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書籍:有と無

人の思考パターンには「ある型」と「ない型」があるそうです。

『地頭力を鍛える』や『具体と抽象』で有名な細谷功さんの著書、『有と無』で、この点について語られています。

この書籍から、いくつかの学びをピックアップして記載します。

「ある」と「ない」

非対称

「ある」と「ない」は、言葉の意味は対象的ですが、その表す範囲は非対称です。

例えば、学校に「ある」ものをリストアップしようと思うと、簡単に思いつくと思います。

椅子、机、黒板、チョーク…
学校の風景をイメージしながら、「ある」ものをピックアップしていきます。

では、学校に「ない」ものをリストアップするとなるとどうでしょう。
一度、「ん?」と戸惑うのではないでしょうか。

その後、「家にはあるけど学校にないもの」のように、どこかには「ある」ものを探してから、それが学校には「ない」ことを確認すると思います。

「ある」ものを探すよりも「ない」ものを探す方が大変です。

ここから、「ある」と「ない」は、そもそも異なるものということがわかります。
同列の概念に見えても、実際は異なる捉え方をしています。

肯定と否定

※この話は「有と無」には出てきませんが

神学や哲学において、絶対的・超越的・究極的な存在を説明する際に、大きく二つのアプローチがあります。

  • 肯定的:カタファティック

  • 否定的:アポファティック

例えば「神は存在する」を説明するときに、「神は愛として存在する」みたいな肯定的に語るのがカタファティック。
一方、「神は目で観測できる存在ではない」のように、否定的に語るのがアポファティック。

「○○ではない」という言葉で範囲を決めて、存在を説明するようなアプローチがあります。

「ある」と「ない」は、非対称ではありますが、それぞれ補完的です。

有限と無限

「ない」ものは、「ある」ものと違って、無限に存在します。

「ない」ものは、以下の2種類に大別されます。

  • どこかには「ある」が、ここには「ない」もの

  • どこにも「ない」もの

例えば、宇宙服やロケットは、家には「ない」ですが、どこかには「ある」ものです。
タイムマシーンは、現実世界には「ない」ですが、SF小説のなかには「ある」。

これらは、どこかには「ある」が、ここには「ない」ものです。

「ChatGPT」は5年前には存在しなかったので、もともとは、どこにも「ない」ものでした。
「イケメン許さ師を絶対に許さないプリン師」という、適当にいま作った言葉も、どこにも「ない」。

どこにも「ない」ものは、これから先に登場するかもしれないし、登場しないかもしれないものです。
「ない」は無限です。

「ある型」思考と「ない型」思考

人の思考のスタイルに、「ある」と「ない」、どちらをベースにするのかというタイプがあります。

  • 「ある型」思考:「あるもの」に目を向ける発想

  • 「ない型」思考:「ないもの」まで視野に入れる発想

世界は、大多数の「ある型」思考の人と、少数の「ない型」思考の人で構成されています。

「あるもの」の代表は、過去の経験や知識、あるいは、既存の文化や伝統や風習などです。
「ある型」思考の人たちは、既に「ある」枠組みの中で考えます。

一方、「ない型」思考の人たちは、想像や創造の思考力が強い人です。
メタ認知が得意で、視野が広く、抽象概念を新たに作り出します。

いずれも社会にとって必要な人たちであるため、どちらが優れている・劣っているという話ではありません。

しかしながら、これらの思考のタイプの差が、軋轢となって表出することが多々あります。

「深く狭く」と「広く浅く」

「ある型」思考の人たちは、知識や専門性を重視します。
その知識の深さから、ものごとの現実性を判断することができます。

それゆえ、「ある型」思考の人は「深く狭く」なりがちです。

一方で、「ない型」思考の人は「広く浅く」なる傾向があります。

「ない型」は、世の中が広いことを肌感覚で理解しており、色々な世界の素晴らしさを伝えようとします。
現実的にまだ実現されていないものの存在を信じています。

この思考のギャップが衝突する場合が少なくありません。

「ある型」から見たら、「ない型」の考えは非現実的で、地に足がついていない、夢物語に聞こえるものがあります。
「ない型」から見たら、「ある型」の考えは視野が狭く、退屈でつまらない、シガラミの多いものに見えることがあります。


書籍のなかでは、世の中の17個の対立概念を、それぞれ「ある」と「ない」の視点から解説しています。

  • 「問題解決」と「問題発見」

  • 「安定」と「変化」

  • 「ツッコミ」と「ボケ」

  • 「内」と「外」

  • 「既知」と「未知」

などです。

「既知」と「未知」のテーマでは、「ダニング=クルーガー効果」について語られます。

これは、認知バイアスの一種として知られており、以下のようなものを指します。

  • わかっていない人は、自分がよくわかっていると感じる

  • わかっている人は、自分がよくわかっていないと感じる

ソクラテスの「無知の知」のように、「賢い人は自分を無知だと自覚している」という話でもあります。

Xでの投稿は、これらで溢れかえっている可能性があるように思えます。

このような実例を通して、世の中を「ある」と「ない」の枠組みで捉えると、視点が変わることが示唆されます。

細谷功さんの書籍は、いずれも新しい視点を提示してくださるので、オススメです。

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