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小説「岸辺内閣総理大臣の憂鬱/バトルロートル・ビギニング」

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以前、webで公開していた作品をブラッシュアップしました。 ナンセンス小説、不条理小説です。 やや残酷、やや性的な描写が含まれます。
全5話の小説をマガジンに纏めました。
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記事一覧

岸辺内閣総理大臣の憂鬱/バトルロートル・ビギニング①

内閣総理大臣 岸辺不死朗の浅薄な思考 めでたい。  おめでたい。  おめでとう。  めでてぇ。  んー、なんとなくどう読んでもこう、ちょっとコケにしてる感というか、見下してる感みたいなのを感じてしまうのは私だけか?  漢字で書くと「御目出度う」ということになるということが、便所で気張りながらネットで調べたらすぐわかったのだけど、もうこの字面からしていかにも当て字であって、個人的な意見としては言葉を漢字で表記する場合に「目」という字が使われると一気に冷める凍える。いや、そもそも

岸辺内閣総理大臣の憂鬱/バトルロートル・ビギニング②

岸辺内閣総理大臣の悪だくみ試算   こんなことは法律をちょちょっと改変すれば可能なんじゃないの?  例えば80歳になったら1万円の祝い金を国から進呈するのでそれで豪遊してもらって81歳で死刑という案。もちろん法案が成立した段階で81歳を超えている者は即死刑。でもこれ悩ましいんだよね、医療の進歩的な問題もあって81歳で皆殺しということになると「なんだそんなら長生きさせるための研究なんかいらねぇじゃん、やーめた」みたいなことを言い出す奴が必ずいて、そういうやつらがテレビに出て煽り

岸辺内閣総理大臣の憂鬱/バトルロートル・ビギニング③

岸辺の困惑  とは言いながらもいかに敏腕の美人秘書でも議員の少なくとも半数を丸め込むのには相当な時間もかかるだろうし、とりあえず半年を目途にこの強老人駆逐作戦の細部を詰めようと考えた。そして実際、四六時中考え続けていた。そうすると不思議なもので脳内で再現されるイメージが強烈なリアリティを持つようになって、バラバラにされ打ち捨てられた老人の残骸をイメージするだけで耐え切れないほどの死臭を感じるようになった。これはストレスが溜まる。ストレスが溜まると精液も溜まる。私は精液の溜まり

岸辺内閣総理大臣の憂鬱/バトルロートル・ビギニング④

岸辺の卑怯と哀れな官房長官「バトルロートル!」  私は一張羅の華やかなフランス製スーツを身に纏い、美人秘書が書き上げたシナリオの1行目ををできるだけ激情的にエモーショナルにわざとらしく絶叫した。シナリオにそういうト書きがあったから。  そして自分の背面にあるホワイトボードに自らカタカナで書いた”バトルロートル”という文字に向けて掌をバン!と叩きつけたらホワイトボードが勢いよく回転してしまったので慌ててそれを止め、ちゃんと文字が見えるように固定したのだけれど、そもそもマジックイ

岸辺内閣総理大臣の憂鬱/バトルロートル・ビギニング⑤

フランスにて ボンジュール、ボンソワール、メルシィボクゥ。  岸辺です。  そんなわけで私は今フランスにおります。  結果から言いましょう。  失脚しました。  私は失脚いたしました。