#78 特別じゃなくてもその音楽に価値を感じてもらえます
自分が発信する音楽に価値を感じてもらおうとするとき、多くの人は作る音楽をすごく個性的で奇抜なものにしなければならないと考えがちです。
「他にないたった1つのオンリーワンの魅力」「自分にしかない音楽」みたいな感じで、何かすごく希少性のあるものを作らなければ目立てない、と考えてしまいがちです。
でも私から言えるのは、ものすごくオンリーワンなものや個性的で奇抜なものが作れなかったとしても、それでも十分にその音楽を価値として伝えることができる、ということです。
だからもし現在、これを聴いているあなたが「自分は個性的で奇抜なものが作れないから、音楽活動で周りのライバルと比べて勝負していけない」とか、「オンリーワンの音楽を作ることに難しさを感じて自分の音楽の価値をなかなか生み出せない」というように考えているなら、そのあたりはあまり問題になりません。
個性的で奇抜なものが作れないからといって、音楽活動で成果を上げられないわけではないです。オンリーワンの音楽が作れなくても十分にやっていける、ということを伝えたいです。
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なぜかといえば、それは世の中のいろいろなビジネスがそうなっているからです。
つまり、それを利用する人(=ユーザー、音楽活動で言えば聴き手)の需要がそうなっているからです。つまり、個性的で奇抜なものがそこまで求められていないということです。
個人で音楽活動をして、それを通して自分に共感してくれる人を増やして集客や収益化につなげることが「自分のお店を持ってそのお店を自分で経営する個人商店のような状態」に近いという話は以前からお伝えしていますが、同じような観点で例えば近所の個人商店を見てみると、パン屋さんにはカレーパンがありメロンパンあり、定番の商品が置かれていて、その定番の商品に基本的には需要があります。
もちろんそのパン屋さんにしかない独自のパンもあったりしますが、基本的にお客さんはカレーパンを買っていて、メロンパンを買っていて、クリームパンやあんパンを買っています。
世界に1つだけの超オンリーワンの奇抜な商品じゃなくても、パン屋として充分に経営を続けていける、ということです。
これは他のお店についても同様で、中華料理屋にはラーメンや餃子を求めてお客さんが来るし、ケーキ屋にはショートケーキやチョコレートケーキやモンブランを求めてお客さんが来ます。
お客さんは、その定番の商品が買いたくてお店に来ます。みんながその定番の商品を求めている、ということです。
これは音楽についても同様で、みんなはものすごく奇抜で個性的なものというより、ある程度定番のものを求めています。
音楽でいえば、聴きやすいメロディとか、なんとなく標準的で自然だと感じられるハーモニーとか、リズムも定番のリズムとか、乗りやすくて歌いやすいテンポとか、耳なじみがあるサウンドとか、そういったものを聴き手は求めています。
むしろ、商品のラインナップはそういった定番のもので良くて、気にすべきはその定番の商品をいかに自分らしく磨き上げることができるか、みたいなところです。
先ほどのパン屋さんの例で言えば、カレーパンというありふれた商品ではあるものの、そのカレーパンが美味しくて、そのお店ならではの味になっていることでお客さんは「そのお店のカレーパンが食べたい」という気持ちになります。
例えばそこで、カレーパンはカレーパンだけど、本当に何の引っかかりもない味で、なんとなくパンもパサパサしていて、旨味を感じられないようなものだったら、そのお店のカレーパンを買いたいとは思ってもらえません。
だから、音楽についても商品のラインナップやその分類はよくあるものでいいけど、それが基本的に水準以上の品質を持っているとか、そこにわずかなその人ならではのオリジナリティが含まれているとか、そういったところを聴き手は感じているといえます。
それを踏まえると、やはり水準以上の技術を身につけて、その水準以上の技術を前提として音楽を表現することが必要になるし、作っている音楽の分類やサウンドはある程度標準的なものでもいいけど、例えば歌詞の切り口にちょっとその人ならではの観点が入っているとか、メロディラインの一部にその人ならではの音使いが入っているとか、その人の声が心地よくて聴いていたくなるとか、そういった独自の要素が必要になります。
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また、商品のラインナップはある程度定番のもので問題なくて、そこにきちんと一貫性があり、お店として誠意を持って経営していることでお客さんがまたそのお店に行ってみたいと思えます。
だから一貫性を持って音楽活動をする必要があるし、ひとりのミュージシャンとして誠意を持って活動をして、聴き手のみなさんときちんとコミュニケーションをとって信頼関係を築くことが大事だとわかります。
そのために、一貫性のあるコンセプトやブランドが必要になり、自分の考えやメッセージをきちんと聴き手に伝えることが大事だとわかります。そして、自分の音楽活動の背景となる経験や置かれている環境や境遇などに共感してもらうことが必要だとわかります。
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繰り返しになりますが、「音楽活動で成果を上げるために特別で奇抜なものを作らなければいけない」と考えているなら、そういった、世界のどこにもないオンリーワンなもの、みたいな発想は必要なくて、ある程度標準的でありふれたものでも十分に商品として通用します、ということを伝えたいです。
このあたりの観点は、つまりは「聴き手が求める需要を理解する」ということだといえます。聴き手の需要がその標準的で定番なものにある、ということです。
それをあなたの音楽活動のコンセプトに照らし合わせながら、あなたらしさをそこに盛り込んで、音楽の分類としては定番だけど、先ほどの例でいえば、「このお店のカレーパンがいい」というように、「この人のこの音楽がいい」と思ってもらえるような音楽活動になることを心がけてみてください。