私の頭の中の小暮
小暮は、小中学時代の同級生だった。
同じ部活動に所属してはいたものの、同じクラスになったことはほとんど無く、友達の友達という関係性だった。
高2のある日、中学時代からのいつもの友達3人と、当時流行っていたモンハンをやるために友達の家に集まると、小暮がいた。
ことゲームに関して言えば、というかそれ以外のことはわからないが、小暮は他人に厳しかった。
クーラードリンクやホットドリンク、秘薬を忘れた友達に対して「何のために生まれてきたの?」と、手厳しいツッコミを上機嫌に入れていた。
それからしばらく、仲間内では小暮のモノマネが流行した。
持ち込み必須のアイテムを忘れた者には、容赦無くあのツッコミが入る。
本人もそうだったが、言葉とは裏腹に、本気で誰かを責め立てるような空気は無かった。
一種のお約束のようなものが出来て、ただただ楽しかった。
結局それ以来、小暮には会っていない。
たった一回、たった一言の名言を残して、小暮は私の人生から去っていった。
あれから15年ほど経った今でも、人生の折々、まあまあな頻度で、心の中に住む小暮が私に話しかけてくる。
「お前さ〜…何のために生まれてきたの?」
当時の口調のままの軽口だが、歳を取るにつれて軽口と受け流せなくなってきている。
わからない。
クーラードリンクも秘薬も生命の粉塵も無い世界で、俺は何をすればいい。
教えてくれ、小暮。
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