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新しい生活、成長を描く絵本①

まもなく、春がやってきて、新しい生活が始まります。保育園?幼稚園?幼い子どもたちだけでなく、小学校、中学校、高校、大学、社会人一年生になる人もいることでしょう。転職する人もいるかもしれないし、引越しをして新しい環境で過ごす人もいるでしょう。

日本では4月が新学期であり、同時に年度始まりともいいます。お正月は大きな意味の新しい年の始まりですが、4月が新しい年のスタートといってもいいくらいです。初めて会う人たち、新しい場所、初めての経験。そのことを通してたぶん人は生きている限り成長し続けるのだろうなあと思います。

さて、今日は朔北社の本の中から、
この時期にぴったりの5冊の本をご紹介します!

まずは、新しい生活を迎える小さな子どもたちへ贈る、
この時期にぴったりの絵本から紹介します!
1冊目はその名も…
『きみたちきょうからともだちだ』(中川ひろたか/文 長谷川義史/絵)

『きみたちきょうからともだちだ』2005年3月刊(7刷)


ね!それっぽいタイトルでしょう? この絵本は、初めて園に通うようになった、年少さんと、それを迎える年長さんとのやりとりを描いた入園式のお話です。いつだったか、あるネット書店の本の感想の頁に、こんなことが書いてあるのを見つけました。お母さんが幼稚園に通う娘さんと、この本を読んでくれた時のエピソードです。娘さんがノートに「わたしたちはせんぱいですが」とメモっていたというのです。彼女がメモしたのは絵本の中で年長さんたちが年少さんに歌を歌うシーンで出てくる歌詞の一部です(この絵本の巻末に絵本の中でみんなが歌う歌の楽譜がついています)。幼いながらも、その事をこころにとめておきたかったのかな?と、とても微笑ましく思いました。

自分たちは迎える側になって、せんぱいとなり、小さな子たちに親切にしなければという心が育っていたのかもしれません。初めて出会うことに「こわくないよ」「いろいろ教えてあげるよ」いう、せんぱいの言葉に、年少さんはどんなに力づけられることでしょう。これは大人になった今でも同じ。大人になった今も、誰かが温かく見守ってくれたり、そっと背中を押してもらうことでとても安心をもらいます。
一年の間に子どもたちが成長をしていくんですね。たったそれだけの間に、他の誰かに色々教えてあげられるくらいにね。園内を案内したり、一緒に遊ぶうちに、今までは「個」であった子どもが、大勢の中で小さなルールを作って生活するようになります。順番を待つということや、使った後に片づけるということを学び、弱いものや小さな子たちを手伝ってあげたり、守ってあげたりするようになる。そんなことを先生や、小さなせんぱいたちの行動から学びます。自分たちの子どもの頃はどうだったでしょう? 遠い昔を思い出してみると、確かに子どもの頃はとくに自分より小さな子たちに、子どもなりに目を配っていたことを思い出します。子どもはしてもらったことをちゃんと覚えていてそれを自分より小さな子にしてあげようと思うのかもしれませんね。
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そして2冊目。
『おたんじょうびのひ』(中川ひろたか/文 長谷川義史/絵)

『おたんじょうびのひ』2006年8月(8刷)


舞台は『きみたちきょうからともだちだ』と同じ、たのしい園のお話です。たのしい園で誕生日会をすることになり、自分の生まれてきたときのこと、小さかった頃のことをお家で聞いてくることになった子ども達。自分の話を話してもらうときの、なんとも嬉しいような恥ずかしいような気持ち。話すほうも自然にその成長を考える時をもつことになり、大人も子どもも改めて命の誕生について考えるきっかけにも。無事に生まれてこられてよかったね。大変だったけど大きくなったね。そんなふうに読みながら子どもたちに声をかけたくなる絵本です。少し大きくなっても、節目節目にこの本を出してきて家族で語り合うのも楽しいかもしれません。
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3冊目。
『しっぱいしちゃった』
(ノーマ・サイモン/ぶん ドーラ・リーダー/え なかむらたえこ/やく)

