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空に舞う鍵🗝️

娘のコンサートに行く途中のこと

公園の脇道を歩いていたら、向こうからすごい勢いで走ってくる男性が見えた。ちょっと下り坂になってるので勢いも増して…いや、しかし必死の形相でバタバタとこちらの方に向かってくる。
首からネームプレートのようなものをぶら下げていて、それが左右前後に激しく揺れていた。
激しすぎて、ちぎれてキラキラ光りながら何かが飛び散り、カチャーンと音がした。
その人は急に方向を変えて公園に入って行った。
その方向の先にはトイレがある。
私は飛び散ったものが気になって落ちた所辺りを目を凝らして見た。
と同時にバタン、カチャッと、トイレのドアが閉まる音がした。

側溝に溜まった落ち葉の上に、鍵がちんまり横たわっていた。

鍵だったのか!
こりゃ大変だ!

すぐに拾って、トイレの前まで届けに?行った。
けど、ご用の真っ最中だろうから声はかけられない。
とりあえず、目立つところにそっと置いて脇道に戻った。
一歩、公園を出たところにまた鍵が落ちていた。
え〜何本飛び散ったんだろ…
と思いながらその鍵を拾って、またトイレに戻った。

そろそろ落ち着いた頃かな、と勝手に決めて声をかけた。

「あの〜鍵、落としてません?」
「はい!落としました!」
「2本ですか?」
「はい!2本です!」
「洗面台の脇に2本置いときますからね」
「はい!すみません!ありがとうございます!」

もちろん、相手は精一杯の受け答え。
字にするのは難しい。


電車の時間が迫っていたので、私は小走りに公園を出た。

お腹大丈夫だったかなぁ。
鍵なんかどうでも良いくらい緊急事態だったんだろうな。
間に合ったかな。

人様のことなのに、色々心配しながら先を急いだのでした。


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