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待合室にて

等間隔に並ぶ春色のシート
残った体温にヒヤリとして
背筋を硬くして背中を宙に浮かす

並んで座る2人から目を逸らせない
秋の乾いた公園にいるような
2人だけのための強さと寂しさ

名前を呼ばれて顔を上げる
すぐには歩き出さない
2人だけのための時間が始まる

男の老いた腕が差し出され
女の手が重ねられる
杖と細い腕に信頼をあずける

老いを受け止めて揺れるススキのように

当たり前になるまでの時間を思う
老いを受け入れて
最も近い人と また歩き出す

名前は覚えてないけれど
あたたかい2つの腕の記憶は残る



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