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書籍:推しエコノミー

今の今まで、読んでいなかった事を後悔した本があります…
クリエイティブに関わっている方にとっての必読の書…

『推しエコノミー』

  • エンタメの産業がどのように変遷してきたのか

  • 「萌え」から「推し」にどのように変わってきたのか

  • グローバルにおける日本のエンタメの立ち位置はどうか

  • どのように「推し」の経済圏を確立させるか

これらについて記述された書籍が『推しエコノミー』です。

本当に本当に面白かったです!

みんな大好き豊島晋作さんと、著者との対談もあります。
こちらもめちゃくちゃ面白いので、ぜひ見てください!


絶対に読むべき第四章

書籍『推しエコノミー』の中で、クリエイティブに関わっている方が絶対に読むべき章があります。

それが、第四章「推しエコノミーの確立へ」です。

第四章の目次

以下、第四章の目次を記載します。

  • 4-1) キャラクターと貨幣の類似性

    • 文化の距離を縮める「キャラクター」という媒介

    • 人々の間で交換されないと死ぬ

    • 交換の面白さに目覚めた人たちの「祭り」

    • 旧時代貨幣『ポケモン』の復活

  • 4-2) 世界観の欧米と、キャラクターの日本

    • 日本人は仏像を作って拝んでから宗教心に目覚める

    • 日本人の感性が作りあげた「カワイイ」「推し」の概念

    • 世界的ねこブームとエロパロディを許容する日本

    • キャラクターの多様性を支える職人の技術

  • 4-3) 日本のエンタメは誰が救うのか?

    • アパレルは誰が殺し、自転車は誰が救ったのか?

    • 2020年代、「風の時代」における換骨奪胎

    • 物語る産業としてのエンタメのレジリエンスを求めて

この目次だけで、「これ絶対に読んだ方がいい」ということが伝わると思います…!

このnote記事では、この第四章の内容からの学びをいくつかご紹介いたします。


キャラクターの価値

コミュニケーションの媒介

キャラクターは、コミュニケーションの媒介として非常に強力です。

例え話として…
「HUNTER×HUNTERのゴンみたいだね」って言ったら、すっごく純粋でまっすぐなキャラを思い浮かべますよね。
「キルアみたいだね」と言ったら、天才肌なイメージがあるかと思います。

また、キャラクターが使うスキルなども、概念を伝える際にも用いられます。

例えば、Aさんがめちゃくちゃ能力を発揮しているときに…
「Aさんの領域が展開してる」
「Aさんのスタンドが発動してる」
のように表現すると、個人の特性がおもいっきり発揮されている感じがしますよね。

他にも、大学の哲学の授業で「意識」について説明をするときには「ガンダムとパイロット」の例が使われます。
自分の肉体をガンダムと表現したときに、その肉体を動かしている意識をパイロットとして例えています。

これらの例示は、キャラクターの物語を通して得た「共通体験」によって、成立します。

「あのキャラはこういった性格で、こういった事をして、こういった事になった」のような物語を体験している者同士であれば、話が早い。

具体的な説明をすっ飛ばして「○○みたいだよね」で物事が通じます。

世界観の共有

人同士でのコミュニケーションにおける阻害要因は、かつては「物理的な距離」でした。
手紙から電話、電話からネットと、コミュニケーションの技術が発展するにしたがって、物理的な距離という問題はなくなっていきました。

そして、現代におけるコミュニケーションの阻害要因は、「思考の距離」です。
言語の差、文化の差、そしてそこから派生する、概念の差です。

これは、「世界観の距離」とも言い換えられます。

何を良しとするか、何を悪しとするか。
そのような世界観をパッケージ化して、他者に伝えるという機能を、キャラクターは有しています。

感情と経験をドチャっと詰め込んだ象徴「キャラクター」。
これを使うことで、最短距離で共通認識にたどり着くことが可能になります。

インターネットによって物理的な距離の課題が解決されつつある今、キャラクターのような概念パッケージの重要性が高まりつつあります。

参考)仏具とNFT

概念パッケージの代表例は、仏教における数珠や木魚といった「仏具」です。

「仏具とNFT」というテーマのnote記事がありますので、こちらもご参照ください。

FiNANCiEコミュニティのSWC (sloth with creators)にて開催されたウェビナーにおいて、「仏具とNF」について解説しているパートもあります。
こちらもぜひご覧ください。

キャラクターの交換

交換

キャラクターがコミュニケーションの際に使われる現象は、あたかも「交換」のようなものです。

古くから、ホモサピエンスは物品の交換、あるいは、贈与を通して、交流をしてきました。
「交換」という仕組みがあるからこそ、略奪をせずに、平和を維持したまま、様々な物品を得ることができるようになっています。

同じキャラクターを愛している者同士で、仲間であることを認識しあいます。
キャラクターについての偏愛や情報を交換しあうことが、コミュニケーションの重要な潤滑油としても機能します。

この特性は、通貨の特性と、部分的に類似しています。

もちろん、キャラクターを知っていることが物品に交換できるわけではありませんが…
平和裏に物事を進めるためには、めちゃくちゃに有用です。

キャラクターは共同幻想であるということ、また、概念ゆえに腐さらないということも、通貨に通ずるものがあります。
(BL的な意味ではなく)

そして、そのキャラクターを知らない人同士の間では、交換が起こりません。
「このキャラは言っても伝わらない」というものは、交換の対象にはなりません。

キャラクターの死

キャラクターの死は、いつ訪れるでしょうか。
物語の中で死ぬのではなく、忘れられた時に死にます。

人はいつ死ぬと思う…?
(中略)
…人に忘れられた時さ…!

