【15日目②】死にかけたのに警察に連行される
日射病&脱水症状になって本当に死を覚悟したけれど、なんとかクロのおかげで中規模の町、ナランブルクに到着。
運良く町の入り口に小さな商店があったから、冷えたファンタグレープ2Lを買って一気に飲み干した。
店のおばちゃんは目をまん丸にしてたけど、そんなことにリアクション出来る程に体力は回復してない。
予備の飲み物を大量に買って、ジョナとクロにも小川で水を飲ませて飯屋へ。
ツーヴァン(肉うどん)を大盛で注文して一気に掻き込むと、少しは体力が回復して話す余裕も出てきた。
隣でごはんを食べていたおじさん達に色々とこの町の情報を聞いて、早速教えてもらった草の良い場所に向かった。
既に日は傾いて、空は紫色になってきている。
暗くなる前にテントを張りたいし一刻も早く休みたいから、町の真ん中の大通りといっても舗装されていない土の道を急ぎ足で馬を引いて進んでいくと警察官2人に止められた。
「おいお前。中国人か?」
「いえ、日本人です。」
「日本人がこんな所でなにしてる!ちょっと署まで来い!」
2人とも眉間にシワを寄せていて明らかにまずい雰囲気だ。
警官の一人が強引に馬の手綱を奪うと、もう一人が俺の腕をガッチリ掴んで署に向かって歩き始めた。
署に着くと、一人はパスポートと馬の購入証明を取り上げて読み始め、もう一人はデスクに座り紙とペンでメモを取り始めた。
「どこから来た?」
「バヤンウルギーです。」
「ここから350kmもあるぞ。誰かと一緒か?」
「いや、一人です。」
「どこに向かうつもりだ?」
「ウランバートルです」 (東端の町チョイバルサンって言うと面倒そうだったので)
「一人で馬でか?」
「はい」
警官2人は見つめ合うと、いきなり笑い出した。
警官の一人がデスクからウォッカと煙草を取り出して、「すごいな!お前は男の中の男だ!色々話を聞かせてくれ!」と勧めてきた。
とりあえずは大丈夫そうな雰囲気に一気に緊張が解けて、その場に座りこんだ。
それからウォッカと煙草を貰って今までの経緯を話し始めた。
2人は交互にどんどん質問をしてきて、キリがないし疲れているからと少し無理矢理に切り上げて出てきた。
後からやたらと馬を売ってくれと頼まれたけど、もちろん断った。
辺りが薄暗くなった頃にやっと、目的の良い草が生えている場所に到着。
近くに小川もあって、草もかなり美味しそう!
ジョナとクロを休ませるにはちょうどいい。
テントを張って準備をしていると、何人も訪ねてきては馬を売ってくれと頼まれた。
きっと馬を盗もうとする人も多いだろう。
もう2日もまともに眠れてないし、今日は死にかけたからぐっすり眠りたかったけれど徹夜確定。
まだうっすら明るいうちに1時間だけ寝て、夜に備える。
今回は本当に死んでもおかしくない事態だったからマップを広げて水源の位置を再確認。
川の位置、村の位置が変わっている可能性もあるから、最低限水だけは余裕を持たせないといけないけれど、その分、馬への負担も大きくなる。
色々と考えながら、テントの中からジョナとクロを夜通し監視し続けた。
眠気と疲れで何度か意識が飛びそうになったけれど、ボールペンを手や足に刺して堪えて、朝日が出てから1時間だけ眠りについた。