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【13日目】いい人
久しぶりのベッドが心地よすぎて、目を開いた時には既に窓一面に青空が広がっていた。
慌てて飛び起きて、時計を見てみると朝5時に起きる予定がすでに7時過ぎ!
急いで支度をして、馬にも水を飲ませていると奥さんのイドレが「朝ごはんはしっかり食べていきなさい!」とゲルの中から声をかけてくれた。
慌てていて忘れていたけれど、お腹は結構空いている。
ここは素直にお言葉に甘えることにした。
ゲルに入ると赤ちゃんのオルネが抱っこをせがんできた。
「すっかりあなたに懐いちゃったわね」と奥さんも笑っている。
親戚一同は今日も馬のレースがあるらしく、忙しそうにバタバタしていた。
昨日いただいた肉ご飯を俺がすごく美味しいと言ったから朝も肉ご飯を用意してくれていたようだ。
ここの奥さんはすごく料理が上手で、今まで食べた肉ご飯の中では一番美味しい!
よっぽど美味しそうに食べていたのか、「オルネも寂しがるし、今夜も肉ご飯を作るから泊まっていきなよ!」と奥さんが言ってくれた。
親戚たちも「そうしな!そうしな!」と言ってくれている。
ふかふかのベッドに、美味しいご飯。
すごく名残惜しいけど、ビザの期間もそう長くない。
もう行かなきゃ。 お礼を言って、気持ちばかりに3万Tg(約2400円)を渡そうとするも、奥さんが首を横に振りながら受け取ろうとしてくれない。
「本当に気持ち程度だし、気持ちが収まらないから受け取って欲しい」
なかなか受け取ってもらえず、埒があかないし、奥さんのポケットにお金を入れた。
奥さんはポケットからお金を取り出して、「あなたが来年もまた泊まりに来てくれればそれでいい」とそのお金を俺のズボンのポケットに入れようとしてくる。
こっちも受け取らないように拒否していたら、 「じゃあこれだけ貰うからこれは受け取って」と1万Tgだけ取ってを返してきた。
根負けして、お金を受け取って「また絶対遊びに来るから」と握手をした。 「絶対に死なないでね。何かあったらすぐに戻っておいで」と言ってくれた奥さんの目には涙が滲んでいた。
馬の準備をすると親戚の人たちもみんな出てきて見送ってくれた。
会ったばかりの人の為にここまでしてくれるなんて、本当にすごくいい人だ。
みんなに恩返しは出来ないかもしれないけれど、困っている人がいたら、自分も必ずこうであろうと心に強く刻んだ。
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10:30に出発して、横断を開始してから初めてじゃないか?というほど何も起きずに青空の下の草原を順調に抜けていき、18:00には次の小さな集落に到着した。
村から少し離れた草のいいところにテントを張ると次から次へと人が訪ねてきた。
子供たちが水飲み場を案内してくれて、やたらと遊びたがるから縄跳びを回してあげたりした。
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とても平和な日だったけど、草が茂っていて村からも近いから馬泥棒を警戒して夜は焚火をしながら軽くウォッカを飲んで起き続けた。
日本では見たことのないほどの星空はいつまで眺めていても飽きなかった。