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タロットカードと写真

写真を撮り貯めていくうちに、特別な思い入れやエピソードのある写真というのができてしまうことがある。
その写真を撮るに至った経緯や心情、偶然のできごとなど、その一枚には背後にストーリーが潜んでいる。
人物を撮った時には、被写体となった人がその写真に収まるまでのストーリーもプラスされる。


時に写真が思いもよらなかった自分の本心を暴き出すことがある。
自分でも気づかずに心の奥底に秘めていた本心が意識より先に写真として現れ、その写真を見て知らなかった自分の本心を自覚する。
なんとも不思議な感覚がするのだけど、どこかで体験した感覚だと思った。

そうだ、タロット占いだ。
タロット占いをやるのと写真を見て自分の本心を知る感覚は、全く同じだった。

試しに私は特別な写真を一定数集め、伏せて混ぜ、答えを知りたいことについて強く念じ、三枚の写真を選び、順番に並べてみた。
写真でタロット占いをやってみたのだ。

結果は、怖いくらいの正確さで写真は私の未来を言い当てた。

一枚だけ見てもストーリーを持っている写真が複数組み合わさると、そこに新たなストーリーが生まれる。
私はそれをお話を作るように読み取っていく。
同じ写真でも隣に来る写真が変わると意味が強まったり、変わるものもある。
読み方もタロットと同じだった。
むしろタロットよりやりやすかった。
タロットは本を見ても同じカードに色んな意味がありすぎて正直うまく使いこなせなかった。
でも、自分の撮った写真だと、心に勝手に浮かぶお話をそのまま出せばいい。

友人にもやってみたが、思ったよりも当たるのでビックリした。
もっと写真を増やしてカードにしたら、本当の占いとしても成立すると思った。

でも、それは実現しなかった。

写真家としての評価が高かった当時のパートナーの写真で同じことをやってみたら、各段に占いの精度が上がり、作品の質と占いの結果は比例するのだと分かったからだ。ちゃんとやるならパートナーの作品をカードにすべきだと思った。
パートナーとして関わるなかで写真家が生み出した作品には、私が関わった写真も多く、意味を読みやすいし、自分で撮った写真よりも深く強いストーリーが埋め込まれていた。
どうせやるなら精度の高いものをやりたい。
けれど、もうその写真家の作品を他人になった私が自由に使うことなんてできない。

いつかその写真家の素晴らしい作品を使える日がくるのなら、その時には必ず続きを考えようと思っている。


写真タロットをやらなくなってから、リアルに出会う人物や起きるできごとそのものがタロットカードや写真を使った占いと同じなんだと私は気づいた。

流動的で不確定要素が多い分だけダイナミックな物語が毎日引き起こされるので、私はいまも絶え間なく続く日々のストーリーの読み取りと解釈に熱中している。



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