『しっぱいしちゃった』1997年1月刊(6刷)


誰でも失敗なんてしたくない。だけど失敗しない人はいません。子どもは初めてだらけ、はじめからなかなかうまくはいきません。でも大人だって失敗しちゃうことあるんですよね。人は失敗もするけれど、やり直すこともできるし、失敗という経験からたくさん学ぶことができます。しっぱいをこわがるのではなく、そこから何を考えるか…会話の糸口に。シンプルなデッサン調の絵がさまざまなシーンを描きます。地味な絵本ですが根強く人気のある絵本です。
文章を書いたノーマ・サイモンは、この本について絵本の冒頭でこんなふうに書いています。心に残ったので抜粋します。
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—―おさない子どもはとくに、人にみとめられたい、はげましてもらいたい、そして何かをやりとげた場合にはほめてもらいたいとねがっています。何かの意味で期待にそえないとき、子ども自身が自分をいちばんきびしく評価するでしょう。子どもは、すべてにおいて完全ということはないのだということに気づく必要があります。とてもえらいと思っている両親や先生でも失敗することはあるのだという、おおらかな気持ち、ほっとするようなはげましが子どもには必要なのです。
(『しっぱいしちゃった』「この本について」より抜粋)
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4冊目は漢字もあるし文字たっぷりの絵本なので小学校中学年~大人向けかなと思います。
『ペピーノ』
(リンデルト・クロムハウト/文 ヤン・ユッテ/絵 野坂悦子/訳)

『ペピーノ』2001年5月(2刷)


ペピーノはサーカスでクマになりきって人気を博している少年です。人気者ではありましたが幸せではありませんでした。ある日思いました。自分はクマのペピーノと人間のペピーノどちらのペピーノでいればよいのだろうか?とペピーノは悩みます。本当の自分はどこにいるのだろう? 成長するにつれいろんなことに気づくことがあります。家のあたりまえが外では違うこともあります。場所をかわれば常識が変わったり、ペピーノのように、いつしか自分のありかたに疑問を持つこともあるでしょう。旅立ち、出会い、いままでにない感情、発見…成長する中で芽ばえる何かを受け止めてくれる仲間や大人がいるということ。自分を認めてくれる人がいることで自分と向き合うことが出来たり、人との出会いによって人は成長していくのかもしれませんね。
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5冊目。
『いってらっしゃいおかえりなさい』(クリスティーヌ・ルーミス/文 たかばやしまり/絵 まえざわあきえ/訳)

『いってらっしゃい おかえりなさい』2004年1月(2刷)


原題が"RUSH  HOUR”というこの絵本。都会の朝晩のラッシュアワーの町の様子をリズミカルに描いています。朝起きて、一日の生活が始まります。家を出てバス、タクシー、電車、自家用車、飛行機、フェリー、人々は様々な乗り物にのって、幼稚園や保育園、学校や職場に向かう様子が描かれます。昼間は昼間のそれぞれの居場所ですごし、やがて夕方のラッシュアワーとともに帰路につく。ラッシュアワーを描きながらも、日々のなんでもない一日を何気なく描くこの絵本には、人々の小さな日常の幸せが描かれているような気がします。描かれているのはアメリカのそれですが、日本でも他の国でもどこにでも見られる日々の光景ではないでしょうか。
ラッシュアワーなんて大嫌いですが、この絵本を見ていると、とても活気のある町の様子に元気づけられ、新しい未来や、生活を連想させてくれます。いってらっしゃいとおかえりなさいの間にあるもの。生きるという営みが続いていくという安心感。子どもだけでなく大人にもおススメの絵本です。

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次は金曜日に他社本の中から同じテーマで選んだ本を紹介します。
お楽しみに!

(文責:溝上)