UXリサーチで気をつけたい7つの認知バイアス | UI/UX Journal Vol.18
2ヶ月ほど前から、Google UX Design CertificateというGoogleが提供しているUXデザインのオンラインコースを受講しています(コースについては以下のnoteにまとめています)。
2ヶ月ほど続けてみて、学ぶことがとても多いのですが、その中でもとくに「Identify types of bias in UX research(UXリサーチにおけるバイアスを認識する)」というトピックが気になったので、復習を兼ねて&少し深ぼってまとめてみたいと思います。
「認知バイアス」とは?
自分の思い込みや周囲の環境、他人からの影響によって、論理的な思考が妨げられ、不合理な判断や選択をしてしまうことを「認知バイアス」と言います。
数多くの認知バイアスが存在していて、以下のインフォグラフィックでは188種類が紹介されています(!)
画像:Every Single Cognitive Bias in One Infographic
なぜUXリサーチにおいて重要なのか?
Google UX Design Certificateで「なぜUXリサーチにおいて、バイアスについて学ぶ必要があるのか?」について触れられている部分を自分なりに解釈してまとめてみます。
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人間の脳は、たくさんの情報を記憶することができます。その理由の一つは、「繰り返し行われるパターンに基づき、情報を関連付けてグループ化する、といったようなショートカットを作ることができる」点にあります。
しかし、この処理能力がマイナスに働いてしまう場合もあります。それが、この記事で触れている「認知バイアス」です。
「〇〇は××なことが多い」「△△の人は□□だ」などの思考パターンの偏りは、時に誤った・合理的でない結論を導くことになります。さらにそれらが、無意識な場合も多いのがやっかいな点です。
「O型の人は大雑把」「アジア人は数学が得意」「女性はピンクが好き」などはわかりやすいバイアスの例です。
それらの認知バイアスは、ユーザーやプロダクトを深く理解するためのUXリサーチの障害になり、最終的にはプロダクトにも悪影響を与えてしまう可能性があるのです。
人間である以上、誰もがバイアスを持っていることは当たり前です。ただ、UXリサーチを行う前に、
・UXリサーチに関係する認知バイアスの種類
・どのようにバイアスを避ける手段
・バイアスがかかったリサーチになっていないか確認する方法
を知っておくことは非常に大事なことだと思いました。
いくつか記事を横断して、特に重要だと思った7つのバイアスと、実際のUXリサーチにおける例、そしてどのようにそのバイアスを避けることができるのか、についてまとめてみました。
🙈 確証バイアス(Confirmation Bias)
🧐 これは何?
人は物事を有利に進めるために、都合の良い情報ばかりを集める傾向がある
📝 例えば...
開発者のお気に入りの機能があり、インタビュー参加者の多くがその機能を「使った」と回答した。
しかし、実はユーザーはその機能に不満があったり、ユーザーは他に方法がないから仕方なく使った、のかもしれない。
自分の仮説を信じ込みすぎてしまうがあまり、その仮説を実証するために有利になる情報しか目に入りづらくなってしまう。
💡 どうやって避ける?
✔ より詳細を聞き出すために、"YES" or "NO" で答えられる質問をしない
✔ 回答に対して、自分の見解をその場で述べない。質問者の反応を見て、回答者が本当の意見を言いづらくなったり、無意識に質問者を喜ばせようとする回答をしてしまう場合があるため。
💭 暗黙のバイアス(Implicit Bias)
🧐 これは何?
人は、特定の性別、人種、年齢のグループに対して、経験や環境によって形作られたステレオタイプをもっている
📝 例えば...
子育てに関するプロダクトをつくっている際に、ユーザーインタビューの対象を女性のみに絞ってしまう。
特定のユーザーのみに向けたリサーチを行うことは、偏った結果を招くだけでなく、インタビューを受ける側が「子育ては女性がやることだ」と言われている気持ちになる可能性がある。
💡 どうやって避ける?
✔ 異なるアイデンティティをもった参加者を集め、インタビューを行う
✔ 自分が特定のグループや、物事にどんな偏見を持っているかを知る
Google UX Design Certificateでは、ハーバード大学が提供するProject Implicit®というツールを紹介していました。
このツールでは、自分が特定の人種や宗教などに対して、どの程度偏見を持っているかを知ることができます。
(10年ほど前に作られたツールらしく、諸々アップデートが必要では...?と思う部分もあるのですが、気になる方はぜひ。)
🗣フレーミング効果(Framing Effects)
🧐 これは何?
物事の切り取り方によって、印象が大きく変化してしまう可能性がある。絵画の額縁(フレーム)で、どこを切り取るかによって見えているものが変わることに由来している。
📝 例えば...
「この機能の悪かったところはなんですか?」といった質問によって、回答者がその機能のネガティブな部分にのみフォーカスしてしまう。
その質問が「悪かったところを言わなくてはいけない」といった意識にさせてしまい、他の質問においても偏りのある回答に導いてしまう可能性がある。
💡 どうやって避ける?
