曲分析の本当の目的は「作曲のネタ探し」にあらず
いろいろなところで述べているように、「曲分析」は作曲上達にとても大きな効果を発揮します。
分析に取り組むことで曲の構造が見えて、よくあるコード進行やメロディの成り立ちがわかったり、一般的な曲の展開が把握できるようになります。
そのうえで、そんなことを目的として分析に取り組んでいると、
「分析で得たデータを自分の作曲に活かさなきゃ…」
「なにか自分の作曲に使える手法はないかな…」
というような観点で分析に向き合うことが多くなり、その作業がだんだんと「ネタ探し」のようなものになっていきがちですが、これはあまり望ましくない状態だといえます。
こちらでその辺りについて少し詳しく書きます。
分析力をつける
分析の最大の目的は、ネタ探しではなく、
という点にあります。
分析力がつくことで、自分が作っている曲のどのあたりが良くて、どのあたりに問題があるかがわかるようになります。
作曲中に自分の曲を「セルフ分析」することで適切な判断ができて、それによって作曲の質を高められます。
言い方をかえると、曲分析に取り組むうえでその「分析力をつける」という意識が抜けていると分析の素晴らしさを100%享受できず、質の低い分析を重ねることになります。
結果として、「曲分析を作曲上達に転換する」という本来の目的達成が中途半端になってしまいます。
大切なのは「吟味」の姿勢
上記を踏まえて、分析の質を高める=分析力をきちんとつけるためには、
を特に意識すべきです。
具体的には、例えば「小さなフレーズが繰り返されている」ということが曲分析を通してわかったとしたら、それを実際に自分でも歌ってみたりして、
「この繰り返しの感じが聴いていて気持ちいいのかな」
「繰り返しながら一部が微妙に変わっていくところで聴きごたえが生まれているのかな」
「これによって楽しげな印象を受ける」
「ここにこの歌詞がつくことで相乗効果的に良い雰囲気が出ている」
などと、そこから感じる作者の意図や印象や雰囲気などを考える行為がその「吟味」にあたります。
吟味があることで分析が単なるデータ集め(=ネタ探し)ではなく「自分ごと」になります。
そして、本当の意味で曲の成り立ちをきちんと紐解くことができるようになっていきます。
好奇心が吟味の姿勢を生む
ここで私は「吟味」という少し面倒で難しそうな言い回しをしていますが、もっと簡単に言えばそれは、つまるところ「好奇心をもって曲を紐解く」ということでもあります。
その曲のことが大好きで、そんな曲を自分も作りたいと思っていれば、その中身に必然的に興味が湧くはずです。
得られたデータを事務的に処理することはなくなり
「これがこんなカッコいい感じを生んでるのか!」
「この作者の◯◯さんはこんな雰囲気を出したかったのかな?」
というようなことが自然と考えられます。
だからこそ、自分が興味を持てる曲を分析の題材に選ぶべきで、それを通して(いわゆる「作業」ではなく)好奇心を原動力として曲分析に取り組めばその質はおのずと濃くなっていきます。
そして、曲の中身に興味があるからそれを能動的に紐解こうと思えて、曲分析を習慣にすることもできます。
これまでにいろいろなひとを見てきた経験からも、やはり「ネタ探し」のような観点を持ち、作業的な感覚で分析に取り組むひとはその効果をそこまで体感できずに、分析への取り組みをフェードアウトしていくことが多いです。
一方で、興味や好奇心先行で分析に取り組むひとはそれによって着実に分析力を身につけて、それを自分の作曲に活かしていきます。
結果として、分析を通して作曲上達を実現できることになるため、「曲分析の効果すごい!」という感想を持つことになります。
確かな分析で「分析力」は確実につく
曲分析の本当の目的が「分析力を高める」という点にあるという前提から、日々の曲分析は「筋トレ」に近いと私は感じています。
根本的に「ネタ集め」という観点を持つと分析をやるほどにそのネタが目に見える形で溜まっていくのでそれが分析をこなした実績にもなりわかりやすいですが、「分析力」は目に見えないため、その実績(=分析力がついてる具合)を感じづらいという難しさがあります。
それでも、筋トレと同じく、でもやることで確実に「筋力」ならぬ「分析力」がついていきます。
それゆえに、やはり分析の曲数よりも質を重視して、一回の分析の中身を濃くすべきです。
そして既に述べた通り、あくまでも作業ではなく、自分が好きな曲に対して、好奇心から接することと、それを通して分析を習慣にしつつ、質の高い分析と、実際の曲作り、それを両輪にして作曲活動を続けていくのがおすすめだといえます。
そんなことを1年ほど続けていると、おのずと作曲が上手になります。
「こんなに良いメロディを自分で生み出せるのか」「こんなに良いコードの流れを自分でも組み立てられるんだ」という風に、自分で自分に驚くことになるはずです。
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