか?

このような疑問に答えてくれる書籍があります。
それが『プロだけが知っている 小説の書き方』です。

YouTube番組『山田玲司のヤングサンデー』でも、著者ご本人が説明してくださっています。
めちゃくちゃ面白かったです。

こちらのYouTubeを拝見して「これ絶対読むべき」って思って、その流れで購入しました。

この書籍では61個の疑問に答える形で、物語の作り方が解説されます。
「この手順で作ろう」という教科書的なものというよりも、重要なポイントについて深く書かれています。

担当編集者の方に「そこまで教えちゃっていいんですか?」と言われるレベルの内容です。

そのなかから、物語作りの素人の私でも理解できる部分をピックアップしてご紹介いたします。

特に構成に関する森沢式『W理論』は、必読です。
これは書籍でぜひ読んでいただきたいと思うものです。


キャラクター

キャラクターを熟知する

物語を作るうえで、最も大切なものは「キャラクター設定」です。
キャラクターが魅力的であることが、物語の中で最低限必要なことです。

主人公であれば、A4用紙がギッシリうまる位は、個性を列挙します。
サブキャラクターでも、その半分から7割くらいの個性が必要です。

名前、年齢、身長、体格のといった情報から、趣味や特技、人間関係、苦手なもの、生い立ちも含めて、リストアップします。

物語の中で、すべての個性について触れる必要はありません。
あくまでも作者がキャラクターを熟知し、自然に動かすための材料となります。

特に、生まれ育った環境や生い立ちが重要です。
それらが性格形成に影響を与えるとともに、物語の目的や伏線にもなります。

実在の人物をミックスする

キャラクターを作る際に、自分がよく知っている人をモデルにすると、よりリアルに人物像を想像することができます。

このとき、そのままその人物を使うのではなく、複数の人物をミックスして、架空の要素を付け足します。

そうすることで、自分の書きたい物語に最適なキャラクターに仕上げることができます。

長所と短所を作る

キャラクターの特徴で、生い立ちに並んで重要な要素が、長所と短所です。

長所は言わずもがなですが、短所は「愛されポイント」として必須です。

ルフィの無計画さ、ゾロの方向音痴、サンジの女性好き。
このような短所があるからこそ、長所が光る。

ドラえもんに、ドジな所がなかったら、物語に起伏は起こりません。
出来杉くんのような、完全無欠のキャラクターは、残念ながら物語のメインにはなりません。

あえて、ちょっと抜けてるところを作ることが大切です。

キャラの特徴の例

例えば、これは『HUNTER×HUNTER』の主人公、ゴン・フリークスの特徴です。
※by ChatGPT-4o

  • 非常に素直で、子どもらしい純粋さを持つ

  • 好奇心旺盛で、新しいことに対して積極的に挑戦する

  • 幼少期から動物と共に育ち、自然と調和した感覚を持っている

  • 大切な人を守るためなら自己犠牲を厭わない

  • 決めたことは最後までやり遂げる強い意思と頑固さを持つ

  • 生まれてすぐに不在となった父親を探している

同作品のキルア・ゾルディックの特徴は、以下のようになります。
※by ChatGPT-4o

  • 伝説的な暗殺一家の三男として生まれる

  • 幼い頃から暗殺技術を叩き込まれる

  • 身体能力が極めて高く、スピード、反応力、判断力は並外れている

  • 冷静に状況を分析し、戦略的に物事を進める能力に長けている

  • 家の厳しい暗殺者としてのしきたりに反発している

  • 家を飛び出し、自分で道を切り開こうとする

『HUNTER×HUNTER』は、この二人が出会い、お話が進展していきますね。

物語

目的を与える

キャラクターに「確固たる目的」を持たせることが、物語を作る上で非常に重要です。
それこそが、物語が進展する理由となります。

  • 母を尋ねるために三千里の旅に出る

  • 父親を探すためにハンター試験を受ける

  • 海賊王になるためにグランドラインを目指す

  • 鬼になった妹を元に戻すため鬼殺隊に入る

キャラクターに目的をもたせると、自然と物語が動き始めます。

成長物語

面白い物語の基本形は「主人公の成長物語」です。

『スラムダンク』も『ブルーロック』も『鬼滅の刃』も『ダンダダン』も、主人公の成長物語ですよね。
他にも、数多くの物語が成長物語になっています。

  1. こういう主人公が

  2. こうしう難題を乗り越えて

  3. こういう人へ成長する

ここを基本のプロットとして、ここから肉付けしてプロットを長くしていきます。

シーンを加える

プロットを作っていくうえで、頭に浮かんだ「描きたいシーン」を追加していくと進めやすくなります。

「ピッコロが身を挺してゴハンを守る」シーンとか。
「桜木花道と流川楓がハイタッチをする」シーンとか。
「空条承太郎が時を止めてディオの足を砕く」シーンとか。

キャラクターが最大限、イキイキとするシーンを加えていきます。
その見せ場となるシーンにつなげるように物語を埋めていきます。

謎を追わせる

思わず先を読みたくなってしまう物語は、「キャラクターに謎を追わせ続ける」ような物語になっています。
この「謎」を、キャラクターと一緒に、読者も追っていく事になります。

TVでもYouTubeでも、どの世代においてもクイズ番組が人気です。
特にTVであれば「正解はCMの後」といっていますが、これはCMでの離脱を防ぐための仕組みとして機能するからこそ、長年取られ続けている手法といえます。