✔️ 「この機能を最後に使ったときのことを教えて下さい」「この機能を使ってどう感じましたか?」など、中立的な質問に変えることで、より偏りの少ない結果を得られる。
🕑 新近性バイアス(Recency Bias)
🧐 これは何?
人は、いちばん最後に聞いた情報を正しいと思い込む傾向がある
📝 例えば...
3人にインタビューして、最初の2人は「Aが良い」、最後の1人は「Bが良い」と述べた。
最後の1人の回答がもっとも鮮明に残っているので、あたかも「Bが良い」という意見を正しい情報だと思いこんでしまう。
💡 どうやって避ける?
✔️ 複数人にインタビューを行い、すべてのインタビューを正しく記録する
✔️ すべてのインタビューにおいて同じ質問をする
これとは逆の、「プライマシーバイアス(Primacy Bias)」もあります。「一番最初に聞いたことを正しいと思い込む」といった傾向によって生まれるバイアスです。
どちらのバイアスも、すべてのインタビューの内容を同等に扱うことが必要です。インタビュー間の時間を十分に設けたりすることも、このバイアスを避けるTipsとしてあげられています。
🗂 クラスタリングバイアス(Clustering Bias)
🧐 これは何?
実際は何もないのに、ランダムな中に規則性を見つけようとする傾向がある
📝 例えば...
インタビューの参加者全員がたまたま特定のSNSを使っているというデータがあった。「これに何かヒントがあるに違いない!」と、そのデータに基づいたソリューションを無理やり導き出そうとしてしまう。
💡 どうやって避ける?
✔️ サンプル数が少ないと、ランダムなパターンも共通点に見えてしまいやすいので、より大きなサンプルサイズに基づくデータ主導の洞察を行う
✔️ 全く異なるユーザーグループでリサーチを行う
😎 社会的望ましさのバイアス(Social-desirability Bias)
🧐 これは何?
人は、自分を良く見せるような話し方をする傾向がある
📝 例えば...
デリバリーサービスのインタビューで、「週に何日ぐらい自炊をサボりたいですか?」のような質問があったとする。「サボった」という表現は一般的にネガティブな意味なので、その質問に正直に答えることを避ける可能性がある。
💡 どうやって避ける?
✔️ 質問自体に、ユーザーに負い目を感じさせる表現を含まない
✔️ 回答者自身ではなく、家族や友だちのためにそのサービスが使う場合...といったような質問の仕方にしてみる
✔️ 質問によっては、匿名データを収集できるようにする
🚢 サンクコストの誤り(Sunk Cost Fallacy)
🧐 これは何?
行動の結果として負う損失や負債といった取り戻せない費用を、無駄にしたくないという心理が働くこと
📝 例えば...
かなりの時間を費やした機能が、開発途中になんらかの理由で不要だとわかったが、「時間もコストもリソースもかけて、ここまでやったのだから」と、方向転換できずにそのまま進めてしまう。
💡 どうやって避ける?
✔️ プロセスを小さなステップに分ける
✔️ 各ステップにおいて、続行の可否を判断するポイントを決める
UXリサーチにおいて気をつけること
UXリサーチにおいて、知っておくべき7つのバイアスを紹介しました。
これら以外にも、UXリサーチの障害となる認知バイアスはたくさん存在するので、気になる方は参考記事を参照してみてください。
どうやって避ける?の部分には、それぞれの認知バイアスにおいて気をつける点を書いておきましたが、共通する部分もたくさんあるので、ユーザーインタビューのタイムラインにおいて気をつけるべきことを簡単にまとめました。
📝 準備
✔ まず、誰しもがバイアスを持っていることを把握する
✔ サンプルサイズが十分であることを確認する
✔ できるだけ多くのアイデンティティをもったユーザーを集める
💬 インタビュー中
✔ 回答を導き出すような表現は避け、中立な質問をする
✔ 回答者の発言だけでなく、声のトーンや身振り手振りにも注目する
✔ 自分自身の発言や、必要以上なリアクションに気をつける
📊 インタビュー後
✔ 1人だけではなく、できるだけ多くの観点から分析をする
✔ すべての回答を同等に扱い、感情移入しすぎず冷静に分析をする
すべての会社にUXリサーチャーがいるわけではないので、できるだけ多くのプロジェクトメンバーがこれらの認知バイアスについて理解を深めることが大事だと感じました。
UXリサーチについて、まだ学び初めのことが多く、このnoteもUXリサーチにおいて知るべきことのほんの一部だと思いますが、
プロダクトをつくる中で、ユーザーや、ユーザーとプロダクトの関係を知るプロセスは必要不可欠なので、これからも引き続き学び続けたいと思っています。
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