ダークパターンが及ぼす 企業へのデメリットを考える | UI/UX Weekly vol.11
前回のnoteでは、ユーザーが意図しない選択肢に故意に誘導するユーザーインターフェースのデザイン、通称「ダークパターン」についての例を紹介してみました。
ユーザーが認識していなかった情報まで公開されてしまったり、
会計をする最後のプロセスまで手数料などのコストを明示しない等、
どのパターンも「コンバージョン率を上げ、短期的なビジネスゴールを達成する」目的で、これらのようなデザインが未だに世の中に存在するのが現状と言えます。
もちろん、目的自体は完全に悪とは言い切れないものの、その達成するために結果的にダークパターンを許容してしまうことで、
実は結果的にビジネスにとってデメリットになるケースも多いのです。
ダークパターンが企業に及ぼすデメリット
「悲劇的なデザイン」では、ダークパターンを採用した際に起こりがちな5つの例ケースが挙げられています。
1. 売れるプロダクトにも関わらず、売れる(利益をもたらす)機会が失われる。
2. 騙されたユーザーは返品を求める可能性が高く、返品の配送料や払い戻しの費用がかかる。
3. ユーザーから電話がかかってくる可能性が高まり、カスタマーサポートへの電話が増えることになり、結果的に多くのリソースを割く必要が生じる。
4. ユーザーがSNSで不満を言う可能性が生じ、数字では測れないブランドの評価が下がる。
5. だまされたユーザーは常連にならず、クチコミされることもないため、新規顧客の獲得に要する労力が増す。
大きく分けると、「長期的に見てメリットにならない、逆に悪影響になること」「人々の信頼を失うこと」の2つに分類されます。
例えば、ダークパターンを用いてある商品を購入させたとしても、それに気付き怒ったユーザーは
・お客様窓口に問い合わせ(ヘルプデスクにかかるコスト)、
・返金を求め(商品代金と配送料)、
・SNSで悪いクチコミを拡散し(潜在顧客減)、
・それでも不満なユーザーは訴訟を起こす(多額の賠償金)...
と言った最悪のシナリオも考えられます。
実際に、ユーザーの意図に反して友人にスパムメールを送りつけてしまうケースが多発したLinkedInは集団訴訟を起こされ、1300万ドル(当時約15億円)の支払いを命じられた事例もあります。
ダークパターンによって企業は人々の信頼を失う
特に、「人々の信頼を失うこと」はビジネスとして長期的に大きな損失になります。
例えば「ダークパターン」とGoogleで検索すると
「ダークパターン amazon」が検索候補に出てくるほどamazonという企業は一部の人々にとって信頼を失っていることがわかります。
ここでは、サービスの「ユーザー」だけはなく、サービスを使っていない第三者からの信頼も失っている可能性がある、ということが重要です。
SNSでもユーザーの怒りの声は毎日のように目にしますし、 #DarkPattern のハッシュタグでは世の中に溢れるダークパターンが投稿されています。
前回の記事で紹介した、ダークパターンに警鐘を鳴らすDarkPatterns.orgでは、
Twitterやその他SNSでサービスのダークパターンを拡散することで、
未だに広がり続ける世の中のダークパターンを抑制し、企業に圧力をかけることに繋がる、と言います。
真逆の姿勢を見せた事例:Netflix
世の中にサブスクモデルが増え、サービスの中で前述したようなダークパターンが使われているケースも少なくありません。
そんな中で、少し前にこんな記事が話題になりました:
入会後1年以上使っていないか、2年間使っていないユーザーが対象。メールとアプリ内で通知する。反応がなければサブスクリプションを自動的にキャンセルする。
休眠アカウントや解約し忘れがちなオプションで課金させ続けて固定収入を得る...と言うサービスも少なくない中、
サービスが考える本来の収益の上げ方を示したこの判断は大きな反響を呼び、賞賛の声を集め、結果として企業のイメージアップにも繋がっていたように思います。
「休止状態のアカウント数は、メンバー全体の0.5%に満たないわずか数十万人」という非常に少ない休眠アカウント数も驚きですが、
もちろん類似サービスが全く同じやり方を採用してもうまくいくとは限りません。
しかし、このようなサービスの方針を示すことで、実際に休眠アカウントを保持していたユーザーはもちろん、さらには、課金され続けるサブスクサービスの構造自体に不安を感じている潜在ユーザーにとって、入会のハードルが下がったと感じた人もいたのではないでしょうか。
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ダークパターンが「倫理的に良くない」から避けるべきだ、ということは制作者側も認識しているはずです。
しかし、ダークパターンが中長期的に企業にもたらすデメリットを想定しチームやクライアントを説得することは、デザイナーが果たすべき責任でもあります。
まだまだダークパターンが溢れる世の中で、Netflixの例のように良い方向に変わっていっている企業も多くあります。そのような姿勢を示していける企業が今後増えていけば良いなと感じました。