映画のヘンタイ(雑文/日記)
今度観に行こうとしている映画のタイトルと内容を話すと、
彼は眉間にシワを寄せて、
「キミの映画の好みは極めてヘンタイ的だね」
と言った。
「わざわざそんな、落ち込んだり悩んだりしてしまうような映画を
好き好んで観に行くなんて、
僕には考えられない」
彼に言わせれば、
自分にとって映画はエンターテイメントであるから、
観終わったらハッピーな気持ちになったり、
愉快痛快な結末があったり、
映画館を出るときに笑顔でいられるものが好みだそうだ。
そう言われれば、
お金を払ってわざわざ暗い気持ちになったりするなんて、
映画鑑賞とは実に奇妙な趣味だ。
例えば、
主人公の大切な人が亡くなったり、
主人公が自分の軸となるものを失ったり、
あるいは、
悲惨な戦争やテロの実情を描いたり、
貧困の中で暮らす人々の日常だったり、
言葉にならない感情を抱えながら、
消化するまで何日も、
観た映画について考え込んでしまう。
ヘンタイ的だと言われても、仕方がない。
今の私に分かっていることは、
その消化の過程も含めて、映画が好きだということ。
主人公について考えていたはずなのに、
自分と向き合ってしまうことも多いし、
日本史や世界史について
勉強し直すことも多いし、
考えに考えすぎて、
気が付いたら、
昔の私とは考えが変わってしまっていることもある。
それが、面白い。
そんな体験も含めて、私は映画が好きなんだと思う。
ハッピーな映画も、ユウウツな映画も、
時間とお金が許す限り、
しわくちゃになっても観に行きたい。
これからもどんどん、映画のヘンタイになっていき、
「あれはあの監督のあの作品に似てるわね」
「あの映画はわたし、劇場で観たのよ」
なんて語れる、
ヘンタイなおばあさんになりたいと、思った。
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