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浅き春に寄せて

今は 二月 たつたそれだけ
あたりには もう春がきこえてゐる
だけれども たつたそれだけ
昔むかしの 約束はもうのこらない

今は 二月 たつた一度だけ
夢のなかに ささやいて ひとはゐない
だけれども たつた一度だけ
そのひとは 私のために ほほゑんだ

さう!花は またひらくであらう
さうして鳥は かはらずに啼いて
人びとは春のなかに笑みかはすであらう

今は 二月 雪の面おもにつづいた
私の みだれた足跡……それだけ
たつたそれだけ――私には……

「浅き春に寄せて」立原道造

立原道造は大正3年東京生まれ。大学では建築学科で主席を通しますが、三好達治や室生犀星、堀辰雄に影響を受けて詩に転向。

しかし若くして病に臥し、たった24年という短い一生を駆け抜けた人でした。

愛しいひとが遠くへ離れていった、その強烈な哀しみに囚われて、今を生きることに、無感動になってしまった二月の詩。

とは何の脈略もない今日の出来事。

昼下がりのこと、中学生にも見えるくらいの若い男の子が、いきなり「彼女とケンカしたんです!」と花屋に入ってくるという、今までにも経験のない漫画のような出来事がありました。

彼は初めてみる顔でしたし、事情も分かりませんし、ひとまず「どうする?」と聞きましたら「わからない!」というのです。笑

こちらもわからないのですが、用意を進めまして、「で、どうしたの?」と聞くと、若い子ならではの初々しいものだったので

「平和なバレンタインになることを祈ってるよ」と送り出すと「頑張ります!」と言って颯爽と帰っていきました。笑

あんなピュアな少年が、この東京にもまだいるんだという安堵。少年の浅き春に、ささやかな応援を寄せる喜び、噛み締めたひととき。

何でもない日常ほど、愛おしいものはないなぁと、あらためて思った一日でした。今日もいちりんあなたにどうぞ。

レースフラワー 花言葉「細やかな愛情」

がんばれ

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