『ままならないから私とあなた 朝井リョウ』
初めてこの本を手に取ったのは高校2年生の時。
真っ白な装丁にキラキラと光る蒼の印字がどこか無機質さと温かさを醸し出していて、いつの間にか手に取っていた。
正直その時は同時収録の「レンタル世界」の方は結構好きだったけれど、「ままならないからわたしとあなた」の方は薫の気持ち悪さに苦手意識を覚えてしまって苦手だった。
久々に読んでみて、6年経った今も概ねその感想は変わらない。やっぱり薫の思考回路は理解出来ないし、理解したいとは思わない。
でも、親友の事を一生懸命考えていて、薫は薫なりに必死に生きているという事は凄く伝わった。読み終わって、6年で私も成長したんだな、と少し誇らしくなった。
もう1つ、あの頃は気が付かなかったが、今は薫自身が皮肉になっているんだとふと思った。
変化を恐れる世界、でもそれ以上に自分の殻から出てきて他者の世界を知ることを拒む薫。最後のあの薫の言葉は自身の恐怖を世界に押し付けたのではないかと思う。
6年経ってみて、やはり薫の思考回路は理解したいとは思わないが、登場人物の誰よりも人間らしい薫の事は少し好きになった。