孤島の鬼漫画化に向けて②
いよいよAmazonや、各種マンガ配信サイトでも、予約がスタートしている。
江戸川乱歩「孤島の鬼」を、現代に設定を置き換えつつもアレンジを加えていく作業に着手したのは、実はもう二年も前になる。
この二年の間、監督脚本作の映画「君の忘れ方」の脚本~撮影~編集もあったので、その一番忙しい時期は脚本作業は中断させていただきつつも(その間に作画の小川さんが進めてくださったり)、ずっと頭には「孤島の鬼」があった。
すなわち映画を作りながらも僕の心にずっとあったのは、敬愛する江戸川乱歩先生への憧れであり、嫉妬であったのだ。
原作の何が素晴らしいかというと、とにかく設定だと思う。いわゆる掴みというやつかもしれない。
蓑浦と諸戸という二人の若い男子が主人公なのだが、諸戸がどうやら蓑浦に惚れている。ある夜、一線を越えてしまいそうになるんだけど、蓑浦が断ってしまう。
で、結局疎遠になる二人。
ほら、もうすでに、結構ドラマチックでしょう。
ネタバレを避けた書き方をしつつ。切ない別れの後、蓑浦には彼女が出来る(蓑浦は、その年齢の時点においては、異性愛者。あるいは同性愛的思考を避けていた、ということだろう)。
物語は、その彼女を巡る、諸戸と蓑浦の三角関係のようなものになる……
かと思いきや、予想外の事件が発生。
その事件のせいで、蓑浦が諸戸を恨む、という展開になるのだ。
それからはもう、物語があれよあれよと広がって唸っていく。
設定を思いついた作家・江戸川乱歩の勝ちだと思う。
作家を志すものなら、良い設定さえ思いつけば、あとはそのカードの切り方さえ上手に運べば物語は進行していくという感覚を、ある程度は共感してもらえると思う。
乱歩が「孤島の鬼」で考え付いた設定は、本当に凄い。手放しで拍手。もう諸手をあげるとはこのこと。いやあ、さすが先輩。すごいっす。さすが今年で生誕130周年の大先輩っす! ちなみに僕は今年で生誕34周年っす。先輩と100年歳の差あるっす。あれ、めっちゃあるっすね。
↑下北沢ビレバンでトーク&サイン会させていただきます。
ところで物語は、小説全体の前半を折り返したあたりで、ミステリーからサスペンスに変奏しているのだ。
謎自体、実は物語の前半でほとんど解ける。しかし後半、その真相に対峙しようとある島に向かうのだが、そこでは命を懸けた対決が待っている。
この後半のスリル、面白さがあるからこそ、この小説は今も多くの読者に読まれるのだと思う。
僕も、現代にアレンジするにあたり、この構成を意識した。
漫画は実は全二巻で、今回出版されるのはまずは一巻目だ。上下巻の上というところだろうか。上巻が疾走感を大事にしたミステリー。下巻はサスペンス。
とにかく原作にある設定の妙と、疾走感だけは取りこぼしまいと脚本を書いた。
指定がオールカラーの縦読み漫画でということだったので、
そしてシャム双生児や、諸戸丈五郎の悪行をいかに別のものに置き換えるか。
もし原作既読の方がいらっしゃったら、そこをぜひ楽しみに、読んでいただけると嬉しい。
ちなみに②(下巻)。原作では島にいくところ。
今回のコミックでは、実際に島には行かない。もはや世界中どこでもグーグルマップでつまびらかな時代。まだ未発見の島に、キングコングがいましたわ、みたいなことは、現代の設定では無理がある。
どう置き換えたか。
まずは①を読んでいただき、次の刊行をお待ちいただけると、幸いである。
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