ONE PIECE

キャラクターは、人々のコミュニケーションの中で生き続けます。

『機動戦士ガンダム』や『ジョジョの奇妙な冒険』は名ゼリフを大量に有しています。

  • 当たらなければどうということはない。

  • 悲しいけどこれ戦争なのよね。

  • 偉い人にはそれがわからんのですよ。

  • こんなに嬉しいことはない。

とか。

  • てめーは俺をおこらせた

  • だが断る

  • この味は!…ウソをついている『味』だぜ…!

  • 燃えるゴミは月・水・金

とか。

ガンダムやジョジョは、SNS上で生き続けます。

そして、人々に交換され続けないと、キャラクターは死ぬ運命にあります。

交換の面白さ

交換行為によってドーパミンが放出されることが知られています。

トレーディングカードが一つの市場を形成していることからも、ホモサピエンスにとって交換が快楽であることを伺い知れます。

キャラクターをSNS上で「交換」することも、快楽に繋がっています。

推しのキャラクターについてSNS上で語り合うこと、それ自体が楽しくて面白いのです。

キャラクターの運営

ポケモンの復活

キャラクターが人々の間で交換されつづけることが、経済価値を生み出し続けます。

2024年現在、世界最大のIP(知的財産)コンテンツは『ポケモン』です。

ポケモンのゲーム、アニメ、映画、ぬいぐるみ、トレーディングカードなどの総収益が2024年には147B USDとなっています。

このポケモンの版元「株式会社ポケモン」は、2010年前後は赤字スレスレで苦しんでいました。

ブームから十数年が経過し、人々のコミュニケーションの中でキャラクターの交換がされなくなり、儲けるのが難しくなっていました。

しかし、2016年に『ポケモンGo』がリリースされたことで、風向きが大きく変わります。
ポケモンGoで人気に再度火がついたことで、ポケモンGo単体での収益だけでなく、映画やトレーディングカードにも人が集まるようになりました。

再び、コミュニケーションの中でポケモンのキャラクターの交換が起こりはじめ、それが売上全体を押し上げたと言えます。

しかもポケモンGoは、スマートフォンの1ページ目に居続けることによって、忘れ去られるどころか、常に人の目に入ることになり、可処分時間の大量獲得に成功しました。

そこからの積み上げがあったからこそ、ポケモンは世界最大のIPに躍り出ることができました。

運営の重要性

ポケモンGoのようなことは、待っていても起きません。

運営主体は、自分たちのキャラクターを、人々の間で交換させ続けなければなりません。

キャラクターそのものを運用しつづける必要があります。

超絶人気コンテンツとなった『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』であっても、TVアニメ放送をしていない期間は、Xでの話題数は一気に落ちてしまいます。

劇場版が控えているとしても、そこまでの間は、人々から忘れられないような努力が必要です。

モンストやパズドラといったゲームとのコラボ、あるいは、コンビニとのコラボ限定グッズの販売。

話題を常に投下しつづける必要に迫られます。

推しエコノミー

運営をするうえで、無視できないのがファンの活動です。

ファンは、どこかのタイミングで推しを布教する側に回ります。
推しのコンテンツを購入するだけではなく、自ら関与(エンゲージ)します。

例えばBTSは、ファンが作り出した熱狂的なコンテンツを公式として取り上げます。
これがファンの熱量をより引き上げるとともに、常に話題を投下し続けられる仕組みとして機能します。

公式だけがコンテンツを投下するのではない。
ファンが参加する余白を残して、ファンメイドのコンテンツを公式が再投下することで、運用を回す時代に突入しています。

参考)トークンコミュニティSWC

先程も引用でとりあげたFiNANCiEコミュニティは、トークンというコミュニティ内通貨を持っています。

FiNANCiEコミュニティのひとつ、SWCではトークンが高頻度で交換され続けています。

その様子は、こちらのnoteにガッツリと書いてありますので、ぜひご参照ください。


…ということが、『推しエコノミー』に記述されています。

他にも、日本のキャラクターの特徴についての記述もあり、その内容もめちゃくちゃ興味深いものでした。

欧米のキャラクターは、あくまでも「人間らしさ」の表現です。
スーパーヒーローも、一人の人間としてのアイデンティティを持ちます。

一方で、日本のキャラクターは「象形」的です。

ネコのキャラは、ネコの特性を体現したキャラになります。
消しゴムのキャラは、消しゴムとしてのアイデンティティを持ちます。

概念そのものすらキャラにしてしまいます。
妖怪はその代表例ですよね。

特性を体現したまま擬人化することもあります。
『刀剣乱舞』は、刀の擬人化です。

さらに、『MS少女』は、そもそも現実世界に存在しない、ガンダムの世界の「モビルスーツ」を擬人化しています。

このような、もうなんでもありといえるほどの想像力で、キャラクターを生み出し続けています。

このような日本の独自性を自己認識することも、日本のクリエイターにとっては重要な事に思えます。

また、グローバル市場、および、日本市場において、海外プレイヤーや目立ち、日本のプレイヤーの存在感が薄まっていることもガッツリと事実として記述されています。

これらのファクトを認識するうえでも『推しエコノミー』はめちゃくちゃオススメです!

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