見出し画像

【詩】#2 接吻(1)

キスは最初だけ
その1回きりだ

俺は決めていた

キスは最初のその1回きりだと

迷い込むようにキミがその場所にあらわれて

俺は知らぬふりでみつめていた
キミにはまるで似合わない 薄暗い くすぐるような 甘い匂いの
漂う
その
場所

なぜキミは足を踏み入れた 踏み入れてしまった
おどおどと戸惑うように キミの望むモノはそこにない
それはすぐにわかったはずなのに
キミは機会を失った
出ていく機会を失って 視線も定めることができぬまま
彷徨っていただけ

堅い表情で俺の前に立ち 引き攣った微かな笑みを貼り付けて

面白い 音は?

俺はその瞬間に決めたんだ
キスは最初のその1回きりだと

はじめて目が合った1.月
引き攣った笑顔はただ白く 少しばかり痙攣した
くちびる

寒さに震えて
痙攣して痙攣して
それでもやっと

面白い 音は?

俺は手の中のレコード盤から視線を上げ
あたかも 今まさに キミに気付いたような顔をして
あえて真正面から視線をあわせ そして
タバコに火を点けた

いいなと思ったら応援しよう!