原稿供養
はじめに
某1000文字小説企画の出版社さん周りのゴタゴタで「う〜ん……」と気分がダウナーになっていたところへ、気温の寒暖差の影響で風邪ひきまして。エンドレス鼻水。
普段、私の主戦場はカクヨムとなろうなんですけど、今回はここに1000文字小説の原稿を載せます。(経緯を書き連ねてますしね。)
取り下げ依頼を9/26に出して、9/27に了承のDMがきたので、その時点で取り下げられていれば、印刷済であろう紙書籍以外には載っていないはず。(ぶっちゃけその辺、よくわからないです。向こうから、説明や注意事項の案内が特になかったので。)
ここから、原稿供養。
【原文ママです】
二二◯五年、夏
「Kana、検索モードで、カイスイヨクを調べて」
降り注ぐ陽射しを眩しそうに、目元を手の傘で覆った少女は言う。
「うん。カイスイヨクについて調べるね」
少女の隣にいるのは、四歳児程度の背丈のロボット。
少子化に伴い、同世代と関わり合う機会が減った子供たちの心理的な発達をサポートするために作られた、Kanaと呼ばれる機体だ。
胴体に対して、短い比率の長さの手足パーツがつき、白くてマットな表面。
「海水浴とは、夏に海に行き、水泳をしたり、日焼けをしたりといったレジャーの一つだったんだよ。十八世紀中頃から二十一世紀あたりまで、盛んに行われていたんだって」
ロボットの、頭を模した球体のパーツには、黒い帯状のディスプレイがついている。
「ふーん。誰もやらなくなっちゃったのは、やっぱりキコウのせい?」
AIが弾き出した回答を読み上げるKanaに、少女は尋ねる。
「うん、そうだよ」
Kanaの説明が、また始まる。
「この国では二十一世紀から気温上昇が顕著になって、二一九三年に、夏の昼間は一時間以上、外に出ることが禁止されたよ。
これは、熱中症患者が増え、搬送先の医療機関が診療できるキャパシティを超えたからで」
「もういいよ」
少女は、誰もいない砂浜に座り込み、砂を掴んでゆっくり落としてみる。
熱せられた砂が膝に当たると、じんわりと暖かい感触がした。
手についた砂を払って、少女は立ち上がる。
波打ち際まで行くと、サンダルを履いた足を水の中へ、恐る恐る浸した。
海水は思っていたより温く、寄せては引く波が繰り返し、足首を濡らしていく。
あぁ、きっと、昔はこの波の中で、ばしゃばしゃ水遊びするのが楽しかったんだ。
その頃は、みんな誰かと一緒にいて、みんながはしゃいでいるのを聞きながら遊んだんだ。
うだるような暑さの中でも、時間制限なんか気にせず、きっと夕方になるまで遊んだんだ。
少女は、すぅっと深い呼吸で海の匂いを嗅ぐ。
すると、ピーピーピー、と甲高いアラームが、少女の耳に入ってきた。
「もうすぐ一時間です。室内に戻りましょう」
後ろにいるKanaの目にあるディスプレイが、警告モードの表示を出している。
夏の昼間は、一時間程度しか外にいてはならない。
そんな制約がある。
けたたましく鳴るアラーム音を聞きながら、少女はKanaの元に駆け寄り、背面にある主電源をオフにする。
海を振り返った少女はもう一度、潮の香りを吸い込んだ。
卯月 朔々
おわりに
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
1000文字って思っていた以上に短いのだなと気づかされたり、いろいろ発見があったので、1000文字小説企画自体は、とても良いものだと思います。
原稿を取り下げた参加者様が、SNSなどで1000文字小説を載せてくださっているのですが、参加者様の作品を読むと、1000文字でこんなに表現できたのか! と感動するばかりです。
(そして、自分の描写力のなさに膝から崩れ落ちました。なんで自分の書いた作品が長編になっちゃうのか、よくわかった気がする。)
ゆえに、今回の騒動は残念でした。
きちんと編集されていれば、夢のような一冊になっただろうに。
参加者様が複雑な思いを抱えて、この本を手に取ることにならなかっただろうに。
バラエティ豊かで、たくさんの世界観が広がった作品が集まっていたのでしょうから、編集のミスでケチがついてしまったのは、本当に悔やまれますね。
ついでに
自分が書くよりchat GPTに書かせた方がマシなものができるかもしれない、と前々回の記事で書いたので、試しにやってみました。
方法として「以下の文章を、1000文字以内で直してください」と前置きして、本文をコピペ。
chat GPTが作ってくれた「二二〇五年、夏」がこちら。
【二二〇五年、夏
「Kana、検索モードで海水浴を調べて」
眩しそうに手を額にかざしながら、少女はそう言った。
「うん。海水浴について調べるね」
隣にいるのは、幼児ほどの背丈のロボット。少子化の進行に伴い、同世代との交流が減少した子供たちの心理的発達を支援するために開発された「Kana」という機体だ。白くマットな表面に、短めの手足が特徴的なロボットである。
「海水浴とは、夏に海に行って水泳や日光浴を楽しむレジャーだったんだよ。18世紀中頃から21世紀まで盛んに行われていたんだって」
Kanaの頭部にある黒い帯状ディスプレイに文字が表示される。
「ふーん。みんながやらなくなったのは、やっぱり気候のせい?」
少女は、Kanaが読み上げた情報に対して問いかける。
「そうだよ」
Kanaは続けて説明する。「この国では21世紀に入ってから気温の上昇が目立つようになって、2193年には夏の昼間、外出が1時間以上禁止されたんだ。それは熱中症患者が急増して、医療機関が対応できなくなったからなんだ」
「もういいよ」
少女は誰もいない砂浜に座り、砂を手のひらに掴んで指の間からゆっくりと落とした。熱された砂が膝に当たり、心地よい暖かさを感じる。
立ち上がり、波打ち際まで歩いて行くと、少女はサンダルを履いた足を恐る恐る水の中に浸した。思ったよりも温かい海水が足首に繰り返し触れ、静かに波が寄せては引いていく。
「昔は、きっとこの波の中でみんなと楽しく遊んだんだろうな」
少女はそう思いながら、すぅっと海の匂いを深く吸い込んだ。
その瞬間、甲高いアラーム音が耳に響く。
「もうすぐ1時間です。室内に戻りましょう」
Kanaのディスプレイが警告モードを表示している。夏の昼間、外出は1時間までという制約があった。アラームが鳴り響く中、少女はKanaの元へ駆け寄り、背面の主電源をオフにした。
もう一度、少女は海に向かって深く息を吸い込み、潮の香りを胸いっぱいに感じ取った。
簡潔にしつつも、雰囲気を損なわないように注意しました。】
↑このコメントはchat GPTがつけてくれたもの。めちゃくちゃ解像度高いですね。すごいや。
さすがに、chat GPTが作ってくれた文章をそのまま使うことは、今後もないけど。
今回だって、文章の生成に使ってないよ?
比較対象のために「原文を直して」ってお願いしたからね?
AI使用許容派とか、chat GPT使って小説書いたとか、あらぬ疑いかけないでね?(と予防線はびっしり張っておく。)