そうだ、浜松ヘいこう①
ようやく秋めいてきた10月初旬。
ひょんなことから、「餃子でも食べに行こうか」という話になった。
少し前に書いた【シェルターガーデン日光】の旅から約1ヶ月。
パートナーと私は仕事に忙殺され、あの豊かな旅行体験はもう記憶の彼方。
なぜ私たちは今都内にいるのか?
あの体験は夢だったんじゃないか?
夜半に通話をするたびにそんな話になった。
旅の予定地は、はじめは宇都宮だった。
言わずと知れた餃子の街で、私の大好きな大谷資料館もある。
今ではずいぶん有名になったけれど、大谷資料館は「大谷石」という石の採掘場を資料館としたものだ。
地下深くにまるでRPGダンジョンのように広い広い空間が広がっていて見応えがあり、その異世界感は一見の価値あり、だと思う。
ちなみに、読み方は世界のオオタニではなく、オオヤである。
旅行先として、私が思う宇都宮のセールスポイントは、おそらく食と最近できたLRTという路面電車、そして大谷資料館だ。
ただ、餃子目的の旅とはいえ、カメラをやる私にとって、大谷は魅力的ではあるけれど、既知の場所。「最後の一押し」が足りない。
悶々としながらGoogleマップを眺めていた時に、ふと気づいた。
餃子の街、もう一つあるじゃん。
そう、それが今回の旅先。浜松である。
久しぶりに乗ったこだま。
東京から90分で着くのが静岡県浜松市だ。
私が浜松について、食以外で知っていることといえば、浜名湖があること。
そして、YAMAHAのお膝元である、ということくらい。
とりあえず、美味しい餃子と思い出したもう一つのグルメ、うなぎに思いを馳せながら、新幹線ホームの階段を降りる。
すると、階段を降りてすぐ、とてつもない超絶演奏が聞こえてきた。
幻想即興曲である。
浜松駅の新幹線改札の中には、駅ピアノとDJブースがあって、それだけでもたまげるのだが、私が訪れた時にはたまたま通行人のお兄さんが幻想即興曲を弾いていた。
猫ふんじゃった、とかではない。あの超絶技巧の幻想即興曲である。
「いきなり文化レベルが高い」
そんな話をしながら改札を出れば、今度は街の中にたくさんの楽器ケースを持った人たちが溢れていた。
たまたま、ミュージックフェスティバルが行われている休日だったらしく、金管楽器・木管楽器・ギターにドラムス。
とにかくいろんなものを持った人たちがいて、街の中心部のあちこちで楽器が演奏されていた。
すごいところへ来た。と思った。
もうこの時点で、餃子とうなぎのことはすっかり忘れていて、YAMAHAのアジトとしての浜松にすっかり釘付けである。
何を隠そう、私は元吹奏楽部員で、小中で6年間楽器をやっている。
私の代では叶わなかったが、全国大会に出るくらい強い学校だった。というか、千葉は吹奏楽が強い。
毎日毎日朝から晩まで楽器の音に包まれて思春期を過ごした私の、魂の音があちこちでしているのである。
「どうしよう。浜松、めっちゃ好きかもしれない」
新幹線を降りてわずか5分。
もうすっかり私は浜松の虜になってしまったのだった。