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展覧会『水木しげるの妖怪百鬼夜行展〜お化けたちはこうして生まれた〜』

横浜のそごう美術館で開催中、水木しげるさんの妖怪展に行ってきました。

開催概要
展覧会名 水木しげるの妖怪百鬼夜行展〜お化けたちはこうして生まれた〜
会期 2024年1月20日(土)〜2024年3月10日(日)
時間 10:00〜20:00
会場 そごう美術館

本展は、水木しげるさんの妖怪画制作の手法に着目したもの。さまざまな展示を通じてその豊かな発想の起源をたどることができます。

本展の展示構成に沿って説明すると、水木しげるさんの妖怪創作の具体的手法は3つに分類できるそうです。

①絵師たちからの継承
②資料から創作
③文字情報から創作

①絵師たちからの継承においては、元ネタがあったのかと軽んずる批判もある、としながらも、むしろそれこそが重要なのだと説いています。元の絵を探り出す作業を通じて、日本の妖怪文化への関心が生まれたとのことです。
《小豆洗い》《豆狸》《あかなめ》《大かむろ》などの妖怪がこの手法にあたる。江戸時代中期の浮世絵師・鳥山石燕ら参考にした絵師たちの妖怪画と、水木さんの絵が比較できるように上下に並んで展示されていました。
②資料からの創作は「プリコラージュ+水木さんの妖怪感度」との説明。プリコラージュとは、別の目的で作られたものを寄せ集めて、別のものを作り出すこと。版本、浮世絵、オブジェ(民芸品)、実体験、スクラップ(調査)など作品とともに展示されていました。この手法にあたるのが、《子泣き爺》《砂かけ婆》《常本虫》《がしゃどくろ》など。
③ 文字情報から創作は柳田國男『妖怪談義』など、書物からの創作。《土転び》《白坊主》《海月の火の玉》などがこの手法にあたる。

これらの創作手法からは、水木さんは妖怪を生み出すにあたって膨大な量の資料を集め、それらを読み、調査し、自身の創造力を働かせていたことがわかります。その行動力と熱量は、会場の至るところに展示された水木さんの蔵書コレクションの量から視覚的に体感することができます。資料は自ら足を運んで神田古書店街で集めたとのこと。
また、VTRで流れていた小説家・京極夏彦さんのインタビューでは、資料の元の絵をそのまま使っているものは「水木試験に合格したもの」という指摘が面白く。水木さんの妖怪は元の絵がありつつ、そこに「出会い」などの物語(=背景)を加えたものになっている。それこそ水木さんが作った妖怪ワールドであり、広く支持される理由がここにあるのだと感じます。

展覧会の締めくくりとなる「第4章 水木しげるの百鬼夜行」では山の妖怪、里の妖怪、水の妖怪、家の妖怪とカテゴライズされた全73点の妖怪画を見ることができます。『ゲゲゲの鬼太郎』の主要キャラクターくらいしか知らなかった私。そのバリエーションの多さに圧倒されました。

会場では妖怪画の展示の他にも《べとべとさん》や《大かむろ》《川獺》などの立体物やスマホアプリをダウンロードして体験できるARコンテンツ、ぬりかべのフォトスポットなど子どもたちが楽しめる工夫も取り入れられていました。

フォトスポット
ぬりかべ。よく見ていると目が瞬きする…!

日曜日の午後、家族連れも多く場内は賑やかでした。「わ!怖い!」「これ知ってる!」とあちこちから聞こえてくる感嘆の声に、妖怪が現代の子どもたちにも浸透し好奇心を煽る文化だということを実感することができました。

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