大林宣彦監督との思い出
20代で珍しいと思いますが、
私は大林宣彦監督の大ファンです。
余命3ヶ月と言われていたこと
でも何年も粘り強くご存命なさったこと
もう決して長くないこと
知っていたうえでのお亡くなりになられたニュースを聞きました。
悲しくて仕方ありませんが
公開予定日に亡くなったあたり、
カッコいい死に際だな、なんて思いました。
まだ新作のキネマの玉手箱は公開されていませんが、
一人の人生が終わったときに、
完結したwikipediaを見て、その日の日付が刻まれていると
私にはありふれた今日の平凡な空が
この人にとっての最期に見た空だったと思うと
神妙な心地になります。
監督との出会いは
「転校生」でした。
1987年に公開された監督の代表作で、
私が生まれるよりも遥かに前の映画なのですが、
そのとき私は思春期真っ只中で、男女入れ替わりの作品にはまっていました。
モーニング娘。の吉澤ひとみさんが勝地涼さんと演じていた
「おれがあいつであいつがおれで」のドラマをYouTubeで偶然見たことがきっかけでした。
おれがあいつであいつがおれでは
転校生の原作の山中恒さんによる小説です。
何度も映像化されている作品でして、
NHKでやっていた「どっちがどっち!」
観月ありささんといしだ壱成さんが主役の「放課後」
石野陽子さんの「おれがあいつであいつがおれで」
などもあります。
ちなみに全部YouTubeで見つけて拝見しました。
便利な時代に感謝です。
山中恒さんの原作は読めていないのですが、、、
それぞれの印象を綴るとこんな感じ。
どっちがどっち!
…主人公が小学生になり、NHKドラマらしいドタバタ劇に仕上げた。長編のためオリジナルストーリーが多い。
放課後
…90年代の学園ドラマの雰囲気が漂う。短めでやや物足りない。
モーニング娘。
…アイドルが演じるだけあって簡易に。単発なので短い。吉澤ひとみさんが太っていた時期の撮影だったことが個人的に惜しい。
石野陽子さん
…昼ドラもびっくりのチープなセット。新喜劇みたいだった気が…。
一つの作品をメディア化するにしても
こんなに捉え方があるのか、とむしろそっちに驚いた記憶があります。
…話を戻して、
他メディア化を見た上で、最後のほうに観たのが大林宣彦監督の転校生でした。
“情緒的“
といった感情を初めて抱いたのが転校生でした。
昔の映画の粒子が荒いところ色彩が暗いところがホラーっぽく見えて怖かったのですが、
8ミリ映画のフィルム越しに見送る一美を写す映像は他に感じたことのない寂しさを感じました。初めて抱いた感情でした。
そして直後に「転校生‐さよならあなた‐」を観ました。
画面が常に斜めになっていることが特徴で、
最後は一美が死別してしまう展開が異なっています。
一美が歌う、ピアノ演奏がとても綺麗で
今でも思い出したときに口ずさんでしまいます。
Amazonプライムビデオでも観れるので先日再視聴しました。
以来、たくさんの大林宣彦監督映画を観ています。
「さびしんぼう」観ました。
富田靖子さんって最近のドラマでは嫌みな母親とか融通の効かない先生とか、そういう役で見慣れていたので、同一人物ということがなんだか信じられません…。こちらの顔だけを見ていて、とか
道化のようなさびしんぼうとか宝物に出会えた心地になりました。
「時をかける少女」観ました。
こちらは私たち世代あるあるですが、
細田守監督のアニメーションの印象が強すぎて、
ストーリーも別物ですし、抵抗が大きかったのですが、
コマ送りで記憶を遡るのが逆に新鮮でした。
筒井康隆さん原作を読んだ上で
大学の文学のレポート課題でこの作品取り上げました。
原田知世さんを立てるアイドル映画って印象でした。富田靖子さんは違ったんだけどなぁ。
こんな女の子現実にいるのかなぁ?みたいな。
身近に変換できなくて私はいまいち馴染めませんでした…。
「ふたり」観ました。
YouTubeに上がっていた低画質のものですが。
監督作品でファン人気がめちゃくちゃ高かったので。
文学的情緒を一番感じたのはこれでしたね。
亡くなった綺麗なおねいちゃんのラジカセで録音した歌を何度も聴いて過ごすなんて、
しかもその歌の哀愁が心をえぐる。
エンディングでは大林宣彦監督と久石譲さんがまさかの合唱。オジサン二人の…。でもそれがいい。
石田ひかりさん独特の喋り方がいい。
はるかノスタルジィも観てみたい…。課金して観れるサイトはないものか。
「異人たちとの夏」観ました。
こちらも根強い人気があるので。
他作品とはまた雰囲気が違いますね。
重松清の小説を読んでいるような。
のちに監督も重松清のその日の前にを映画化してるので大林宣彦作品と重松清は共通概念があるのかもしれない。
まだ両親存命で学生の私ですが、一人暮らしを始めていたので懐かしい安心する無償の愛をくれるその空間をとても綺麗だと思えました。
唯一の失敗は、それを帰省している最中に観てしまったところですかね。一人で見てたら、大林宣彦監督作品史上泣いてた。映画観終わった直後にそっと晩御飯の支度をする母の手を止めて餃子の皮を結ぶ手伝いをしました。
大事件は起きませんが、あの夫婦に会いに何度も再生ボタンを押したい、そんな作品です。
…その度Amazonプライムでレンタルでなく、そのまま購入しまおうかしら。
「花筐」観ました。
大傑作だと様々なところで言われていたのと
Houseより前から暖めていたと言われたら観るしかない。
その上、主演の矢作穂香(未来穂香)さんの大ファンなので観るしかないと。
しばらく留学していて見てないと思ったら大林宣彦監督と知り合っていたとは…。監督のアドバイスで本名に戻したそうな。この話を聞いたとき花筐に出れたことは人生の財産だなと思いましたよ。そんな矢作穂香さん加工こそかかっていますがヌードも披露。潔い女優。
内容は、晩年の監督の戦争三部作のラストらしく、他を見ていないのでなかなか奇抜でそのボリュームと情報量になかなか目が回りました。
でも監督の意思である、戦争体験者の当時の日本の情勢はそれとなく伝わりました。
大河ドラマとか、ドキュメント系の映像しか観たことがなかったので逆にリアルでした。
亡くなられてから、
BSで対談であったり講演の模様であったり
色々放送されていたので
それを観ながら4月は悪い頭ながら思索に耽っていました。
大林宣彦監督のメッセージってまっすぐすぎて直視できない…。
でも私はこの人の遺したものに向き合わなきゃいけないのだと思いました。
監督が強く薦める、「東京物語」を観ながら、
キネマの玉手箱の公開を待つことにします。