「謎」というものは、人をひきつけてやみません。

  • 世界の秘密は

  • キャラクターの隠された過去は

  • 三角関係の恋の行方は

  • 犯人は誰なのか

  • 何者が自分を転生させたのか

謎は一つだけではなく、いくつか謎を組み合わせることもできます。
謎がとけたら、新しい謎を配置します。

このようにして、読者に読む理由を与え続けるとよいでしょう。

試練を与える

主人公の成長物語であれば、そこには「試練」が必要です。
「これを乗り越えるのは不可能では」と思えるような試練でも良いのです。

試練の代表は「強敵」です。
バトルマンガであれば、フリーザや、ディオや、志々雄真実や、鬼舞辻無惨。
スポーツ漫画であれば、沢北栄治や、赤司征十郎や、碇屋良介や、狼嵜光。

ライバルがいなくとも、シチュエーションでの試練もありえます。
『宇宙兄弟』で南波日々人が月のクレーターに落ちる話など。

これらの状況に対して、キャラクターが特徴と他のキャラとの関係性を活かしつつ、成長しながら乗り越えていくストーリーにしていくと、読者をひきつけやすくなります。

作文

行動を描く

物語が説明口調だと、どうしても臨場感が薄れてしまいます。
キャラクターの行動を描くことで、状況を表現することができます。

「彼らは親友です。ズッ友です。」と説明するよりも「帰り道はいつも相手のクラスまで迎えにいって、一緒に帰る。」のほうが、関係性が理解しやすくなります。

五感に訴えかける

状況を説明する際には、嗅覚、聴覚、視覚、触覚など、五感を使った表現にすると、より状況が伝わりやすくなります。

  • 「ツンとカビの臭いがする」

  • 「ザーザーとテレビの砂嵐のような音が聞こえる」

  • 「暗闇の中で目を凝らすと、うすぼんやりと輪郭がみえる」

  • 「ビルの間を冷たく乾燥した強い風が吹き込んでいる」

大きなものから小さなものへ

風景や空間を説明する際には、大きなものから説明すると、伝えやすくなります。

  • 机の上に鉛筆が転がっている

  • いくつもの机が置いてある

  • ここは1年1組の教室

  • ○○高校の校舎の1階にある

このような小さなところから大きく広げるよりも、大きなものから小さく絞っていく方が全体を理解しやすくなります。

  • ここは○○高校の校舎の1階、1年1組の教室だ

  • その一番後ろの机に、鉛筆が転がっている

構成

森沢式『W理論』

この『W理論』が、この書籍で最も読むべきものです。
先述のYouTube番組でも、軽く解説されています。

これは主人公の幸福度を上下させながら、物語を進展させるというものです。

縦軸に「主人公の幸福度」、横軸に「時間経過」を現した時に、アルファベットのWの形となります。

スタート地点

物語のスタートは、「幸福でもない不幸でもない状態」から始めます。
ここで主人公が幸福すぎたり不幸すぎたりすると、読者は「自分とは関係のない話だ」と思い、物語に入り込めなくなります。

ほどほどの状態からスタートさせることが重要です。

トラブルに巻き込まれる

そこから一旦、幸福度をグンと落とします。
何かしらのトラブルに巻き込まれるような出来事を起こします。

「○人事件に巻き込まれる」とか「未知の場所に飛ばされる」とか。
あるいは「親友と喧嘩をする」とか「恋人に振られる」とか。

環境や人間関係をがらっと変えてしまうような出来事をつかって、主人公の幸福度を下げます。

伏線を貼る

この主人公の幸福度を下げるタイミングで伏線を貼ります。
読者が「違和感」を感じるような形で表現するのが良いです。

物語の謎を解き明かすヒントになるようなものを配置しておきます。

この伏線は、クライマックスで一気に回収することになります。

クライマックスでは大きなトラブルを解決することになりますが、その解決理由が「たまたまラッキー」で、読者がしらけてしまいます。

そのため、解決する理由を伏線で配置しておくことが重要となります。

上下上下

物語が進展し、トラブルを脱し、成長をすることで幸福度を持ち上げます。
そして、新たなトラブルによって幸福度を再度落とします。

この幸福度を落とすタイミングで、新たな伏線を配置します。

これを何度か繰り返しながら、クライマックスで使う伏線を配置しつづけます。

クライマックス

クライマックスのタイミングでは、主人公の幸福度をどん底まで落とします。
そこから、伏線の回収をしながら謎を解決していきます。

このときに、人間関係を用いることが重要です。

例えば、「反目しあっていた二人が協力することで強大な敵を倒す」ような人間関係の変化が、読者の心を強く動かします。

反目しあっていた桜木花道と流川楓が、お互いにパスを出し合うように。

未来は書かない

「W」の最後の幸福度マックスの部分は、原稿には描きません。
これは読者が、幸福な未来を想像するような「余白」を残すためです。

「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」という部分は、あえて書きません。

ガラスの靴に足が収まったシーンで終わります。
眠っていた姫がキスによって瞼が開いたシーンで終わります。

「夢の中ではコマが回り続ける」という映画の設定において、コマが止まるかどうかがわかる前にエンドロールに入ります。


『プロだけが知っている 小説の書き方』は、物語を作る人でなくとも、面白い発見がある本です。

様々なコンテンツは、物語です。
小説だけでなく、マンガも、ゲームも、ドラマも、映画も、歌詞も物語だと言えます。

その物語に通ずる重要なエッセンスがこの本(とくに『W理論』)に込められています。

めちゃくちゃオススメです!

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