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#179 成果に向けて正しくポジションを取る
※当記事はこちらのポッドキャストの内容を編集/再構成したものです
今回は、またちょっとマーケティングっぽい話をしてみます。
ミュージシャンとして個性を出すために「どんなアーティスト性/音楽性を選ぶか」という点を考えることは多いはずです。
それも含めて、自分がどんな音楽を作るべきか、さらにいえば何をやれば目立てるかとかを考えて、多くの人はどこで戦えば勝てるかとか、どう攻めれば良いかとか、そういうことを考えます。
これは、いわゆるマーケティングでいうところの「セグメンテーション」とか「ポジショニング」とかの考えに近いです。
「セグメンテーション」は、具体的にはユーザーがどういった属性を持っているかとか指向を持っているかとか、そこにどういったニーズがあるかということを明らかにして、市場を何らかの要素によって区分けするような行為を指します。
セグメントは「区分」とか「部分」とかそういう意味です。
音楽活動でいえば、どんな音楽ジャンルがあるかとか、そこにどんな聴き手がいて、彼らがどんなライフスタイルを送っているかとか、そういったところがセグメントになってきそうです。
よりビジネス的で一般的な観点でいえば、セグメンテーションには年代とか性別とか地域とか、ユーザーの所得とかライフスタイルとかそういったものが活用されます。
「ポジショニング」は、そのセグメントを元にして実際にどんな位置づけでビジネスを展開するか、ということを意味するマーケティング用語です。
ポジショニングは、つまりは「どんなポジションを取るか」です。
音楽活動でいえば、セグメントとして音楽ジャンルがあり、聴き手の年代があり、聴き手の音楽の趣味があったり音楽の楽しみ方があったりして、そのセグメントをもとにして、ミュージシャンとしてどんな音楽を作るかとか、どんなアーティスト性でどんな音楽性を武器にしてどう音楽活動を展開していくか、その数あるセグメントの中でどんな位置づけに自分を置くかというところがポジショニングに相当します。
ある程度固まった音楽性で音楽を作り、それを等身大の自分としてリリースしていけばつまりはそれが自分のポジションになるし、その自分のポジションに相当するセグメントの聴き手に共感してもらえます。
音楽活動においてそこまで厳格にセグメンテーションとかポジショニングについて考え込む必要はないですが、自分自身の活動のコンセプトやブランドと共に、その延長としてセグメントやポジションのところにも意識を向けておけるとより望ましいといえます。
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その上で、このセグメンテーションやポジショニングを考慮する上では、冒頭で言ったように個性を出すとか、何をやれば目立てるかとか、そちらの方に意識を向けすぎることで逆に成果が出づらい方向に入り込んでしまうことも多いので注意が必要です。
変に狙いすぎて、個性を出しすぎて誰にも求められていないものをやったり、ニッチが行き過ぎてあまりにニッチすぎてそもそもその分野に興味がある人が誰もいないとか、そうなるとなかなか切ないです。
ビジネスでこの手の話をするときに、関連した概念としてよく「レッドオーシャン」とか「ブルーオーシャン」というような表現が使われます。
「競合がたくさんいるレッドオーシャンに突っ込むと、他の多くのライバルの中で目立てない、競合が多いとお客さんを取り合うことになる。だから、競合が少ないブルーオーシャンを目指しましょう」とか、「ライバルがいない広々とした海で、のびのびとビジネスを展開して、より楽に成果をあげましょう」みたいな文脈でこの表現が使われます。あるいは、「レッドオーシャンに挑戦するならセグメンテーションをより細かく行って、レッドオーシャンの中でも特定のターゲットに焦点を絞りましょう」みたいに言われたりします。
「個性を出す」という発想は「ニッチを狙う」というところにつながりやすく、それがこの例でいうところの「ブルーオーシャン」に紐づけられやすいです。あるいはセグメントの中でも限られた人に向けてやる、というところに向かいやすいです。
「こっちの方向にいけば、目立てるんじゃないか」とか、「やっている人が少ないから勝てるんじゃないか」とか考えてそういったアーティスト性や音楽性を作り込んだりしますが、そのポジションを取っている人がいないのにはそれなりの理由があったりします。
つまりは本当の意味でのブルーオーシャンになっているのではなく、そこにニーズがないことで、結果としてブルーオーシャンになっているケースがある、ということです。
音楽活動でいうなら、個性を狙いすぎてポジショニングを考えすぎてちょっと奇抜なことをやったりするけど、それがあまりに奇抜すぎて聴き手に全然理解されないとか。ニッチなところを狙いすぎて、そもそも聴いてくれる人の母数が少ない、というところに入り込んでいくと成果を上げるのはその分難しくなっていきます。
だから、ポジショニングを考える上でブルーオーシャンを狙うならその点に注意が必要です。
また、レッドオーシャン、つまりは競合が多いジャンルでセグメンテーションをきちんと行って自分らしいポジションを確立する場合にも、このセグメントと自分の音楽性がかみ合っていなくて成果を出すのに苦労するようなケースもあります。
そう考えると、ある程度の競合がいる=つまりはそこに聴き手の需要があるとわかる音楽性を選びつつ、そこに自分らしい新たな要素を加えてそれを自分のポジションにするというやり方がより現実的だといえそうです。
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このあたりは、実際に活動をしてみて聴き手からの反応を見たり、ミュージシャンとしての手応えなどをもとに自分の肌感覚で判別していくのが一番間違いがないので、やっぱりただ頭の中で考えているだけではなく、セグメンテーションとポジショニング、レッドオーシャン・ブルーオーシャン、みたいなところをある程度考えたらあとは実際に活動をしてみて、微調整していくのがおすすめです。
実際に自分なりに曲を作ってみて、それがどんな聴き手の層に響くかとか、自分がやれそうなポジションはどのあたりにあるかとか、聴き手の需要の中でも特にこういった需要が多いとか、こっちのほうの需要はそんなにない、とか、需要は少ないけどゼロじゃないからそのポジションなら取れるかなとか、そういったことが実際の活動を通して見えてきます。
やっぱり最終的には自分に何ができるかというところがその判断のポイントにはなってくるし、より厳密にいえば自分自身の強みと聴き手のニーズ、さらにはそれを踏まえたポジショニングあたりを考慮して、それを自分のアーティスト性とか音楽性とか音楽活動の方向性に置き換えていくことがポイントになりそうです。
繰り返しになりますが、「個性」とか「どうやれば目立てるか」とかそういったことを考えるのは大事ですが、セグメントとかポジションをあまりに意識しすぎて、そもそもニーズがないところに突っ込んで行ったり、自分にはやることが難しいようなところに入り込んで行ってやりづらさを感じてしまうと成果からは遠のいてしまいます。
特にその点に注意をしつつ、最適なアーティスト性・音楽性を探りながら音楽活動に向き合ってみてください。
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