【エッセイ】壁に鱗
名刺に"アーティスト"とでも書き加えるか?
誰がだ、誰がアーティストだ。
また自慢じゃないが私は産まれてこの方、名刺を持ったことはない。
あ、あと、絵画、彫刻その他の芸術に関しては"鑑賞するのは割と好き"というレベルであって当然ながら、画材とか道具とかそう言ったものに関してはほぼ無知、種類も使い方も全く知らないと言って差し支えない程度の私は、言うなればアート音痴であることをここに宣言しておく。
剥がれ
あまりにも文章のスイッチが入らないので項垂れ、自室の壁を見つめていたらほんのりと壁紙の剥がれを発見した。
こういう剥がれを発見すると、指先爪の付け根あたりのササクレと同様になんとも気になって仕方がないめんどくさい性分の私は、剥がれかかった部分をちょこっとカットして気にならないレベルに抑えようかという余計なことを考えてしまってちまちまやっていたらだんだんと傷が拡がってしまい、めんどくさくなってついには、その一角の壁紙を全部剥がしてしまった。
爪の付け根のササクレを取り除こうとして、指1本分の皮を剥いでしまったのと同様の愚行である。
でも剥がしちゃったからしょうがない。
ここは百均でリノベシートでも買って適当に貼っとくかとも思ったのだけどその時、ちょっと前にAmazonで見つけた「モデリングペースト」ってやつを興味本位で購入してあったことを思い出した。
なんかアクリル塗料のむにゃむにゃ、造形がむにゃむにゃ、水性で固まると耐水むにゃむにゃという風に細かいところはむにゃむにゃで省いて記憶しているので良くわからないが、形を造るのには便利な絵の具みたいなものであろうと思っている。
もう一度いうけど、私は素人かつアート音痴なのでなんか色々間違った事を言っているかもしれないけれども、そんなこたぁどうでもいい。
思いつき
で、私のプランとして、このモデリングペーストを壁紙が剥がれてみっともなくなった自室の壁に塗ったくって、なんとなく抽象かつ立体的な文様を持った壁として再生したらなんかかっこよくね?というものであり、ちょっと考えてみれば「そんなあなた、そりゃ素人がやることじゃありませんよ」というような工作なのだけど私は考える前にペーストの蓋を開けて、バターナイフみたいな道具を突っ込んでしまった。
もうやるしかないじゃないの。
で、やりました。
これぞスカム
なんつーのかね。
画を描く人に憧れてエイヤーで描き始めたら似ても似つかない、真似にすらならないような異形のものが生まれてオロオロしつつしかし、もうすでにやらかしてしまった後であり"後悔先に立たず”という言葉を胸に刻みつけているスカム野郎。
良く言えば木の皮の如き野趣あふれる文様。
悪く言えば巨大魚の鱗を思わせる生臭文様。
↑
こういう風にふたつの文章を対比させる時に、字数がぴったり合うとものすごく嬉しくなるというのも実にめんどくさい性分だと自分で思うのだけど、それはさておき。
思ったほど悪くないんじゃね?
休日にこういう事してるって俺、アーティストっぽくね?
スカムは立ち直りも早いし自分の都合の良いように情報を捻じ曲げる癖があり、だから同じようなことを何度も繰り返すのだ。
わかってんのか。
でもなんか、この文様の上からピャピャッとなんか描いたらそれっぽくね?壁画っぽくね?いや問題はそのピャピャッと描くということ自体ができないということで、それを強行するとこんだ、失敗した時にペーストごと壁を破壊することになりかねないんじゃないの?という自問自答を繰り返している。
この自問自答というのがまたアーティストっぽくね?という考えが浮かんでは消え、思考が堂々巡りを始めてしまってオーバーヒート気味である。
ということで記事冒頭の自惚れたアーティスト名刺の話についての思考が始まったということではあるけれども当然、そんな名刺は作らない。
壁の方はというと予定していたスペースの半分くらいまで薄っすらと塗ったあたりでペーストが無くなってしまい今、白目を剥いて呆然としている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?