#103 成果はまず低空飛行であるとき急に跳ね上がる
今回は、行動に対する成果の現れ方についてお話ししてみたいと思います。
何らかの成果を目的として行動を起こす時、その成果は行動の量に応じて比例して現れると考えられています。
特に物理的なものであればその側面は強く、例えば自転車をたくさん漕げば、その分だけたくさん前に進みます。これはつまり、「自転車を漕ぐ量」という労力と「進む」という成果が比例している状態だといえます。
多くの人は行動と成果の関係をこの状態で捉えていますが、音楽活動で自分のファンを増やすとか集客できるようになるとか認知を広げるとか、そういった少し物理的なものとは違う種類の取り組みの場合、行動と成果が比例していないケースは多いです。
つまり、行動をたくさん積み重ねたからといってその行動量に比例して成果が現れるわけではない、ということで、それゆえに、実際に行動を起こして成果を出そうとするときは特にその点を初めに理解しておく必要があります。
「行動するほどにそれが成果になって現れる」と考えていると実際はそうではないので、いくら行動してもその行動に見合った成果が出ないことにイライラしてしまったり、焦ってしまったりすることになります。
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実際のところ行動と成果は比例していなくて、そのグラフはイレギュラーな形をしています。
私の個人的な感覚では、特に行動を始めた頃は、行動をいくら積み重ねてもそれが成果となって現れません。
つまり、本来の「比例のグラフ」なら、右肩上がりで右斜め45度方向に向かってグラフの線が伸びていくところ、斜め上ではなくて右横方向に低空で伸びていくようなかたちになります。
行動する量を増やして行動にかける時間を先に進めていっても、成果という意味での縦軸の方向にグラフが伸びていかないような状態で、右側に向かって低空飛行しているような状態のグラフになります。
だから、特に初期の頃はたくさん行動をしてもそれがなかなか成果につながらないので、やってもやっても結果が出ないことにイライラしてしまったり、それによって気持ちが萎えてしまったりして、多くの人は行動をやめてしまいます。
これを具体的に音楽活動で例えるなら、例えばYouTubeの投稿を毎日やってもそこに対して登録者数はそんなに増えないし、投稿する量が多いほど投稿の再生回数が増えるかといえばそんなこともありません。
他のSNSも同じで、例えばXもインスタも、毎日たくさん投稿すればするほどフォロワーが増えたり自分の投稿に対する反応が増えるかといえば、そんなことはありません。
ライブもそうで、毎月ライブをやっていてもお客さんが増えるわけではなく、ライブを頻繁にやってもやってもいつまで経ってもお客さんが来ない、というような状態を活動初期に経験することになります。
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グラフの実際の姿は、特に初期の頃はそうやって行動と成果が比例していなくて行動しても成果が全然出ない状態になっていますが、その時期を乗り越えて行動量がある一定のところまで達すると、今度は逆にその低空飛行とは反対に垂直飛行のように、グラフが上に伸びていくような状態になります。
つまり、ちょっとの行動ですごく成果が出るような状態になります。
具体的には、例えば「比例のグラフ」であれば「10」の行動をすれば「10」の成果が出るというような状態であるところ、行動を始めたばかりの頃は「10」の行動をしても成果は「1」か「2」程度しか出ないところ、ある時期を境目にして行動が急に成果に結びつくと、今度は「10」の行動をすると、成果が「30」とか「40」出るような、そういう局面に入っていくことになります。
これを英語で「ティッピングポイント」といったりします。転換期、というような意味で、小さな行動の積み重ねによって、ある瞬間から一気に大きな成果が表れるような状態として、バケツに水をポタポタ落としていってあるとき急にあふれ出す、というように例えられたりします。
先ほどの例でいえば、YouTubeの動画を毎日アップすればするほどにチャンネル登録者数がどんどん増えていくとか、SNSも毎日投稿していくほどにフォロワーがどんどん増えていくとか、それまでの自分の行動と成果の関係が嘘だったかのように、少しの行動でもすごくいい反応がもらえるようになったりします。
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とにかく、「行動」と「成果」の関係は比例の形になっていなくて、そういった「イレギュラーな形」になっている、という点をまず理解すべきです。
そして今言ったように、特に初期は成果がなかなか出ません。
行動に取り掛かるうえで、「行動と成果の関係がイレギュラーなグラフのような状態になっている」という点をまず事前に理解できていれば、初期に行動量に見合った成果が出ないからといって動くのをやめてしまうことが防げるし、成果がなかなか出なくても「行動を重ねていればいつか成果が爆発的に出る局面を迎えるだろう」とその未来を想定して、その時を期待しながら行動を積み重ねることができるようになります。
これは、例えば楽器の練習とか英語の学習とか、そういった何らかの技能を習得するような局面でも同じことがいえます。ここで述べているような形をしたグラフの図を、英語の先生などがシェアしているのを見かけることがあります。
なぜこういったことが起こるかといえば、おそらくそれは初期の頃ほど行動のコツがつかめていなくて、行動を正しく成果に結びつけることができていない、そして行動に慣れてくるほどに行動のコツがつかめて、それをより効果的に成果に結びつけることができるようになるからだと私は思っています。
あと、特に音楽活動においていえば、自分の認知が広がり、自分に共感してくれる人が増えていくほどにその基盤が出来上がっていくので、自分の行動に対してより共感を得やすくなるから、ともいえます。また、それによって影響力がつくので、それがそのまま自分のコンテンツの拡散力とか伝達力(=届く力)のようなものになって、より反応とか成果を得やすくなるのだと感じています。
実際のところ、その「成果がなかなか出ない時期」を経て少しだけ成果が出始めるような時期を迎えますが、その時を見逃さないようにすることがその後のグラフの伸びをスムーズにする意味で大事だといえるかもしれません。
それまではなかなか変化が起きないものの、ある時何らかの行動とか発信とかをきっかけに、それまでになかったような手応えが感じられる時を迎えます。
そこがある意味グラフを急激に上向きに上げていけるかどうかの分かれ目ともいえる部分で、その手応えに自分なりに気づくということ、そしてそれをもとにきちんと行動を微調整してそちら側に向けていけるかどうかが大事だといえます。
その点について、実際にどう行動を起こすべきかといえば、その状況は人それぞれで違うし、実際にその局面を迎えてみないと何とも言えない部分があるため、詳しい点については言い表すことが難しいです。
だからこそ、当の本人としてその局面を迎えたらきちんとそれを分析して、自分なりにきちんと考えて行動することが大切です。
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特に、慣れていない頃ほど行動に対して成果がそのままダイレクトに現れると考えがちですが、繰り返しになりますが、行動と成果の関係は比例のグラフになっていなくて、イレギュラーな形になっています。
特に行動を始めたばかりの頃はなかなか成果が出なくて、グラフとして低空飛行を続けることになりますが、まずそのあたりについて事前に理解をしておくべきです。
そして、行動が積み重なってコツがつかめると、あるとき急にすごくたくさん成果が出始めるようになります。
その未来を期待して、地道に行動を積み重ねてみてほしいです。