豆炭コタツ
もう20年近く前、まだわたしが小学生だった頃。
祖父母の部屋のコタツは、豆炭でした。
朝早く、石油ストーブで豆炭に火をつけるのが冬の祖父の日課。
「コタツで寝たらかんよ!」
普段はそう言われるけれど、年に一日だけ、それが許される日がありました。
歳の近いいとこ2人と兄とわたしの4人で、ひとり一区画、+の形にコタツに布団を並べて眠るお正月。
このお泊まりが大好きでした。
朝方にはゆっくりと冷めてくる豆炭コタツ。
祖父はいつも、火をつけた豆炭を入れ替えに来てくれました。
ガチャガチャ鳴る音を、眠りの隅に聞きながら微睡む。
あの時間は、わたしにとっての “しあわせ” でした。
時が経ち、豆炭コタツは電気コタツになり、元気だった祖父は亡くなってしまいました。
それでもあの思い出は今もわたしの心を、豆炭のようにじんわりとじっくりと暖めてくれています。
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