【私のバングラデシュ・クロニクル】

グラミン銀行が危ない

《初出: 『週刊金曜日』2013年2月15日号、境分万純名義》

 バングラデシュは今年(2023年)から来年にかけて、国政選挙をひかえている。
 そうしたなかで、2006年労働法によってダッカで起こされた刑事裁判が、国際社会の憂慮を集めている。被告人のひとりが、先の7月にも講演などで来日した、グラミン銀行創設者で、2006年度ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス教授だ。

 9月中旬には、国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルが、ユヌス教授に対する、司法の名を借りた脅迫やハラスメントをただちにやめるよう、バングラデシュ政府と関係機関に要請している。
 その半月前の8月末には、100人を超える歴代のノーベル賞受賞者や各国の閣僚経験者などが、ハシナ・ワゼド首相に宛てて、同趣旨の公開書簡を発表した。

 日本の読者の大半には、寝耳に水だろう。いったい、どういうことなのか、何が起きているのかと。
 それを理解するには、まずここから始めなければならない。

※訂正と追記(10月7日):ゴシック表記部分=2006年労働法(Bangladesh Labour Act, 2006)。詳細はあらためて別ブログ「インド映画の平和力」で行ないたいが、当該事件の性質からして、民事訴訟ですむものを、わざわざ刑事訴訟にしている点から、そもそもユヌス教授の弁護士は疑問を呈していること、また、司法ハラスメントというアムネスティの表現に微塵も誇張はなく、この10年余り、非常に多くの裁判が、ユヌス教授を被告または被告人として起こされてきたことを付記しておく。











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?