作道雄

映画監督・脚本家/阪神とカルボナーラ/監督脚本「君の忘れ方」・VR映画 「Thank you for sharing your world」/小説『Love Letters~100回継ぐこと~』 /脚本 映画「アライブフーン」NHKドラマ「ペットにドはまりして、会社辞めました」

作道雄

映画監督・脚本家/阪神とカルボナーラ/監督脚本「君の忘れ方」・VR映画 「Thank you for sharing your world」/小説『Love Letters~100回継ぐこと~』 /脚本 映画「アライブフーン」NHKドラマ「ペットにドはまりして、会社辞めました」

最近の記事

他人の話を理解するのは難しい

 他人の話を理解するというのが、どれほど不可能に近いことかと思う。  久しぶりの休日。読みたかった本に手をのばす。朝比奈秋氏の「サンショウウオの四十九日」。読みはじめて三十ページで手が止まる。どうにも頭に入ってこなくなった。面白くないというのではない。著者の言わんとすることが自分の持っている世界の外にあることだから、努力しないと僕の中に入ってこないのだ。肩が強張りだすのを感じる。元から激しい肩凝りに悩まされているのだが、こういう時にやってくるそれはかなり厳しい。首から上に正常

    • 江戸川乱歩先生への手紙

      拝啓 江戸川乱歩先生 はじめまして。 映画監督、脚本家をやっております。作道雄と申します。 先生の「少年探偵団シリーズ」と小学校の頃に出会って、猛烈な影響をそこで受け、ミステリーやサスペンスが大好きな人間になりました。 このたびご縁があって、先生の「孤島の鬼」を現代にアレンジ、コミカライズの原作を担当させていただくことになりました。いま、発売前夜です。 先生の頃にはなかったでしょうが、今は配信サイトでも本や漫画が買えてしまえるんですよ。配信サイトでは、すでに書影が公開さ

      • 孤島の鬼漫画化に向けて②

        いよいよAmazonや、各種マンガ配信サイトでも、予約がスタートしている。 江戸川乱歩「孤島の鬼」を、現代に設定を置き換えつつもアレンジを加えていく作業に着手したのは、実はもう二年も前になる。 この二年の間、監督脚本作の映画「君の忘れ方」の脚本~撮影~編集もあったので、その一番忙しい時期は脚本作業は中断させていただきつつも(その間に作画の小川さんが進めてくださったり)、ずっと頭には「孤島の鬼」があった。 すなわち映画を作りながらも僕の心にずっとあったのは、敬愛する江戸川

        • 孤島の鬼漫画化に向けて①

          江戸川乱歩に出会ったのは、小学校の3年生くらいの時だったと思う。 自宅に、兄が持っていた乱歩の本があり、それに手を伸ばしたのがきっかけだった。 最初はおっかなびっくりだった。 ポプラ社の少年探偵団シリーズを見たことがある方なら、ピンと来るのではないだろうか。背表紙に、おっかない仮面の男が肖像画の感じで、こちらを向いているのだ。青い帽子に赤い服。触るのも怖かった。 しかし、怖いもの見たさという言葉そのまま、「怪人二十面相」を読み始めた僕は、虜になった。読み終えてもしばらく、

          高校の同級生とのトークイベント

          高校3年間、もっとも多くの時間を一緒に過ごした友人が、黒岩徳将くんだった。 彼とは、同じ文系だったこと、電車で帰る方向が一緒だったこと、さらには音楽の趣味が一致したことなどから、仲良くなった。 音楽の趣味といっても、好んでいたのは流行りのJPOPだ。彼はポルグラフィティを愛し、僕は森山直太朗さんを愛した。 数名で連れ立って、学校帰りによくカラオケに行った。6時間歌い込んでもまだ歌い足りなかった。 最後は大抵、中島みゆきを合唱してカラオケを締めた。最後に歌うことで、歌謡曲その

          高校の同級生とのトークイベント

          僕にとっての青春

          YUKIばっかり聴いてた頃があったのに、いまはあまり聴かない。でも、メロディを頭に流してみただけで、胸はときめく。 先週末、一泊二日で一人、京都に出かけた。 京都市の北にある街で開かれる映画祭に参加するためという大義名分もあったけど、可能な限り気ままな一人旅の気分を味わおうと、準備もそこそこ、旅のプランを考えるよりも先に新幹線に乗った。 映画祭に参加した以外は、極力自由に時間を過ごすことができた。よく通ったイタリアンバルや、大学にも行った。むかしのことを沢山思い出した。

          僕にとっての青春

          勝負

          DAZNで野球中継を見ていたら、中日の立浪監督の采配に驚いた。 0対0の同点のまま迎えた9回表。ここまで無失点だった中日の先発ピッチャーが、ツーベースを打たれた。すると立浪監督は、交代を決断。守護神にスイッチした。 見ていた僕は、えええ、と声に出して驚いた。 解説は、僕の大好きな阪神の前監督、矢野さん。 矢野さんも、キャッチャー出身の自分としては腑に落ちない投手交代だ、といった趣旨のことを仰っていた。 だよなあ、と僕も頷いた。 しかしその少し後で矢野監督は、ここで立浪監督

          祝日

          性格が変わったな、と思う。自分のことだ。 一番強く思ったのは、昨年末M-1グランプリを見ていた時のこと。 僕より熱心な方もたくさんいらっしゃるだろうが、僕は結構お笑いが好きで、M-1グランプリは毎年欠かさず決勝戦観ているし、昨年は昼過ぎからの予選もテレビ前にかじりついた。 毎年お酒を入れながら、友人と対面やオンラインでリアルタイムで審査の行方を予想する。 最終審査の時には相当酔っているし、熱も入っているものだから、審査員一人一人が誰に入れたか、名前が表示されるたびに、あー!

