書籍:まず、ちゃんと聴く。

「相手の話をちゃんと聴きましょう」

そのように学校で教わった人も多いでしょうし、コミュニケーションに関する本にもそのように書いてあります。

この「ちゃんと聴く」とは、どういったものなのでしょうか。

「ちゃんと聴く」が出来たとて、別の問いが生まれます。

聴くだけでは物事は解決しないのではないでしょうか。

そのような問いに対して、答えてくれる書籍がありました。

エール株式会社の代表、櫻井将さんが書かれた『まず、ちゃんと聴く。』です。

エール株式会社といえば、みんな大好き『コテンラジオ』の番外編にご出演され、『LISTEN』の監訳をされた篠田真紀子さんを通して知られた方も多いかもしれません。
私もその一人です。

エール株式会社は、社外の人との1on1を提供している会社で、「聴く」ということを通した働く環境の改善をし続けています。

『まず、ちゃんと聴く。』という言葉は以下の三つの要素で構成されています。

  • まず

  • ちゃんと

  • 聴く

「まず」ということは、その後に何かが続くこと、その前提としての「聴く」があることを示しています。

「ちゃんと」は、姿勢やスキルといった、具体的な聴き方について示しています。

「聴く」は、「聞く」と「聴く」の違いについて示しています。

『まず、ちゃんと聴く。』では、「聴く」ことにまつわる基礎的な考え方やスタンスを学ぶことができます。

「相手の話をちゃんと聴きましょう」と言われ続けた私達が持っている様々な問いに対する、ひとつの向き合い方が書いてあります。

めちゃくちゃ面白い本だったので、その中からの学びをいくつかピックアップして記載いたします。


聴く

「聴く」と「聞く」は異なります。

一般的には、意識的に耳を傾けることが「聴く」と言われます。
一方で、自然の耳に入ってくるケースは「聞く」と言われます。

「listen=聴く」で「hear=聞く」というイメージですね。

ここの書籍では、これらとは異なる定義をしています。

「自分の解釈を入れることなく、意識的に耳を傾ける行為」を聴くと定義する。

「解釈を入れることなく」は「without ジャッジメント」とも表現されます。

解釈

解釈には、評価、分析、判断などが含まれます。

  • 評価:良いと思う。悪いと思う。

  • 分析:ウケそう。ウケなさそう。

  • 判断:使う。使わない。

…といったものが、解釈・ジャッジメントに該当します。

これらの解釈を伴うものが「聞く」ですね。

「聞く」の場合は、「それはいいね」とか「それは便利そう」とかの反応になります。

一方、「聴く」の場合は、「そう思ったんだね」とか「そうだったんだね」とかの反応になります。

視点の違い

「聞く」の場合は、相手の正面に座っているようなスタンスになります。
その時の聞き手の関心事は、聞き手の目線の先にある「相手」そのものです。

一方で「聴く」の場合、相手の横に座って同じ方向を向いているようなスタンスになります。
この時、「相手の関心事」が聞き手の関心事になります。

相手を見ている「聞く」では、「なぜ」という思考になります。
「なぜそう思ったのか」「なぜそんなことをしたのか」など、分析をはじめます。

相手の関心事を見ている「聴く」では、相手の見ているものが「なに」かという思考になります。
「何を見ているのか」「何を感じたのか」という「モノ」や「コト」に視点がいくため、聞き手側の解釈(評価・分析・判断)が入りづらくなります。

特徴

「聞く」と「聴く」とでは、良いも悪いもありません。
それぞれの特徴があるだけです。

「聞く」のメリットは、強い共感を示せるところです。
「それいいよねー!」とか「わかるわー!」とか、自分の解釈・ジャッジメントもが相手と同じであることを示して、仲間・味方であることを強調することができます。

「聞く」のデメリットは、自分と異なる意見に対しては共感できない点にあります。
極端な場合は、対立することにも繋がります。

一方で「聴く」のメリットは、様々な意見に対してフラットでいられるところにあります。
自分の解釈を含めないことから、自分と異なる意見に対しても関わることができます。

「聞く」と比べて「聴く」では強い共感は示せないところがデメリットとなります。

ちゃんと

「ちゃんと聴く」の「ちゃんと」は、一般的には「黙って」「我慢して」「従う」のようなニュアンスが含まれています。

「ちゃんと私の言うことを聴きなさい」

…と言われると、あたかも「黙って・我慢して私の言うことに従いなさい」のように感じるケースが多いかもしれません。

しかしこの書籍では「ちゃんと」を、このような「やり方」ではなく、「あり方」として示しています。

本書では、「相手の言動の背景には、肯定的意図があると信じている状態で聴く」が「ちゃんと聴く」であると定義する。

全ての人の言動には、その人なりの「肯定的意図」があると思って聴くことを「ちゃんと聴く」といいます。

肯定的意図

友達が何か、「社会的通念から見ておかしなこと」をしたときに、「何かしらその人なりの理由があったのではないか」と考えるでしょう。

例えば誰かが嘘をついたときに、「あえて嘘をついたほうが良いと判断したのかもしれない」と思うこともあるでしょう。

あるいは、急いでいるときに遠回りをしたときに「この時間はこっちの道の方が混雑していなくて早くたどり着ける」のようなこともあります。

このような、そうせざるを得なかった肯定的な理由を「肯定的意図」と呼びます。

「ちゃんと聴く」は、このような意図があったのであろうと信じながら、他者の話を聴くことです。

スキル

コミュニケーションの本では、「姿勢」「表情」「相槌」などについても語られることがあります。

これらは「うまく聴く」ためのスキルです。
「ちゃんと聴く」はスタンスだとしたら、「うまく聴く」はスキルです。

このスキルは、「ちゃんと聴く」という状態を活かすために重要でうs.

心の中で、いくら肯定的意図を持って聴いていても、ふんぞり返って足を組んでいたら、「聴く気がないな」と相手から判断されるでしょう。

このスキルは「言語スキル」と「非言語スキル」に分解されます。

非言語スキル

非言語スキルは、何でも話してもらうために使われます。

例えば、悩みごとなどは、だいたいぼんやりしたところから始まります。
解像度が粗いものを言葉にするのは勇気がいります。

相手が粗いボールでもキャッチしてくれるという信頼がなければ、ぼんやりしたものを言葉にすることはできません。

威圧的な態度な人に「なんとなくなんですけど」みたいな言葉は投げかけづらいですよね。

「どんなボールでも受け取るから安心して投げてね」ということを、表情や声質などで示すことに非言語スキルが活用されます。

言語スキル

粗いボールを投げてもらったあと、それを解像度高くしていくときに使われるのが言語スキルです。

「この部分についてもう少し教えて?」
「具体的に何があったの?例を教えて?」

…のようにしながら、解像度が粗い部分に対して問いを投げかけます。

このときに、自分の解釈は混ぜないようにします。

言語スキルを使おうとすると解釈(評価・分析・判断)が入ってしまいがちですが、あくまでも相手の隣から、相手の視点の先にある「相手の関心事」が何なのかの解像度をあげるために言語スキルを活用します。


…と、この書籍の前半からの学びをピックアップいたしました。

ここだけでも、「聴く」ということを解像度高く捉えられるようになったと感じます。

構造的に「聴く」にまつわることを理解できるようになる書籍です。
めちゃくちゃ面白かったのでオススメです!

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