自由に作ったコード進行が理論的に正しいか不安、という人へ
作曲初心者の方が抱えてしまいがちな「このやり方でいいのか?」という種類の悩みの中でも多いのが、コード進行に関するものです。
こちらでは、そのあたりについて私なりの答えなどを述べてみます。
「これで理論的に正しいか?」という疑問とその真意
勉強会やレッスンなどをやっていると、よく作曲に慣れていない方から以下のような質問を受けます。
ここでいう「合ってますか?」という言葉は、多くの場合「理論的に正しいか?」ということを意味します。
そのうえで、作ったコード進行を実際に見せてもらい私がそれを理論的に解釈してみる、という流れになるのですが、結果としてそれを理論的に解釈できることもあれば、解釈しにくいこともあります。
そんな時の回答は、ほとんどの場合
「合ってます」
「合ってないことはないですがあまり見かけないですね」
のどちらかになります。
理論で解釈できなくても、良ければいい
この質問をするみなさんは、要約すると
という点を不安に思っているのですが、そもそも作曲は自由にやるべきものなので、私は「理論的に正しいのか・正しくないのか」という尺度でそれを語ること自体が意味のないことだと考えています。
理論的に解釈できなくても、聴いてみたうえで良いものであればそれで問題ないです。
そのうえで、ではなぜ質問者の方がそのようなことを不安に思ってしまうのかというと、
という不安がその裏にあるから、なのではないかと予想できます。
「作曲は『きちんとやらなければいけないもの』」という先入観
数ある創作活動の中でも、作曲は「(最初から)きちんと筋道を立てて、考えながら行わなければいけないもの」と捉えられていることが多いと感じます。
その一方で、その他ものづくり系の多くは
「まずはやってみるもの」
「やっていく中で上達させていくもの」
という取り組み方がより許容されているように思えます。
個人的には、すべての創作活動は後者の「まずは自由にやってみるもの」「やっていく中で上達させていくもの」だと思っていますし、また表現方法に正解は無く「良いものは良い」と考えていますが、なぜか作曲は思いのままにやることが許されないという風潮があり、そこから前述したような質問が生まれるのかなと考えています。
「音楽理論」という存在
これを考えるとき、みなさんの中で大きな存在となっているのが「音楽理論」です。
もちろんそれぞれの芸術にも似たような「〇〇論」があるはずですが、「音楽理論」は特に有名で、その「理論」という響きから「守らなければいけないもの」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
■音楽理論は「道しるべ」
音楽理論は、いわば一般的な音楽の構造を後付けで整理してみたものにすぎず、言い換えれば「こうやれば音楽がまとまりやすいですよ」ということを定義したようなものです。
それはルールではなく、いわば「道しるべ」のようなものであるため、道しるべが無くてもいけてしまう人はいるし、自分で道しるべを作りだせる人もいます。
またその道しるべを無視することもできますし、「いってみたら結構良かった」ということも多々あります。
■より作曲をきちんと、円滑に進めたいときに音楽理論が必要
もちろん音楽理論は音楽の構造や作り方を整理したものであるため、それを活用することでより説得力のある曲を作ったり、曲完成までの時間を早くしたり、作品の品質を一定に保つことができます。
いわば作曲を便利にするための道具のようなもので、それは曲を作った後に解釈するためのものではなく、曲を作る前や作っていく中で使うものだといえるでしょう。
既に述べたとおり作曲は本来自由なものですが、
より良い曲をきちんと計画的に作りたい
作曲を少ない労力で継続させたい
作品の品質を常に水準以上に保ちたい
というような希望がある場合には、音楽理論を学び、それを活用することが欠かせないといえます。
思いのままにつなげたコードを理論で解釈するのは難しい
また、そもそも思いのままに作られたコード進行を理論的に解釈することは難しいものです。
適当に作られているだけなので理論で説明できなくて当然といえば当然で、そのような観点からも、思いのままに作ったコード進行を「理論的に正しいか?」と確認することは意味をなさないと私は考えています。
悩み「理論的に正しいのか不安になる」への回答
話をこのページのテーマに戻すと、
という質問には、
思いのままにつなげたコードを理論的に解釈することは難しい
聴いて「良い」と思えればそれでいい
という答えを返すことができます。
まずは「思いのまま」でいい、きちんとやるなら理論を考慮して進める
そのうえで、この質問の裏にある、
という不安には、以下のように答えることができます。
作曲は自由なものだから思いのままにやっていい
既存の曲をお手本にする(分析する)ことで、標準的なやり方が見えてくる
もっと作曲をきちんと円滑にやりたかったら分析の結果や音楽理論を考慮して進めてみる
上記の回答は、作曲を枠にとらわれず自由にやるも良し、音楽理論を踏まえて筋道を立ててやるも良し、ということを言い表しています。
また、そうはいってもやっぱり独りよがりな作品は評価されにくいですし、それを乗り越えるためには何度も曲作りを重ねたり、他人の曲を分析することが必要になります。
そして、自由気ままに作曲をしながら、作曲にすごく時間が掛かったり、どうにも自分の中で納得できなかったり、また行き詰まりによって曲が作れない状態を経験したりしながら、必然的に作曲を学ぶことで自分なりの正解がいずれ見えてくるはずです。
特に作曲の初期は「形の美しさ」や「正解」のようなものにあまり気を取られすぎず、もっと自由にやってみてほしいと個人的に思います。