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氷海の航跡を越えてゆけ

この記事は以下の記事のつづきとなります。


推しが推しの名前を継ぐ

いきなりですが諸氏!! ご覧になりました!?

びっくりしました
なんでかっていうと、これまでJAMSTECでは研究船の名前の継承はしたことなかったからです。

……いや、しんかい2000&しんかい6500の例はあるか?
あれも一応法律的には小型船の範疇だし……でもあれはもともと海上保安庁さんとこの初代しんかいあってのネーミングだと思うから……いやでもどうなんだろう……? あとしんかい12000はよ……

話がそれました、ともかく北極域研究船ちゃんの船名募集時に「そうなったら素敵だけどきっと無理だろうから結局応募しなかった」名前「みらい」でした。関係性のオタクとしては公式がオタクの妄想を越えてきたのでとても動揺しているところです。極域の砕氷船だけにな。

いや、だってさあ、みらいさんと北極域研究船ちゃんって正直船型からしてそんなに似てないじゃないですか。みらいさんは舳先シュッとしてて横顔美人(※船です)だけど、帝国海軍の船みたいな(現代ではかなり古風にあたる船首形状の)ダブルカーブドバウしてる一方、北極域研究船ちゃんは宗谷さんから当代5003しらせ君までの南極観測ships(+LNG燃料船&デュアルフューエル船とか)のノウハウ蓄積の先にあって、あんなに大きくてまるまるした舳先でかわいい(※個人の感想です)し、わりと何でも屋さんだったみらいさんよりももっと専門に振った船なんでしょう……。
そんな最新鋭のかわいこちゃんがさ……先輩の存在あっての自分だと名乗ってくれるの……あの……すごくうれしくて……あの子はみらいさんのドップラーレーダーと一緒に名前も継いでくれるんだなって……。

これJAMSTECの人が日本原子力学会誌に寄せた寄稿文なんですけど

こうしてみると,「みらい」はずばぬけて大きな海洋調査船ということになる。これほど大きな「世界一」の調査船を現時点で提案したならば実現は難しかったろう。2位ではいけないのかと非難する「泣く子と○○」には勝てません。しかし日本の科学技術の発展史を理解するときに大切なことは,まさにこの「(世界一の)新たなシステムをいかに実現するか」という点にある。巨額の経費をかけて新たなシステムをつくってはみたものの,必ずしも期待どおりにはいかないことがある。こんなとき,造っているときには想定もされていなかったことに転用されると,がぜん活きてくることがある。「むつ」は「みらい」として甦り,日本の海洋研究の新たな世界を切り拓いてきたのである。

日本原子力学会誌ATOMOΣ 2 巻 (2010) 8 号 海の国のアトム 3.海を観て絵に描く 

「この規模の調査船を一から新造するなんて予算がつきようもなかった」
「むつがみらいとして蘇ったからこそ海洋研究分野をさらに開拓できた」

そしてその実績から、より大きな北極域研究船を新造することができるようになり、そしてみらいの名前を継ぐというのが本当にエモい。

というか生まれる前からキャラ立ちがすごいですよね北極域研究船ちゃん。

この度の命名についてSNS上では「北極関係なくない?」「出来レースじゃん」という声も見受けられましたが、ボツ案も有効活用してるので全然許せます(※個人の感想です)。特に作業艇の名前が「しろくま」になるのめっちゃかわいい。
読み流すところでしたが「同じく多数ご応募いただいた『ほくと』から連想される北斗七星を、今後本船のロゴマークデザインに取り入れる」ってなんですか? ちきゅう君にも専用ロゴなんてあった? 楽しみだけど!!
決定の折にはオンラインショップでグッズ売ってください。
あと先日アップされたイギリスの最新鋭研究船訪問記の中で触れられてましたが

ブリッジの船体からせり出してるとこにガラス床がつくんだそうですよ。ナウいですね。擬人化したら髪型は外ハネかな。

心配事など

さておき心配なことや懸念材料がないわけではありません。
前回の「数年後~」の下の方の記事の最後で触れた北極海周りの不安定な政治情勢のことはもとより、じゃむさんとこの一部研究者さんも北極域研究船ちゃんには思うところある様子です。まあそれはそう。
砕氷船として建造され専門性が高くなるということは、汎用性は当然下がるということであり、この子北極域じゃない普通の海域に行ったときの使い勝手どんなもんよ……?
また、よりでかい船ということは、当然ごはんもいっぱいたべるということです。重油と天然ガスを食うそうですが、食費どんなもんでしょうね。
私達の北極域研究船ちゃんへの甲斐性が試されます
てかオガさんの記事でもちょっと触れた日本財団、みらいさんが前の名前だった頃も8億円くらい出してたし、もともと国際共同研究用北極観測船に関する調査研究とか北極海航路利活用戦略の策定事業とかして北極周り結構力入れてきて、この北極域研究船計画も遡ればそのへんが言い出しっぺっぽいので、今度こそうまく立ち回ってくれないかしら……かくなる上は進水祝いに数億くらい……(下心)

あとねえ、JAMSTECむつ研究所のある関根浜港はもともと、みらいさんが原子力船むつだった頃に彼女のためだけに「最小限規模で」作られたものなので、大柄な北極域研究船ちゃんってここ使える……? というのを心配しています。

みらいさんは清水港にいることが多く、北極域研究船ちゃんもそうなるのかなとは思うのですが、そもそも関根浜港を使えなかったらむつ研どうなるのよ……。
あれを置くことによる教育なり雇用なりの効果も、地元へのポスト「むつ」補償みたいなものの中に含まれているのかなと思っていたのですが。とはいえあの港を工事するとなったら、地元漁協の人たちとかからまためちゃめちゃ怒られそうだからなあ……。

関根浜港建設時には原子力船への不信や、建設そのもので潮の流れが変化し漁業に悪影響が出たとして顰蹙を買い、今でもその頃の反対立て看板が関根浜港に面した海岸に立っています
陸地側のほか看板を見るに、どうやら反対派住民らが関根浜港とむつ科学技術館の隙間の土地を頑として売らなかったみたい…?

まあ作り始めてる以上はもうなるようになれです。
原子力輸送船を通常動力調査船に改造したのに比べたら大抵のことは容易くはないか

一方その頃、当のみらいさんはというと

採水観測千本ノックをしていました。ご乗船の方々も本当にお疲れ様です。

今回の北極域研究船ちゃん船名決定リリースの中でそっと、「なお、今般JAMSTECでは、老朽化等に鑑み、2025年度をもって海洋地球研究船『みらい』の運用停止を決定いたしました」と触れられています。残り時間は少ないですが、みらいさんならまあ、最後まで元気にやり遂げてくれるんじゃないかと思います。

……今回の記事では文章中で「みらいⅡ」を「みらい」と混ぜて使うと何がなんだかわからなくなりそうだったので前回通り「北極域研究船」ちゃんと書きましたが、みらいさんがいてみらいⅡちゃんもいるようになるこれから、なんて呼びましょうね……。
みらツーちゃん……?
みらいにちゃんもいいか……?
つーちゃん……?

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