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【官能小説】二愚 #2


前回

旋毛サイケデリック回廊

 恋人の旋毛を眺めている。既視感を伴って。
 一切の不順な行為を行っていない清い交際を続けている高校生の俺と恋人は、下校前に公立図書館に寄って共に試験勉強をしている。
 実際のところ勉強をしているのは恋人の方だけで、進学する気のサラサラない俺は先程からこのように彼女の旋毛を眺め続けている。

 形の良い旋毛だと思う。

 ふと顔を上げた恋人の目はくりくりと大きいのだがタレ目なので鋭さは微塵もなく、全体としてキレイな顔立ちの中でそのタレた目だけが変に目立っていてアンバランスでどこか眠た気に見える。
 俺はこのアンバランスな顔が可愛いと思う。
 参考書をきちんと並べて机上に置きその横にノートを広げていながら、まったくそれを開かずただ陳列しているだけの俺を不思議そうに見上げて首を傾げ「ん?」と小さく囁く。
 俺が無言でぼんやりしているとまたノートに視線を落としてカリカリとペンを走らせ始めた。
 なんとなくタレ目のリスか何かそういう小動物を眺めているような感覚から意識はまた旋毛に戻る。

 彼女とセックスできるのかどうか?と問われれば「是」と答えるが、まさに今その肉体をガツガツと貪りたいのか?と問われれば「否」と答える。

 参考書を読みながらノートにペンを走らせて小刻みに動き続ける恋人の旋毛。
 中央に向かって俺の意識を引きずり込むような螺旋。
 じっと見つめているとやや酔った感覚を覚えやがて、小さな目眩は次第に大きな震えとなって俺の脳を揺さぶり始めた。
 目が回って。
 記憶の螺旋に引き込まれる。

 目が回る。
 螺旋だ。
 吐き気がする。
 脱力している。
 疲れている。
 力が入らない。
 きれいな旋毛だ。
 きれいな旋毛を眺めながら、思い出している。

 何歳だったか正確な年齢は分からないが小学生の頃。

 あの日俺は鏡台の前に腰掛け髪を梳かす叔母の後ろ姿を、ぼんやりと眺めていた。
 叔母は黒く長くきれいな髪をブラシで、随分丁寧に時間をかけて梳かし続けていた。
 ブラシが通る度に叔母の背中で豊かに揺れる黒髪から目を離せずにいた俺がごく僅かに視線を動かすと、鏡の中の叔母と目が合った。
 俺は変わらずただぼんやりと見つめ、叔母は無表情だがしかし視線を外さずに見つめ返した。
 それ以来俺は叔母の視線を気にするようになり、鏡から除く彼女の目を思い出してオナニーに耽るようになった。
毎日、そう毎日何度も。

(つづく?知らん)

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