          スポットライトを当ててくれ!

          2023年9月。 映画「君の忘れ方」の、たしか撮影後半戦に突入した頃。その日は午前中が撮休で、午後に結婚式のシーン撮影のみを、予定する日だった。 朝9時、僕の泊まる宿の前に車が着いた。ロケ車ではない。本当に来ると思ってなかったから、僕は苦笑した。差し入れ用の大量のハイボールを車から下ろしながら、その先輩二人は立っていた。 東京を、まだ明け方暗いうちに出たという。二人とも、さすがに少し眠そうに見えた。 映画監督の高明氏と、俳優の森本のぶ氏だ。 僕たちは近くの喫茶店でモーニング

          スポットライトを当ててくれ!

          編集の合間に

          ことさら忙しい二週間を過ごした。 書かなくちゃならないものが幾つか、編集チェックをしないとならない映像もちらほら。 映画「君の忘れ方」の音楽仕上げも、クライマックスを迎えていた。 音楽を依頼させていただいたのは、作曲者でありかつ演奏者でもあるチェリスト。 昨年の6月頃からやり取りを重ね、今年に入ってレコーディングが開始。僕もスタジオに入らせていただき、塩梅を打ち合わせしながら収録を見守った(とても贅沢な作り方をさせていただいたと思っている)。 三日前の金曜日が、その最

          編集の合間に

          「死仮面」という作品が出来ました

          2022年4月初旬。 俳優の中村優一氏と、僕は監督・脚本作の舞台挨拶巡りをしていた。 もとはケーブルテレビの連続ドラマとして、いわば地域密着の形で制作された「1979 はじまりの物語」が、再編集と追加撮影を行い、映画化されることになったのだ。 舞台挨拶は、二日間に渡った。 初日は大分県別府の別府ブルーバードにて。その夜は別府に宿泊。二日目の朝、別府を出発して昼に大阪の十三シアターセブンへ。さらに東京へ移動して、夕方過ぎから池袋シネマロサ。 乗り間違いを許されない、緊張か

          「死仮面」という作品が出来ました

          ケルヒャーをご存知だろうか

          ケルヒャーをご存知だろうか。 ケルヒャーとは、ドイツの家電製品のメーカーで、スチームクリーナー(高圧洗浄機)が有名である。 僕がこのことをいつ知ったかと言うと3日前で、教えてくれたのはジャパネットたかた、だった。 夕方にぼんやりテレビを見ていたら、ジャパネットたかたの番組が始まり、相当強力に押されていたのがケルヒャーのスチームクリーナー。 要するに物凄い勢いでノズルの先から水が出て、面白いくらい汚れが落ちるという代物。 中には高温で除菌までしてくれるタイプもあるそうで、

          ケルヒャーをご存知だろうか

          生業にはしていない方とのモノづくり

          愛知県半田市にあるケーブルテレビ局CACというところと、4年前にお付き合いが始まり、定期的に番組制作の仕事をさせていただいている。 1年前から、「わたしのストーリー~あなたのエピソードを映像化~」という番組が始まった。 地元にお住いの方から、ちょっとした思い出話を投稿してもらい、それをショートドラマにするというもの。 僕は、ディレクターをさせていただいている。 局の方針から、基本的には出演者を地元にお住いの方々によって構成させるというのが、この番組最大の特長だと思う。 要

          生業にはしていない方とのモノづくり

          「近畿地方のある場所について」が怖すぎる

          映画と同じくらいの数、小説を読むので、よく知人から推薦してもらう。 この1ヶ月、2人からこの本が怖いと薦めてもらったのが、『近畿地方のある場所について』。 小説投稿サイトのカクヨムで人気に火がつき、単行本になったのだという。 SNSで存在を知って気にもなっていたし、本屋で購入した(隣に置かれていた『変な家』と『変な絵』もその時ゲットして読んだ。僕は『変な絵』派だった。うどん派か蕎麦派かのノリで誰かと語り合いたい。あなたはどちら派?) 子どもの頃、怖いものがとにかく苦手

          「近畿地方のある場所について」が怖すぎる

          ダ・ヴィンチ12月号に掲載いただきました

          映画『君の忘れ方』撮影の真っ最中。 朝一で撮影後、夕暮れ時を狙うまで撮影はお休みです、という日があった。 そんな日は基本弁当は用意されず、バレ飯になる(バレ飯、撮影現場用語。バラバラにご飯を食べてね、ということ)。 880円までならば、領収書で後日精算しますよという素敵なルールが、撮影の現場には基本的に存在する。 超えた分は自腹で払えば大丈夫なので、高山ラーメン屋に入った僕は、チャーシューと煮卵をトッピング。普段なら撮影中は腹いっぱいに絶対しないのだが、仮眠を取る時間もあり

          ダ・ヴィンチ12月号に掲載いただきました

          野球と映画は同じという話③

          阪神タイガース、CS初戦勝利の喜びを噛み締めつつ。 前回の記事で、脚本は投手であると仮説を立てたが、ここでは、俳優(役者・キャスト)は打者であるという説を述べたい。 今年、東京ドームへ2回、阪神の試合を見に行った。 一番大きな声を上げて騒いでしまったのが、阪神・大山選手のホームラン。 やっぱり、期待した打者が打つのを見るのが一番気持ちがいい。 単純に、見に来た価値があると思えた瞬間だった。 これは、俳優陣の素晴らしいお芝居を観ると、観客が胸打たれるのと似ているな、と思う

          野球と映画は同じという話③