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モンゴル前編 #14 ワイルドバスで最西端の町へ

ウランバートルからバヤンウルギーまではバスで60時間。

座席の下の足を入れるところまで荷物でいっぱいで体育座りをしながら、なんとか耐えていた。

出発から4時間。

最初のバスのトイレ休憩が来た。

カチコチに固まった体を伸ばそうとバスを降りてみると、周りは建物も一つもないただの草原。
地平線の彼方までひたすら道路が伸びているだけ。

トイレを探していると、運転手が大声をあげた。

「右側男性!左側女性で!」

モンゴル定番のどこでもトイレのようだ。

バスの右側では男性が、左側では女性が用を足し始めたけど、バスの中からは丸見え状態。

基本的にモンゴルではトイレを外ですることが多いから慣れてはいたけど、さすがに人から見える場所は抵抗がある。

まだまだワイルドさが足りてないなと少し反省した。

バスの前で軽く体をほぐそうと体操をしていると、小学3年生くらいの男の子が近付いてきて、「シャリンガン!!」って俺にポーズを決めた。

子供を指を指して「おー!NARUTOか!」って聞くと嬉しそうに笑顔でうなずいた。

あんまりNARUTOって漫画は見たことがなかったけど、なんとなく「シャリンガン」って言葉は知っていた。

それからバスの中でもその子が俺の席の横に来て、色んな話をしてくれた。

ウルギーに両親は住んでいるけど、その子は学校に行く為に今はウランバートルの親戚の家に住んでいて、夏休みに入ってこれから帰省するところらしい。

久しぶりにお父さんとお母さんに会えるんだ!と嬉しそうに話してくれた。

一通り話をすると、その子が自分の小さな鞄からルービックキューブを取り出して、「できる?」って渡してきた。

何回かやったことがあったから難なく数分で全面を揃えると、周りの大人たちもみんなが「すごい!どうやったの??」「さすが日本人だ!」って褒めてくれた!

まぁそこまでは良かったんだけど、大人がグチャグチャに混ぜたルービックキューブを揃えては歓声があがり、「今度は俺が混ぜるのを揃えてみろ!」っていう流れを2時間くらいひたすら繰り返すハメになった。。。

途中から道路は舗装されていなくなって車内はボンボン跳ね続けていたけど、日も暮れてきて、疲れも出てきていたということもあって、体育座りのまま寝てしまった。

目を覚ますとフカフカのベッドで寝ていて、鳥のさえずりが聞こえいる。

どこからともなく、コーヒーと焼きたての食パンのいい匂いがして。。。。

朝日でオレンジ色に光る草原が眩しく目を覚ますと、そんな夢とは裏腹に、板に薄いクッションを縫い付けたシートに体育座りをして寝ている自分がいた。

体はあちこちが痛くなっている。

隣のお姉さんが「おはよう。よく眠れた?」と手に持っていたパンを差し出してくれた。

「よく眠れたけど体のあちこちが少し痛いや」

「あなたの体は人一倍大きいから辛そうだよね」

貰ったパンを頬張りながら身の上話をしていると、少しは痛さの気が紛れてきた。

あと45時間か。。。

気の遠くなるような時間だな。

寝たり話したりしながらバスの中の長い時間は流れていった。

お昼休憩で途中、近くの村で停車。

いくつかある一般家庭と思われるゲルにみんなそれぞれ、ためらいもなく入っていく。

特に看板が出ている訳でもなく、親戚の家でもなのかな?って思って立ち止まっているとバスで一緒だった青年が「おーい!こっち来いよ!」と大きく手を振ってくれて、言われるがままにそのゲルに入っていった。

「ここはお店なのか?」と聞くとお店ではないらしい。

どうやら一般家庭がご飯を振る舞ってくれているようだ。

ツーヴァン(小麦の平たい麺で作った肉焼きそば)をたっぷり盛ってもらったけど、少し苦手っていう事もあって食べるのがしんどい。

それでも朝からパンを少ししか食べていなくて、めっちゃお腹が空いていたから助かった!

お昼を食べた後、お礼にみんなでお金を払うと、ゲルに招き入れてくれた青年が「モンゴル相撲って知ってるか??」とイタズラそうに言ってきた。

「知ってるよ!勝負する?」

青年がうなずくと同時に周りの人たちから歓声があがる。

同じゲルでご飯を食べていたみんなが見守る中、上着を脱いで自信に満ちた顔の青年と向き合う。

俺も前に何回かモンゴル相撲は経験していて、自信はある!

負けたら「やっぱり日本人は弱いな」と言われるような気がして、なんとしてでも勝ちたかった!

周りの誰かから「レディー、ゴー!!」という掛け声が上がる!

しばらくお互いに様子を伺いつつ、ゆっくりと回り、どちらからともなく青年と取っ組み合いになった。

相手は俺の足を引っかけようと必死に上半身を揺さぶってバランスを崩させようとしながら、足を狙ってくる!

ただ、俺のほうが少しだけ体格は良かったのと柔道は得意だったから、一瞬、相手がバランスを崩した隙を見て、はらい腰で見事に相手を投げた!

不意に周りから歓声が上がると同時に、「次は俺だ!」と次々と挑戦者が表れて、勝ったり負けたり。

最初に8人程度だったギャラリーも30人くらいに増えていて、みんなと仲良くなることが出来た!

休憩が終わって、バスはまた走り出した。

仲良くなったみんなで歌ったり、カードゲームをしたり!

シートは相変わらず最悪だけど、みんな本当に最高な人たちだ!

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